ソーシャルコマースとは?従来のECとの違い、種類やメリットを解説

今や、多くの人が日常的に利用しているSNS。EC業界においても、情報発信や集客の手段としてSNSの活用が進んでいます。近年では、商品を販売するプラットフォームとしてSNSを利用する「ソーシャルコマース」が注目されています。そこで今回は、ソーシャルコマースの基礎知識やメリット、日本でソーシャルコマースに活用されているSNSプラットフォームなどを解説します。

ソーシャルコマースとは?
ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアとEコマースを掛け合わせた言葉で、ソーシャルメディア(SNS)において商品・サービスを販売するマーケティング手法のことです。
ソーシャルコマースには、企業と顧客との双方向のコミュニケーションを通してユーザーの購買意欲を高め、その場で購買行動につなげることができるという特徴があります。
従来のECとソーシャルコマースとの違い
ソーシャルコマースは新しいタイプのECと言われていますが、従来のECとSNS型のソーシャルコマースとの大きな違いは、SNSが果たす役割です。
もともと企業にとってのSNSは、自社のユーザーやファンとの交流の場であり、主に商品の認知度やブランド力の向上を目的に活用するものでした。EC事業者も、商品の販売はショッピングモールや自社のECサイトで行い、SNSは集客のためのプラットフォームというように使い方を分けていました。
ところが、ソーシャルコマースでは、SNS上で情報発信から集客、販売までを一気通貫で行うことができます。わざわざECサイトに遷移せず、SNS上の投稿からそのまま購入できるため、ユーザーの途中離脱を抑えることができるという特徴があります。
ソーシャルコマースの市場規模
下図は、スマートフォン経由の物販のBtoC-EC市場規模の推移を表したグラフです。2023年の日本国内の物販のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模が14兆6,760億円であるのに対し、スマートフォン経由による取引は8兆6,181億円と、全体の58.7%を占めています。2016年の31.9%から右肩上がりで急拡大しており、今後もますますスマートフォン経由の取引は増えていき、それにともない、ソーシャルコマースの重要性も増していくと推測されます。
出典:令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省
ソーシャルコマースの種類
ソーシャルコマースは、使用するプラットフォームや販売者側とユーザーの関係性などによって、いくつかの種類に分類できます。日本でよく見られるソーシャルコマースの主な種類を紹介します。
SNS・ソーシャルメディア型
SNSの自社アカウント上で商品を販売するソーシャルコマースです。
SNS型では、EC事業者は自社のアカウントの投稿、ライブ配信などを通して商品を紹介し、ユーザーはそのアカウント内で欲しい商品を選ぶことができます。
今、世界ではECにおけるSNS型ソーシャルコマースの存在感が非常に大きくなっていると言われます。
日本ではこれまで、ショッピング機能が付いたSNSにおいても決済機能がまだ実装されておらず、世界に後れを取っている状況でした。
しかし2025年6月より、日本国内でもTikTokのEC機能「TikTok Shop」のサービス提供が開始されました。
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TikTok Shopの機能や特徴をより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【日本でも提供開始】TikTok Shopとは?主要機能や出店の手順、成功のポイントを解説
今後ますます機能の拡充やメジャーなSNSのソーシャルコマースへの参入が期待されます。
代表的な例:TikTok、Instagram、Facebook、Pinterestなど
CtoC型
「CtoC」とは、「Consumer to Consumer」の略で、一般のユーザー同士が行う商品取引のことです。
企業は取引を行うプラットフォームを用意するだけで、ユーザー同士の取引には基本的に関与しません。CtoC型では一般の人が商品を出品するため、安価でニッチなものが見つかりやすいというメリットがあります。
代表的な例:メルカリ、ヤフオク!、Amazonマーケットプレイスなど
ユーザー参加型
クラウドファンディングを通じて商品購入やサービス利用を行うことによって、新しい商品の企画やプロジェクトに参加したり、応援したりするタイプです。
代表的な例:Makuake、CAMPFIREなど
レコメンド型
ほかのユーザーが書き込んだ商品のレビューやクチコミ、評価を参考に商品が購入されるタイプのECも、ソーシャルコマースの一形態と考えられます。
代表的な例:Amazon、楽天、アットコスメなど
グループ購入型
「共同購入型」とも呼ばれ、購入希望者数が指定された人数を満たすとクーポンが発行され、割引を受けることができるサービスです。
代表的な例:中国のPinduoduo、アメリカのグルーポン
このように、ソーシャルコマースにはいろいろな種類がありますが、なかでも注目されているのが、自社のSNSアカウントを販売の場として活用する「SNS型」です。
そのため「ソーシャルコマース」を、SNS型を指す用語として使うケースもあります。この記事でも、ソーシャルコマース=SNS型のソーシャルコマースとして取り上げていきます。
ソーシャルコマースのメリット
ソーシャルコマースには、次のようなさまざまなメリットがあります。
ユーザーの囲い込みができる
SNSの本来の目的は、個人と個人、個人と企業がつながることです。商品自体や価格などの情報だけでなく、ブランドの世界観やストーリーを発信し、そこに共感や親近感を抱いたフォロワーと直接交流できる点が、企業にとってのSNSの大きな魅力です。
フォロワーが増え、多くの人に商品やセールの情報を直接伝えられるようになると、SEOやリスティング広告に頼らなくても集客が可能になります。また、ユーザーが自社や商品のファンになり、リピーターとして商品を繰り返し購入してくれるようになれば、安定した収益を確保することができます。競合他社と差別化でき、価格競争に巻き込まれることも減るはずです。
ただし、自社のアカウントに注目を集めフォロワーを増やすのは、それほど簡単ではありません。SNS広告やそのほかのマーケティング施策を行うといった、新規フォロワー獲得のための努力は必要です。
ユーザーの離脱を減らせる
ソーシャルコマースでは、SNS上で情報発信から集客、販売までを一気通貫で行うことができます。これまではSNSで見た商品を欲しいと思ったら、ブランド名や商品名からECサイトを検索し、ECサイトに移動してさらに商品を特定するといった手間がかかり、その間にユーザーが離脱してしまうリスクがありました。
しかしソーシャルコマースでは、「インフルエンサーが投稿した商品に興味を持つ」→「商品ページに遷移する」→「商品を選択する」→「購入手続きをする」というように、SNS上で気になる商品を見つけてから購入までのプロセスが短くシンプルです。そのため、ユーザーの途中離脱を抑えることができます。
ソーシャルコマースを行える主なプラットフォーム
現在、日本でソーシャルコマースとして活用できる主なプラットフォームには次のようなものがあります。
Instagramでは、自社のアカウントに無料で「Instagram ショップ」を開設できます。
自社のフィードやストーリーズの投稿に「ショップを見る」ボタンや「商品タグ」(画像や動画上に商品名や金額を表示するタグ)を配置すれば、ユーザーをInstagram内のショップページや商品ページに誘導することができます。
これらの投稿は広告として配信できるので、フォロワー以外のユーザーを集客することも可能です。
ただし、まだ日本ではInstagram内で決済できる機能は提供されていません。
Facebookでは2020年に「Facebookショップ」のサービスを開始しました。こちらも開設は無料です。
Facebook内のショップへの誘導を付けた投稿をファン(自社の投稿に「いいね」をしてくれた人)に表示できるほか、広告として配信し、広く集客することができます。
また、コミュニケーション用のアプリ「メッセンジャー」を使って、取引に関する個別の連絡を取ることができます。
こちらも、まだ日本ではFacebook内で決済できる機能は提供されていません。
Pinterestは、インターネット上にある好きな画像や動画を整理してピン(保存)したり、ユーザー同士で共有したりできるSNSです。
Pinterestには、ユーザーがピンしたECサイト上の商品画像や動画を販売に直結させる「プロダクトピン」という機能があります。
プロダクトピンを利用しているECサイトは、ピンされた画像や動画に、商品名、価格、在庫状況などの最新情報を表示することができます。そして、ユーザーがそのコンテンツをタップするとECサイトの商品ページに遷移します。
自社の商品に関心を持ち、画像や動画をピンしたユーザーに、詳しい情報を提示し、購買を強く促すことができます。
TikTok
「TikTok Shop」は、商品の発見から購入・決済までをTikTok内で完結できるEC機能です。ライブ配信や動画、プロフィールページに表示される商品のリンクから、商品の詳細の確認や購入を行うことができます。
ほかのSNSでは、まだ日本で決済機能が提供されておらず、実際の購入には外部ECサイトへの遷移が必要です。このステップが、販売機会損失になってしまうケースは珍しくありません。
その点TikTok Shopであれば、顧客の購買意欲が高まった瞬間にスムーズに販売につなげられるので、販売機会を逃しにくく売上アップが期待できます。
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弊社が実際にTikTok Shopを開設していくまでの過程を、記録・公開したコラムもございます。
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X(旧Twitter)
Xには、プロフィールに5品目まで商品情報を掲載できる「ショップスポットライト」という機能があります。設置すると、ユーザーをECサイトの商品ページに誘導することができます。こちらの機能は現在、一部のアカウントのみ利用可能となっています。
今後、可能性が大きく広がるソーシャルコマース
ソーシャルコマースは、SNS上のユーザーとのつながりやコンテンツの共有を通して商品を販売する仕組みで、海外では市場規模が急速に拡大しています。日本のソーシャルコマースは世界に比べて遅れていますが、今後、機能の実装が進めば、可能性が大きく広がると考えられます。これまでのEC施策に限界を感じ、新しいチャネルを広げたいと考えているなら、未来に向けて、ソーシャルコマースの導入を検討してはいかがでしょうか。
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