【2024年最新版】EC化率の現状は?コロナ禍後の動きを業種別トピックスと共にご紹介
EC化率とは、商取引市場規模全体におけるEC(電子商取引)が占める割合のことです。分母はBtoCの商取引市場規模、分子はBtoC ECの市場規模で算出されます。EC化率の算出対象は物販系分野に限定されます(デジタル系やサービス系は除く)。EC化率を把握しておくことで、ご自分の扱っている商品における分野のEC化率が高い場合には、「競争者が多く、勝つためには戦略を立てる必要がある」といった判断や、EC化率が低い場合には競争者が少ないか、もしくはECに適さない要因がある分野であるといった判断が可能となります。本記事では2024年9月に経済産業省が公表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」のデータを引用しつつ、最新のECの状況を見ていきましょう。
BtoC市場のEC化率
2023年における物販系分野のBtoC-EC市場規模は、前年の13兆9,997億円から6,763億円増加し、14兆6,760億円となりました。BtoC全体の市場規模は4.83%増加しており、その中でEC化率は9.38%と前年より0.25ポイント上昇しています。
2020年~2021年にかけて新型コロナウイルス感染症の影響で市場が大きく拡大し、EC化率も0.35ポイント上昇していました。その後、2022年~2023年は伸び率が緩やかになりつつも、物販系分野全体においては、増加傾向が続いていることが分かります。
物販系分野BtoCの業種別EC化率
ここでは、BtoCのECにおける、業種別の市場規模とEC化率を見ていきましょう。
2023年に最もEC化が進んだ業種は「生活雑貨、家具、インテリア」でEC化率は31.54%、前年より1.95ポイント上昇しました。
昨年の伸び率は+3.88ポイントと第2位でしたが、2023年度も引き続き上昇したことが分かります。
EC化率の伸び率2位は「衣服・服飾雑貨等」(22.88%)で、前年比+1.32ポイントです。昨年の伸び率は+0.4ポイントと低かったので、2023年にEC市場が拡大したことが分かります。
昨年、伸び率が+5.96ポイントと最も高かった「書籍、映像・音楽ソフト」は53.45%で、前年比+1.29ポイントと、第3位となりました。
「自動車、自動二輪車、パーツ等」のEC化率は3.64%で、ついに前年比-0.34ポイントとなりました。
物販系分野の7分野のトピックス
物販系分野の7分野について、伸び率順でトピックスを紹介します。
生活雑貨、家具、インテリア
「生活雑貨、家具、インテリア」カテゴリに含まれるものは台所用品などの家事雑貨、洗剤やティッシュなどの家事用消耗品、一般家具、カーテン等のインテリア、寝具類などです。2023年のBtoC-EC市場規模は2兆4,721億円、前年比で5.01%上昇しています。EC化率は31.54%です。
現状のEC化率は物販系の中で3位となっており、比較的EC化の進んでいる分野だといえるでしょう。
特にECにおいては家事雑貨や家事用消耗品が7割を占めており、これらの商品は以下のような理由でECとの相性がよいとされています。
- 単価が比較的低く送料との兼ね合いからまとめ買いやついで買いのニーズが高い
- 購入頻度の高い商品のサブスクリプションサービスが拡大している
- 食品や日用品を短時間で配達するクイックコマースが拡大している
また、残りの3割を占めるカーテン等のインテリア、寝具などにおいては、色違いの商品などバリエーションが豊富で、実店舗では置き場所の問題が生じやすい点を、ECであればオンライン上で豊富なラインナップを確認できたり、組み合わせを確認できるシステムを利用できたりといった利点があります。 今後も、市場規模、EC化ともに伸びる可能性がある分野と言えるでしょう。
衣類、服飾雑貨等
衣類(インナーウエア・アウターウエア)、服装雑貨(靴、鞄、宝飾品、アクセサリー)、子供服、スポーツ用品で構成される市場の市場規模は2兆6,712億円で、前年比で4.76%増加、EC化率は22.88%です。
物販系の中では4位のEC化率となっており、まだまだEC化の余地が大きいといえます。
2023年はコロナ禍における行動制限が解除され、実店舗の利用が増えたものの、コロナ禍においてECで商品を購入する習慣が定着したこともあり、ECサイト上で商品を選び、店舗に取り寄せて試着してから購入するなど、店舗の機能を活用する取り組みも見られます。InstagramなどSNSとの相性が良い分野でもあるため、今後も新しい取り組みでチャレンジするEC事業者が出てくることも期待できます。
書籍、映像・音楽ソフト
書籍、映像ソフト、オンラインコンテンツを除く音楽ソフトから構成される分野では、2023年の市場規模が1兆8,867億円で前年比3.54%増加し、EC化率は53.45%です。EC化率は7分野で最も高いのは、次の生活家電同様、タイトル、品番、型番が決まっているので、消費行動においてオンラインで購入しても、店舗で購入しても価値が変わらない分野だからと言えます。競争は激しいですが、EC化率も依然として伸長しているので、今後もオンライン上での新しいサービスを含めて、大小さまざまなECが登場することも考えられます。
生活家電、AV機器、PC・周辺機器
生活家電、AV機器、PC・周辺機器の市場規模は2兆6,838億円で、前年比で5.13%の増加です。EC化率は42.88%で、物販系のなかではここ数年、上位を占めている分野です。
2023年においては、コロナ禍による行動制限が解除され、在宅時間の減少による調理家具利用シーンの減少があった一方、省エネを意識した商品ニーズの高まりにより、高単価商品の需要増加等が、市場規模増加につながりました。
生活家電やAV機器、PCなどは、事前の調査を通じて商品の内容や特徴を理解しやすく、また理解してから購入したいといった需要から、ECとの相性が高いとされています。一方で高額な商品が多いことから、実際に商品を見てから購入したいといったニーズもあり、Amazon等の大手ECプラットフォームと大手家電量販店・通販事業者との対立構造になっています。
こうした中、大手家電量販店側の対策として、例えば実店舗に電子棚札を置き、ECサイトの価格をリアルタイムに反映するダイナミックプライシングを採用したり、後日配送でも問題ない商品についてはECサイトでの購入を促したりする仕組みを導入しているケースが見られます。
その他、店内にWi-Fi環境を整備して店内商品の撮影を許可し、SNS上で拡散することによりEC販売に誘導する動きも見られ、こうした動きが本カテゴリのEC化率向上につながっているといえるでしょう。
化粧品、医薬品
化粧品全般、医薬品、美容・健康関連器具を含む市場の市場規模は9,709億円で、前年比で5.64%上昇し、EC化率は8.57%です。
化粧品や美容関連商品は、コロナ禍による行動制限解除による外出機会増加により支出が拡大。一方で、コロナ禍において支出が大きかったマスクや消毒液などについては需要が一服しています。
当該カテゴリのEC利用については、ドラッグストア等の店頭販売が充実しており、実店舗で購入するケースが多いです。特に化粧品については、対面販売が適している商品もあり、ECには不向きな面があるとされています。
一方でコロナ禍により店頭販売が厳しくなった時期に、化粧品メーカー等がECでの販売に注力した結果、Web広告やライブコマースなどの手法を活用し、当該カテゴリにおけるEC市場の拡大につながりました。
また、当該カテゴリについては、これまでオンライン上での販売が難しかった医薬品について、薬機法の改正によりほとんどの一般医薬品がインターネット上で販売できるようになった点も追い風になっています。
その他、2020年には薬剤師が薬の飲み方を指導する「オンライン服薬指導」が解禁され、2023年には「電子処方箋」が開始されるなど、オンライン化の整備が加速しています。
2023年3月に日本保険薬局協会が公表したデータによると、オンライン服薬指導の実施実績のある薬局は13.1%に留まっているとされ、今後の利用拡大に注目です。
食品、飲料、酒類
食品、飲料、酒類の市場規模は2兆9,299億円で、前年比で6.52%増加、EC化率は4.29%です。
食品、飲料、酒類等のEC化率が他のカテゴリと比べて低めに推移している理由として、以下のようなことが挙げられるでしょう。
- 生鮮食品の扱いが難しい
- 利益率が低い商品が多い
- 実店舗の販売網が充実している
- 配送料の負担が大きい
当該カテゴリにおいては、近年、特に都心部において短時間で商品を届ける「クイックコマース」の拡大が進んでいます。
とはいえ、大手ECプラットフォーム事業者が参入するなどして盛り上がりを見せる一方、撤退する事業者も複数あり、クイックコマース事業の展開が容易ではないことが分かります。
クイックコマースに限らず、食品類のオンライン販売は在庫管理や受注管理、配送、アフターフォローなどのコストが高くなりやすく、トータルコストの最適化が求められるのです。
また、当該カテゴリにおいては健康食品分野においてECの売上が拡大しています。
健康食品分野のメインユーザーである高齢者がテレビ通販やカタログ通販から、ECでの購入に移行しつつある点や、高齢者以外の層においても、コロナ禍を経験して健康意識が高まっていることなどが追い風となっています。
この分野では、GMS(総合スーパー)、EC特化ネットスーパー、EC大手企業、飲料専門事業者、通販事業者、菓子メーカー、酒類販売業、百貨店など、多様な企業によるEC市場への参入が見られます。
自動車、自動二輪車、パーツ等
自動車、自動二輪車、パーツ等の2023年における市場規模は3.223億円(前年比+1.26%)、EC化率は3.64%(前年比-0.32%)でした。当該カテゴリのEC化率が進みづらい理由として、以下のようなことが挙げられるでしょう。
- パーツ等は取り付けに専門知識が求められる
- 高額商品は実際にモノを見て購入を判断したい
一方で2024年1月には中古車を通販で購入できる「バディカダイレクト」などのサービスが始まるなど、自動車等をECで購入するというニーズはあります。
現状ではEC化率が低く留まっていますが、上記のような課題を解決できればブルーオーシャンの中でビジネスを拡大できる可能性があるといえます。
BtoB市場のEC化率
2023年のBtoB-EC市場規模は、465兆2,372億円(前年比+10.7%)で、「その他」を除いたEC化率は、40.0%(前年比+2.5%)となりました。
BtoB-ECの市場規模は、2020年を底に回復傾向が継続しており、コロナの影響以前をはるかに超える市場規模の拡大を見せています。EC化率の伸びはわずかに鈍化したものの、2019年比では+8.3%となっています。
BtoBの業種別EC化率
BtoB-ECにおいてEC化率が高いのは、製造業の輸送用機械80.6%、次いで食品75.0%、電気・情報関連機器69.6%の順となっています。
製造業以外では、情報通信、運輸、卸売、建設業の前年比市場規模が着実な伸びを見せています。 EC化率については、数値の差はあるもののすべての業界で増加が見られます。各業界での需要に対する供給の仕組みが整備されることで、さらなる拡大が期待できます。
各分野において今後のEC化率に注目
経済産業省が公表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」を元に、BtoC、BtoBそれぞれの市場規模とEC化率と、また各カテゴリにおけるEC化の現状についての考察などご紹介しました。コロナ禍によりECの利用が大きく拡大し、またECによる商品購入が習慣化したこともあり、ほとんどのカテゴリにおいてEC化率は上昇傾向にあります。
とはいえ、カテゴリによってはEC化率の現状に違いはあります。EC化率がすでに高い分野においては、ただ商品をECで販売しても競合が多く、価格競争が激しくなりやすいといった特徴があります。
一方でEC化率がやや低く留まっているようなケースでは、その理由を分析することが大切です。まだチャレンジしている事業者が少ない分野なのであれば、早めに取り組むことで先行者利益を得られる可能性があるでしょう。とはいえ、EC化率が低く留まっているのには理由があるはずで、EC化がしにくい商品なのであれば、その課題を解決する必要があります。
これからECによるビジネスを拡大していきたいと考えている方は、本記事の内容を参考に、これからのビジネス戦略に活用なさってください。
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- 投稿者: クロレDIGITAL
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