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顧客体験(CX) グッドマンの法則

グッドマンの法則とは?クレーム対応で顧客満足度向上へ。活用事例も紹介

グッドマンの法則とは?クレーム対応で顧客満足度向上へ。活用事例も紹介

顧客からのクレームは企業にとって頭の痛い問題です。しかし、クレームを言ってくる顧客は、その後の対応や問題点を解決することによって、その企業のファンになってくれる可能性があるのです。そこで、今回はクレーム対応と再購入決定率の相関関係に着目したグッドマンの法則を解説し、顧客ロイヤルティを向上させるポイントや活用事例についてお伝えします。

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目次

グッドマンの法則とは?

グッドマンの法則とは、クレームと再購入率に相関関係があることを示した法則です。

グッドマンの法則のもととなっているのは、1970~1980年代にアメリカで行われた消費者苦情処理に関する調査です。この調査を行ったジョン・グッドマン氏のデータのなかから、日本の佐藤知恭氏(顧客ロイヤルティ協会の設立者)が法則性を見出し、分析して、その名前を付けました。グッドマンの法則とは次の3つです。

 

グッドマンの第一法則

不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品・サービスの再購入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い

 

グッドマンの第二法則

苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、2倍も強い影響を与える

 

グッドマンの第三法則

顧客に適切な「情報を提供する」(企業が消費者教育を行う)ことによって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり、好意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入の意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する

 

引用:グッドマンの法則|顧客ロイヤルティ協会・佐藤知恭

グッドマンの法則と現在の実態調査の数値が示すもの

グッドマンの法則は、苦情と真摯に向き合い適切に対応することが顧客との関係強化につながり、企業にとっての価値となるということを示しています。

ただ、グッドマンの法則のもとになった調査は1980年代に行われたため、この法則は現在の状況には当てはまらないとする意見も少なくありません。

そこで、コミュニケーションサイエンスラボによる「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2020」にて、現在の消費者が「不満」にどう向き合っているのか実際の数値を見てみましょう。

調査データによると、

購入した商品に不満がある場合、企業に直接不満を伝える割合は全体の54%。そのなかで企業の対応が迅速かつ満足するものだった場合、リピーターになる確率は92%対応が遅くても満足できればリピーターになる確率は71%と、かなり高いスコアが出ています。

また、信頼を裏切られた「元ファン」の行動として、家族・知人に悪評を拡散する割合は53%周囲の人に注意喚起する人が51%と、ネガティブな評判を広めようとする人の割合が半数以上になっています。

このように現在においても、グッドマンの法則は大きく変わっていないことが分かります。むしろインターネットの普及によって、悪評が一瞬にして全国に拡散する可能性を考えると、企業は調査当時よりもグッドマンの法則を意識せざるを得ない状況になったと言えるでしょう。

参照:消費者と企業のコミュニケーション実態調査2020|トランスコスモス株式会社

グッドマンが提唱するCX3.0®とは?

不平不満を抱えても企業にそれを伝えず、利用をやめる顧客をサイレントクレーマーといいます。

彼らを生まないようにする鍵となるのは、企業と顧客との接点であり、それぞれの接点におけるCX(顧客体験)の向上です。

CXとは顧客が商品の購入やサービスを利用するうえでのすべての体験を意味します。

CXを向上させるには、企業が顧客とのすべての接点において良質な体験を提供することが大切です。CXが向上すれば、結果としてクレームを減らすことができます。

 

 

CXの向上は、1970年代にはすでに企業活動のなかでも重要なものとして位置付けられていました。その考え方は現在に至るまでにいくつかの変遷を経て、2010年代以降は、前出のジョン・グッドマン氏が提唱するCX3.0®へと進化しています。CX1.0からCX3.0®への流れを振り返りながら、CX3.0®の考え方を説明します。

CX1.0

1970年代以降、企業はそれまでの企業目線のみで商品やサービスを開発・改善する姿勢から、顧客の満足度向上をゴールとして、顧客の声に耳を傾けることを重視するように変化しました。顧客対応を効率的にマネジメントするテクノロジーやツールが進化し始めたのもこのころです。

CX2.0

CX1.0から20年が過ぎ、1990年代に入るとテクノロジーがさらに進化。顧客を中心に置いてビジネスを展開し、利益を最大化するためのツールとしてCRM(顧客関係管理)システムが登場しました。これによって顧客情報を一元的に管理・活用して事業の推進につなげる顧客管理が、より効率的に行えるようになりました。顧客サービスやサポートをカスタマーセンターに集約していく流れはこの時代に出てきました。

CX3.0®

2010年代に入って、ジョン・グッドマン氏が提唱したのがCX3.0®です。これまでは顧客のアクションを待っていたカスタマーサービスの概念を拡大し、企業は顧客が感じるであろう疑問やトラブルをあらかじめ分析、予測。そして企業側から積極的に顧客に働きかけ、トラブル回避のためのコミュニケーションやサービスを行うべきだという考え方です。今後、分析や予測には、ビッグデータ解析やAI、IoTといった技術が大いに活用されていくでしょう。

またCX3.0®では、顧客の真意を理解して取引や顧客対応を進めることで、顧客との共感が生まれ、信頼や愛着といった顧客のロイヤルティを強化することができるとして、「エモーショナルコネクション」の重要性も指摘しています。

CX3.0®により、カスタマーサービスは単なる顧客の苦情受付から、顧客との関係性を強化して顧客ロイヤルティを高め、LTV(顧客生涯価値=1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額)を向上させるといった、企業の収益性を強化する手段として位置付けられるようになったのです。

 

Check

LTV(顧客生涯価値)についての詳しい解説を見る⇒
LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法と価値の高め方

CX改善には顧客ロイヤリティの把握が必要

CXの改善を進める際には、現在の顧客ロイヤルティを確認し、どんなところに課題があるかを特定しましょう。そのために役に立つのが、顧客推奨度調査です。顧客が、自社の商品やサービス、ブランドに対してどのように感じているか、家族や友人に勧めたいと思っているかを調査します。把握した課題は顧客接点ごとに落とし込んで、改善策を考えます。

 

Check

顧客推奨度調査については、以下のコラム内で詳しく解説しています。
顧客満足度とは?向上施策や調査手法を解説

 

顧客推奨度調査は、顧客に自社の商品、サービス、ブランドを自身の親しい人に勧めたいかどうかを0~10の11段階で評価してもらうもので、顧客の愛着心や信頼度を定量的に計測することができます。親しい人に何かを推奨することは心理的ハードルが高いため、調査結果の信頼性が高いとされています。顧客推奨度調査イメージ

多少時間がかかってもCXが向上していけば、顧客ロイヤルティは改善します。顧客推奨度調査を定期的に行い、推奨度の推移や挙がってくる課題の内容を確認しましょう。そしてクレームの状況と照らし合わせて、CX向上の進捗を評価・検証していきましょう。

 

Check

顧客ロイヤルティについての詳しい解説をみる⇒
顧客ロイヤルティとは?3つの向上施策と成功事例を解説

グッドマンの法則でCXを向上させた成功事例

グッドマンの法則を活用することで、実際にCXの向上を成功させた事例を2つ紹介します。

店舗に対する悪口に割引を行い、問題解決に取り組む<牛角>

焼き肉レストランチェーン「牛角」は、1996年に1号店をオープンさせたものの、店舗運営がなかなかうまくいかない時期がありました。そこで、実際に店舗に来た顧客にお店についての「悪口」を言ってもらい、その謝礼として会計から300円を割引くという施策を行いました。そこで得た意見をもとに問題の解決に取り組み、店舗運営の改善を進めました。「牛角」は現在では全国にチェーン店を展開するまでに至っています。

 

苦情の原因を特定し、事前に回避できる体制を強化<Phonak社>

スイスの補聴器メーカーで米国市場において最大のマーケットシェアを持つPhonak社は、エンドユーザーに補聴器を販売する代理店との連携を強化し、CXを向上させています。

同社ではエンドユーザーから寄せられる苦情を分析し、原因となるトラブルを特定。その情報を代理店と共有することで、トラブルの予防や回避を実現しています。これにより、代理店の売上アップに加え、同社へのロイヤルティも大きく向上しました。

クレームは顧客との関係性を強化するチャンスと捉えることが重要

クレームも顧客との接点です。しっかりと対応して問題を解決できれば、顧客との関係性を強化でき、結果として収益向上にもつながります。グッドマンの法則は80年代初めに見出されたものですが、インターネットが普及した現在、クレーム対応の重要性はより強まっていると言えます。

そうしたなかで、顧客ロイヤルティを向上させてLTVを高めるためには、クレームを減らす努力と同時に、顧客との接点を増やし良質な体験を提供していくことが重要なのです。

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