顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違い、向上施策や成功事例を解説
これからの時代、企業が継続的に利益を上げ続けるには、新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客に繰り返し商品やサービスを利用してもらうことが重要です。そこで注目したいのが、自社の商品やサービスに顧客が愛着をどれだけ持っているかを示す「顧客ロイヤルティ」の考え方です。今回は、顧客ロイヤルティを高めるメリットから、ロイヤルティを向上させるためのポイント、その成功事例までを解説します。
顧客ロイヤルティとは?
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業や商品・サービスに対して感じる「信頼」や「愛着」を表わす言葉です。「忠誠心」を意味する英語Loyaltyに由来しています。
1回限りの購買や利用ではなく、顧客が長期的に愛着を持って利用してくれるかどうかを判断する概念として使われます。顧客ロイヤルティを高めることで、企業の継続的な利益向上が期待できます。
心理面ロイヤルティと行動面ロイヤルティ
商品やサービスを利用する頻度が高いからといって、必ずしもロイヤルティが高いとは言えません。顧客ロイヤルティを考える際は、心理面と行動面とを分けて考える必要があります。
- 心理面ロイヤルティ:企業や商品・サービスに対して抱くポジティブな感情
- 行動面ロイヤルティ:企業や商品・サービスを繰り返し購入・利用する行動
これらは、どちらかが向上すればもう片方も上がるというものではありません。心理面・行動面とロイヤルティの高低によって、顧客を次の4つに分類できます。
(A)行動面ロイヤルティ、心理面ロイヤルティが共に高い
総合的なロイヤルティが最も高く、企業やブランドにとって最重要顧客となる層です。
(B)行動面ロイヤルティは高いが、心理面ロイヤルティは低い
例えば「家から最も近いコンビニをよく利用する」といったことをイメージしてください。そのコンビニに対する愛着は特にないけれど、家から一番近いという理由で毎日買い物をする…この場合、このコンビニに対して好意的な評価や口コミはさほど望めません。おそらく、家にもっと近い場所に別のコンビニが出店すれば、そちらのコンビニに通うことが増えるでしょう。
(C)行動面ロイヤルティは低いが、心理面ロイヤルティは高い
「憧れるけど、買えない」という商品、例えばポルシェやフェラーリなどの高級外車や、ハイブランドのファッションなどをイメージするとわかりやすいかもしれません。その商品やブランドに強い愛着はあるけれど、いろいろな理由によって購入や利用が現実には難しい顧客層です。
(D)行動面ロイヤルティ、心理面ロイヤルティが共に低い
商品やサービス自体を認知していなかったり、関心がなかったりする人たち。また競合他社の商品にロイヤルティを感じているなど、自社の商品・サービスへの関与度が最も低い層を指します。
この4分類を意識することで、費用対効果が高く見込める顧客層へ効率的にアプローチすることが可能になります。
顧客ロイヤルティと顧客満足度の違いとは
顧客ロイヤルティと似て非なる言葉に「顧客満足度」があります。
顧客ロイヤルティが、特定の企業やサービスに感じる愛着・信頼であるのに対して、顧客満足度は顧客が商品に満足したかを図る指標です。
かつては顧客満足度を上げさえすれば、商品の再購入につながると思われていました。しかし商品やサービスのコモディティ化が進んだ現代では、品質や価格だけで他社と差別化することは難しくなっています。商品に満足はしても、購入時の対応や購入後のサポート体制に不満があると似たような他社の商品を選ぶようになり、継続購入には至らなくなってきたのです。
そこで生まれたのが、企業やサービスそのものに愛着を持ってもらうことを重要視した、顧客ロイヤルティの考え方です。顧客ロイヤルティが高い顧客は、継続して同じ商品を購入してくれる確率が高い傾向にあります。
顧客ロイヤルティを高めるメリット
自社の商品やサービスに対して愛着を持つ人が増える、つまりロイヤルティの高い顧客が増えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
リピート率の向上
ロイヤルティが高い顧客は、愛着がある商品やサービスを継続的に、または繰り返し利用する傾向があります。Emotion Tech社が、あるECサイトの年間平均利用回数を調査したところ、ロイヤルティが高い顧客は17回近く利用していたのに対し、低い顧客は9回程度の利用にとどまりました。また、会員制のサービスでは解約率にも差が出ることがわかっています(※1)。
顧客単価のアップ
ロイヤルティは、利用頻度だけではなく顧客単価にも影響します。前述のEmotion Tech社があるアパレルブランドについて行った調査では、ロイヤルティの高い人は年間の購入額が約2万8,000円、低い人は約9,000円と3倍以上の差がありましたが、1回の購入金額もロイヤルティの高い人は低い人の1.3倍だったそうです(※2)。
(※1)(※2)【ブランド戦略】顧客ロイヤルティとは?顧客を引き付けるマーケティング手法|Emotion Tech
口コミで商品やサービスを勧めてくれる
ロイヤルティの高い顧客は、商品やサービスを友人や知人に勧めてくれる可能性があります。人には、自分が素晴らしいと感じた商品やサービスを他人に勧めて、同じように良い体験をしてほしいと願う心理があります。また一般的に、友人・知人などからの口コミは、情報として信頼性があると感じる傾向もあります。SNSや口コミサイトの評判が大勢の人を動かす現代では、ロイヤルティの高い顧客が新たな顧客を呼び込む可能性が高まっています。これもとても重要なメリットです。
売上高の8割を優良顧客の2割が占めるというマーケティングの法則(パレートの法則)があるように、一部の優良顧客の購入が企業を支えているケースは多くあります。優良顧客が持っている商品やサービスへの信頼や愛着、すなわちロイヤルティをより多くの人に広げられれば、売上や利益の拡大につながるはずです。
顧客ロイヤルティを高める3つの方法
次に、顧客ロイヤルティを向上させるために必要な施策や、それぞれのポイントを見ていきましょう。
定量的な調査を実施して顧客の声を正確に把握する
まず、自社の商品やサービスに対する顧客の評価を調査し、現在抱えている課題を明らかにします。顧客の声を正確に把握するためには、客観的に扱える数値データを抽出する必要があります。
【顧客推奨度調査】
顧客ロイヤルティを定量的に測る調査に「顧客推奨度調査」があります。「この商品(企業・サービス・ブランド)を周囲の家族や友人に勧める可能性はどのくらいあるか?」という質問をし、勧める可能性を0~10の11段階で回答してもらう調査です。高得点を付けた顧客は実際にリピートして購入・利用する可能性が高いと言われています。また、他人へ何かを勧める行動には責任が伴うため、本音が表れやすく、顧客ロイヤルティの高低が反映される調査と言えます。
この顧客推奨度調査では、結果から顧客を「推奨者」「中立者」「批判者」の3つに大まかに分類します。それぞれの顧客層に応じて、顧客ロイヤルティの向上を意識したサービスの提供やプロモーションを行います。
顧客との接点を洗い直し、CX(顧客体験)を向上させる
顧客が商品やサービスを認知してから、購入・利用し、その後のアフターフォローを受けるまでの一連の体験のことを「CX(Customer Experience=顧客体験)」と言います。CXの改善は、結果的に顧客ロイヤルティを高めることにつながります。
顧客体験を向上させるには、体験を細分化してそこここにある小さな課題を発見し、一つひとつ改善していく取り組みが必要です。
まず購買行動の流れにおける企業と顧客のすべての接点を洗い出し、それぞれの接点で顧客がどう感じ、行動をしたのかをカスタマージャーニーマップなどの手法を使って明らかにします。そこから抽出される問題点を分析し、改善策を立案して遂行します。小さな課題の改善を積み重ねることによって、顧客体験全体が向上します。
提供する顧客体験の質が高まれば、その企業や商品、サービスに対しての愛着や信頼度も上がります。つまり顧客ロイヤルティを高めることになるのです。
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顧客体験に関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
CX(顧客体験)が重要な理由とは?CX向上の3ステップと成功事例
優良顧客を優遇し、さらに愛着を強める
たくさん利用すれば利用するほどお得になる、利用頻度や利用額に応じて特典を付与する施策も、ロイヤルティの向上に直結します。
ロイヤルティプログラムとは
利用頻度や利用額に応じてポイントやクーポン、マイルなどの特典を付与する仕組みのことを「ロイヤルティプログラム」と言います。身近な例では、スーパーやドラッグストアのポイントカードや、クレジットカード会員のポイントシステムが挙げられます。
顧客は商品・サービスを利用すればするほど得をするため、次もそこを利用しようという心理になります。利用額が増えると会員ステージがシルバー、ゴールド、プラチナというように上がり、特典が大きくなるステップアップの仕組みも愛着を強めます。競合他社への切り替えを防ぐ効果があり、継続的なロイヤルティの向上が期待できるプログラムです。
顧客ロイヤルティを高めることに成功した事例
最後に顧客ロイヤルティを高める施策に成功した企業の事例を紹介します。
ロイヤルティの低い顧客にヒアリングし、競合への乗り換えを防止<ソニー損保>
保険商品のなかでもダイレクト型保険と呼ばれるタイプは競合が多いため、他社に乗り換えられやすい傾向があります。ソニー損害保険株式会社では、他社への乗り換えを防ぎ契約を継続してもらうために、家族や友人への推奨意向を測る顧客アンケートを実施。その結果、ロイヤルティが低いと判断された一部の顧客を対象に、責任者が直接ヒアリングする取り組みを行っています。このような努力によって、顧客との信頼が深まり、好意的な口コミが広がるようになりました。結果として、同社では顧客ロイヤルティの向上が見られたと評価しています。
顧客推奨度調査から問題点を把握し、解約率が4分の1に<アメックス>
カード会社のアメリカン・エキスプレス・インターナショナル(アメックス)では、長年グローバルな顧客調査を実施しており、自社サービスへの満足度や継続利用の意向を確認してきました。しかし、調査結果が業績の向上と必ずしも連動しないという課題がありました。そこで、解決策として顧客推奨度調査を導入。顧客のロイヤルティを新たな指標とすることにしたのです。あるとき、調査結果から「クレジットカード紛失時の対応が顧客ロイヤルティに大きく影響している」ことがわかり、対応策として迅速にカードを再発行するシステムを導入しました。すると顧客推奨度の数値が向上、それに伴い顧客の解約率が4分の1に、さらに1人当たりの平均利用金額が10%も増加。大きな改善が見られたそうです。
顧客ロイヤルティが企業成長の鍵になる
顧客の愛着や信頼度を示す指標である顧客ロイヤルティを高めることにより、企業の継続的な利益向上が期待できます。顧客が自社の商品やサービスをどう評価しているか、客観的・定量的な調査を行い、問題点を発見しましょう。そして改善施策やロイヤルティを高めるプログラムを実行し、より顧客に愛される企業となることで、ビジネスを成長させましょう。
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