メーカー直販とは?メリットと増加の背景、事例も紹介
メーカー直販と聞いて思い浮かべるのは何でしょうか? 健康食品や化粧品のテレビ通販、DELLやAppleといったパソコンメーカーの直販サイトをイメージする人も多いことでしょう。しかし今、規模の大小を問わず、さまざまな業種のメーカーがインターネットによる直販を始めています。メーカー直販が増えている背景やそのメリット、注意点、さらに事例も紹介します。
メーカー直販とは?
メーカー直販とは、問屋や小売業者を介さずにメーカーが顧客に対して自社製品を販売することで、D2C(Direct to Consumer)とも呼ばれます。メーカーが消費者に直接販売することで中間マージンや流通コストを削減できるため、利益率が上がります。顧客にとっても、メーカーから直接購入できる安心感があり、商品によっては小売店よりも安価になるといったメリットがあります。 デジタルD2Cの市場規模は、過去5年間右肩上がりで伸びており、2025年には3兆円に達すると予測されています(売れるネット広告社調べ)。
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メーカー直販が増えている背景
近年、メーカー直販が注目される背景には、デジタルマーケティングのインフラが整備され、メーカーが直接消費者にアプローチしやすくなったことが挙げられます。Web上で販売活動を行うためのツールやサービスを手軽に利用できるようになり、高いコストをかけて流通経路を確保しなくても、消費者に自社製品を届けることが可能となりました。
また、インターネットやスマートフォンの普及によりネットで商品を購入することが一般化したことも、メーカー直販が増えている理由のひとつです。実店舗での販売をまったくせずに、メーカー直販だけを行う企業も増えています。
メーカー直販のメリット
メーカーが自社で独自の販路を持つ直販には、さまざまなメリットがあります。主なものを挙げてみましょう。
利益率が向上する
問屋や小売店を介さず消費者に商品を直接販売するため、中間マージンや手数料、流通コストなどが抑えられることなどから利益率が上がります。
自社ブランドのビジョンや思いを伝えられる
メーカー直販では、作り手のビジョンやメッセージを直接消費者に伝えることができます。商品に込められた思いや商品開発にまつわる物語はひとつの付加価値となって、顧客との信頼関係の構築やファンづくりにつながります。商品の販売とブランディングを同時に行うことが可能になるのです。
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顧客との接点を商品開発や業務改善に生かせる
中間販売業者に商品を卸すビジネスモデルの場合、メーカーは顧客と直接コミュニケーションすることがありません。しかし直販であれば顧客との接点が増えます。顧客のダイレクトな反応を自社の商品開発や課題の発見、業務改善に生かすことができます。
細かい販売データをマーケティングに活用できる
メーカー直販では、どのような顧客がどの商品をどういったルートで購入しているか、という細かい販売データを収集することも容易になります。販売データは、マーケティング戦略のベースとなるものです。小売店での販売や楽天やAmazonのようなECモールへの出店では、詳しいデータを収集することが難しいため、これもメーカー直販の利点と言えるでしょう。
価格競争に巻き込まれにくい
ECモールに出店する場合、他社の類似商品との価格競争に巻き込まれることがしばしばあります。またモール運営側のルールに従って、自社の意図とは別に値下げや送料負担のキャンペーンに参加しなければならない場合もあります。メーカー直販であれば、そのような負担がなく、思いどおりの価格戦略を実行できます。
メーカー直販のデメリット
ただし、メーカー直販を行う際には次のようなことに気をつける必要があります。
集客を自社で行う必要がある
新しいブランドや認知度の低いブランドの集客は難しいものです。大手ECモールに出店すれば、ECモールの知名度を利用して集客できますが、自社ECサイトの場合は、独自に知名度を上げ、集客しなければなりません。まずはWeb広告やSNS広告などを使い、ターゲットとなる見込み客に知ってもらい、サイトを訪問してもらう取り組みが必要となります。
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立ち上げや運用に大きなコストがかかる
ECサイトの構築や流通の仕組みの整備、集客のための広告には大きなコストがかかります。そういった経費をきちんと見込んで、予算や目標を立てることが大切です。
しかし最近では、低コストで簡単にECサイトが開設できるShopifyのような構築サービスや、小規模のメーカー直販にも対応する物流サービスが増えてきました。こういった動きもメーカー直販の増加をあと押ししています。
販売店への気遣いが必要
メーカー直販が利益につながると分かっていても踏み出せない原因のひとつに、取引のある販売店への気遣いがあります。販売店から見るとメーカーが競合になり得るのですから、関係への悪影響を心配するのは当然でしょう。
しかしメーカーのECサイトが話題になることで商品の知名度が上がり、販売店の売上も増えるといった“Win -Win”の関係を築いているメーカー直販もあります。販売店と十分にコミュニケーションを取り、バランスの取れた価格戦略を打ち出して、関係を良好に保ちながらメーカー直販を進める道を探しましょう。
メーカー直販の注目事例
最後に、現在注目されているメーカー直販(D2C)の事例を3件紹介します。
サイトで伝える情熱が共感を呼ぶ[Mr.CHEESECAKE (ミスターチーズケーキ)]
ミシュラン掲載レストランでシェフの経験を持つ田村浩二氏がプロデュースするブランド、Mr.CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)。同店が提供する商品はチーズケーキのみで、注文はWebサイトだけ、週に2回しか受け付けません。しかし日曜と月曜の朝10時に販売が開始するや、毎回あっという間に完売してしまいます。
公式サイトには、ブランドのコンセプトや商品の魅力、田村氏が持つチーズケーキへの思いがつづられています。単にチーズケーキを売り込むのではなく「どのような気持ちで商品や顧客に向き合っているのか」「どのような人になりたいのか」といった情熱が伝わるECサイトです。訪れた人はその情熱に動かされ、「食べてみたい」という思いを強くします。
最近では商品開発でセブンイレブンとコラボをしたり、音声配信プラットフォーム「stand.fm」を使った音声接客を取り入れたりと、ブランドの価値を高める話題づくりも上手です。
デジタルマーケティングのうまさが際立つ[BULK HOMME (バルクオム)]
メンズスキンケアブランドのBULK HOMME(バルクオム)の商品は、公式オンラインストアのほか、全国2,900店舗以上の小売店・ヘアサロンで販売されています。中国・シンガポール・イギリス・フランスなどでも展開し、2021年の2月からはアメリカにも進出しました。
メッセージを明確に伝えるシンプルで力強いデザインのECサイト、キャラクターの起用やわかりやすいランディングページ、SNSの活用など、同社のデジタルマーケティングには参考になる要素が満載です。
例えば、商品ページにはそれぞれの商品の使用手順を画像とともに丁寧に紹介。スキンケアをあまりしたことがない男性にも分かりやすく、スキンケア商品へのハードルを下げる構成になっています。
定期購入のコースでは、初回の購入金額が大幅に割り引かれるだけでなく、2回目以降も10%オフになります。スキンケアグッズのプレゼントや購入ごとのマイル付与といった特典も。お得さを強くアピールして「どうせ買うなら定期コースから」と思わせる、リピーター獲得に力点を置いた戦略がよく分かります。
大手メーカーによるサブスク型D2C[キリンホームタップ]
キリンホームタップは、大手ビールメーカーのキリンが挑戦したビールのサブスクリプション(定期購入)サービスです。専用ビールサーバーを無料でレンタルでき、月に4Lコースか8Lコースが選べます。2017年のサービス開始直後には予想以上の人気によってサービスが一時停止したほどでした。「家にビールサーバーを置いて、いつでもおいしいビールを飲みたい」というビール好きの夢をかなえており、ニッチなニーズにアイデアで応えて成功した事例です。
メーカー直販はメリットの多いビジネスモデル
近年、インターネットを使ったメーカー直販の市場は右肩上がりで成長しています。自社で独自の販路を持つことができるメーカー直販は、利益率やブランディング、商品開発などに多くのメリットがあります。もちろん集客や運用コスト、販売店との関係といった考慮すべき点はありますが、課題を解決するサービスも増えてきました。これからメーカー直販を始めたいなら最新のノウハウを持ったプロに相談するのも良い方法です。まずは、自社の商品を直販できるか、検討を始めてみてはいかがでしょうか。
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