SKUとは?意味や設定方法、業界別の考え方を解説

在庫管理や受発注の現場で頻繁に使われる「SKU(エスケーユー)」。普段の生活ではあまり耳にしない言葉ですが、小売業やEC、メーカーなど在庫を扱う業種では欠かせない概念です。SKUを正しく理解することで、在庫の見える化や誤発注の防止、業務効率化につながります。
この記事では、SKUの意味、導入による具体的なメリットや業界別の考え方、設定方法まで、丁寧に解説します。

SKUとは?
SKUとは、「Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)」の略語で、日本語では「在庫管理単位」を意味します。、この用語は、受発注や在庫管理の分野で、商品を識別・管理するための最小単位として広く使用されています。
同じ商品でも、サイズや色、パッケージが異なれば、別のSKUとして管理されます。
例えば、アパレルショップを思い浮かべてみてください。一つの「Tシャツ」という商品があったとします。このTシャツに、赤・青・黒の3つの色があって、それぞれにS・M・Lの3つのサイズがあったら、商品の「種類」としては1種類ですが、SKUとしては「3色 × 3サイズ = 9SKU」と数えます 。
なぜなら、在庫管理をする上で、「赤色のSサイズのTシャツ」と「青色のMサイズのTシャツ」は、別の在庫として扱わないといけないからです。SKUは、このように、顧客が実際に買う「具体的な商品」を区別するための単位で、システム上では一つひとつをきちんと追いかけるための「タグ」のような役割を果たすのです 。
SKUの考え方の基本は、「物理的な商品」と「管理上の単位」を分けて考えることにあります。お店にあるTシャツは物理的には「Tシャツ」ですが、色が違えば別の在庫として扱わなければなりません。そこで、SKUは「赤TシャツのSサイズ」という商品をシステム上で一つとして識別するための目印になります。この目印のおかげで、在庫を管理する人は、商品の名前に頼らず、一つひとつのバリエーションを正確に追跡し、在庫をまとめて管理できるようになります。この「物理的なもの」と「管理上の目印」を分けて考えることで、SKU管理は複雑な在庫管理をとても楽にしてくれるのです。
SKUを導入する3つのメリット
SKUを適切に導入・運用することで、ただ在庫管理が楽になるだけでなく、ビジネスを成長させるための3つの大きなメリットを得ることができます。
在庫管理・受発注業務の効率化
さまざまな種類の商品を扱うお店にとって、SKUは必要不可欠です。SKUを導入すれば、色や特徴だけで商品を区別する手間が省け、システムを利用した一元管理が可能になります。どれだけ種類が増えても混乱することなく正確な管理ができるので、業務効率が大幅にアップします。
特にアパレルや雑貨など、商品のバリエーションが多いお店では、管理の仕事がとても楽になります。
また、SKUを使ったシステムでは、在庫情報がリアルタイムで更新されるため、在庫状況を正確かつ瞬時に把握できます。これにより、欠品や過剰在庫といったリスクにも迅速に対応することが可能となり、機会損失を防ぐだけでなく、不要な在庫コストの削減にもつながるでしょう。
誤発注・誤配送の防止
SKUは、商品ごとに固有の識別コードを付与するため、口頭や商品名だけで発注・配送作業を行う場合と比べて、ヒューマンエラーが大幅に削減します。例えば、「ロゴ入りTシャツの黒のLサイズ」と口頭で伝える代わりに、「LT-BK-L」といったSKUコードを伝えるだけで、正確に仕事を進められます。
SKUの導入のおかげで、記入ミスや取り違えなどの人的ミスを防ぎ、業務全体のスピードと正確さを上げられるのです。
詳細な顧客ニーズ分析が可能
SKU単位で売上データを管理することで、売れ筋商品の詳細な傾向を正確に把握できます。例えば、「どの色の、どのサイズが一番売れているか」といった、商品のバリエーションごとの売上の内訳を細かく分析できるようになります。この詳細な分析を元に、よく売れる商品をすぐに再注文したり、顧客の好みに合わせて商品のラインナップを見直したりすることができます。
こうしたデータに基づいた判断は、顧客ニーズに合った商品を提案することにつながり、顧客満足度や収益性の向上に直結します。SKU管理は、単なる業務改善ツールではなく、ビジネスを成長させるための大事な土台となるのです。
SKUと混合しやすい関連用語
SKUは、他の物流や商品管理に関する用語と混同されがちです。それぞれの意味とSKUとの違いを明確に理解することで、業務におけるコミュニケーションミスを防ぎ、スムーズに作業を進められます。
アイテム/品目
アイテム/品目は、商品の「種類」を数える単位です 。例えば、「ロゴ入りTシャツ」という一つの種類を指します。
SKUは、アイテムをさらに細かく分けた、色やサイズなどのバリエーションを区別する単位です。先の例では、同じ「ロゴ入りTシャツ」でも、カラーが3色、サイズが3種類あれば、1アイテムは「9SKU」となります。
品番(型番)
品番(型番)とは、主にメーカーが商品モデルを区別するために付けるコードです。これは、同じ商品シリーズやモデルを特定するときに使われます。
SKUは、在庫管理の観点から、色やサイズ、製造された時期など、より詳細な情報を加えた、お店の中で管理するためのコードです。品番が「商品モデル」を特定するのに対し、SKUは「在庫の最小単位」を特定します。例えば、同じ品番のTシャツでも、色が違えばSKUは異なります。
JANコード(GTIN)
JANコードは「Japanese Article Number」の略で、国際的な商品識別コード(GTIN)の一種です。これは世界共通で、商品を売ったり、流通させたりする際に使われます 。
一方、SKUは、自分たちのお店で自由に設定できる、お店の中で管理するためのコードです。国際的な規定はないので、他のお店の商品と番号が重複する可能性もあります。そのため、基本的にお店の中での在庫管理だけに使われます 。
その他の物流関連用語
- フェイス(FKU):「Face Keeping Unit」の略語で、店舗の棚に並べるSKUのことを指します。店頭は場所が限られているため、すべてのSKUを並べられないようなときに、店頭の商品を区別するために利用されます。
- ロット:一度に製造・輸送・保管される「製品のまとまり」のこと。物流業界には「輸送ロット」「製造ロット」「保管ロット」などの区別があります。
- ピッキング:倉庫内で注文された商品を探し、取り出す作業です。SKUが適切に設定されていれば、この作業が格段に効率化します・
- 引き当て:注文が入った時点で、販売可能な在庫の中からその分の在庫を確保しておく作業です。すべての在庫数から注文が入った分を引いておくことで、実際に販売できる在庫数を管理できます。
自社に最適なSKUの設定・管理方法
SKUは自由に設定できるため、どのようなルールにするかで、その後の運用効率が大きく変わってきます。ここでは、失敗しないためのコード設計のポイントと、管理を効率化するツールについて解説します。
失敗しないSKUコードの設計ポイント
SKUコードの設計は、単なる番号付けではなく、将来のデータ分析戦略を設計することにもつながります。以下のポイントを抑えることで、長期的なビジネス成長を支える基盤を構築できます。
重複を必ず避ける
在庫の識別・管理という本来の目的を果たすため、最も重要なルールです。
桁数を揃える
コードの桁数を統一することで、管理システム上でのデータ抽出や集計が容易になります。
商品区分ごとに番号を付ける
商品のカテゴリやブランドごとに頭文字を変えるなど、視覚的にも管理しやすいルールを構築することで、コードが直感的に理解しやすくなります。
英数字を組み合わせる
英数字を組み合わせることで、Excelなどの集計ソフトで文字列として扱いやすくなります。ただし、最初の文字を「0」に設定すると、一部のシステムで正しく認識されない可能性があるため注意しましょう。
シンプルで理解しやすいルールにする
誰でもコードの意味を簡単に理解できるルールにすることで、人的ミスを減らし、チーム全体の管理精度を高めます。
まず情報を整理する
適切なSKUコードを設計するためには、まず管理する商品の「色、サイズ、素材、製造ロット」など、区別に必要な情報をすべてリストアップすることが欠かせません。この準備が、正確なコード設計の土台となります。例えば、コードに「製造ロット」や「仕入れ先」の情報を含めておけば、後からロットごとの品質問題や仕入れ先ごとの売上貢献度を分析できるようになります。つまり、SKUを設定する段階で、自社のビジネスに不可欠なデータをコードに「埋め込む」という戦略的な視点をもつことが重要です。
SKU管理を効率化するツール・システム
SKU管理は、事業規模が拡大するにつれて手作業で行うのは難しくなります。以下のツールやシステムを活用することで、管理の正確さと効率化をアップさせることができます。
在庫管理システム(WMS)
SKU管理は多岐にわたるため、専用の在庫管理システム(WMS)を導入することが最も効率的です。これにより、リアルタイムでの在庫状況把握、受発注管理、ピッキング作業の最適化などが実現します。
バーコード・QRコード
SKUをバーコードやQRコードとして生成することで、ハンディターミナルなどを利用した読み取り作業が可能となり、入出荷・棚卸し作業の精度とスピードが格段に向上します。
Excel/スプレッドシート
小規模事業者やSKU数が少ない場合は、Excelやスプレッドシートでも管理可能です。ただし、データの重複やリアルタイム性の確保に課題があるため、事業規模の拡大と共にシステムの導入を検討するとよいでしょう。
【業界別】SKUの活用例と考え方
SKUに対する考え方は、業界によって異なります。ここでは、業界ごとの考え方の違いを紹介します。
IT業界
IT業界では、同じソフトウェアでも、個人向け・法人向け、無料版・有料版といった「エディション(用途)の違い」をSKUとして識別します。これにより、異なるライセンスやサポート内容を持つ商品を正確に管理しています。
アパレル業界
アパレル業界は、SKU管理が最も重要視される業界の一つです。同じデザインでも、色やサイズといった複数のバリエーションが存在するため、SKUを用いて商品を細かく識別し、在庫管理や誤配送の防止に役立てています 。例えば、同じデザインのワンピースでもカラーが3色あれば、SKUは3と数えられます 。
化粧品業界
化粧品業界もアパレル業界と同様に、カラーバリエーションやパッケージデザインの違い(通常版、限定版など)でSKUを区別します。
たとえば、同じ形のアイライナーでも、微妙に異なるカラーや、限定デザインのパッケージがある場合、それぞれ別のSKUとして管理されます。
食品業界
食品業界では、同じ商品でも「内容量」(例:500mlと2Lのジュース)や「パッケージサイズ」(例:小瓶・中瓶・大瓶のソース)の違いをSKUで区別します。これにより、正確な在庫管理だけでなく、賞味期限の管理や、注文ごとの適切なピッキング作業が可能になります。
SKUの最新動向
SKU管理は、ECサイトのプラットフォーム自体がどんどん進化していく中で、その重要性をさらに増しています。ここでは、EC事業者が直面している最新の動きの例として、「楽天SKUプロジェクト」を解説します。
最新事例:楽天SKUプロジェクトとは?
楽天SKUプロジェクトは、2023年4月から順次進められている楽天市場の大きな改革です。このプロジェクトの一番の目的は、これまでバラバラだった商品のバリエーションページを、お客さんがもっと探しやすく、選びやすいように、一つの商品ページにまとめることです。
この変更によって、ECサイトの在庫管理の方法は大きく変わりました。主な変更点は以下の通りです。
- 商品ページの統合:複数の色やサイズがある商品は、一つの商品ページにまとめられ、そこからバリエーションを選ぶ方式に変わりました。
- レビューの集約:これまで商品バリエーションごとに分かれていたレビューが、一つの商品にまとまりました。昔のレビューも新しいページに引き継がれます。
- 価格表示の変更:セット商品などで、合計価格に加えて「単価」が表示されるようになり、お客さんが比べやすくなりました。
楽天SKUプロジェクトがSEOに与える影響と対策
このプロジェクトは、単なるシステムの変更ではなく、ECプラットフォーム全体が「お店側の管理のしやすさ」から「お客さんの買い物のしやすさ」へと軸足を移しているはっきりとしたサインです。
商品ページ統合によるSEOへの影響
- ランキングの統合:複数の商品ページが一つにまとまることで、それぞれのページのランキングも一つになると考えられています。新しいページは、以前最も高いランキングだったページの順位を引き継ぐ可能性があります 。
- ランキング変動リスク:ルールが変わったことで、これまで個別のページで上位に表示されていた商品が、検索結果で見つけにくくなるリスクも指摘されています 。
SEO対策のポイント
- SKU単位での商品情報をしっかり書く:これまで以上に、SKU単位で登録する商品情報(サイズ、色、ブランドなど)を正確に、そして充実させることが重要になります。
- 商品全体でのSEO戦略へ:この変化は、SEOの観点でも「個別のページを頑張って最適化する戦略」から、「商品ファミリー全体を強くする戦略」へとEC事業者に切り替えを求めています。これにより、SKU単位での正確な情報管理と、商品ポートフォリオ全体の最適化が、これからのEC事業におけるSEOの最も大事な課題となるでしょう。
SKUを上手に活用してビジネスを成長させよう
SKUは単なる在庫管理の単位ではありません。適切に設定して活用すれば、日々の業務を効率化し、発想や配送のケアレスミスを減らすことができます。
さらに、SKU単位での細かいデータ分析が可能になるため、顧客ニーズを深く理解し、より良い商品開発や戦略的な意思決定につながります。
SKUは、在庫問題を解決するだけでなく、ビジネスを成長させるための大切な土台となります。SKUをうまく活用して、より効率的で収益性の高いビジネスを目指しましょう。
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