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【2023年最新版】EC化率の現状は?コロナ禍の影響と業種別トピックス

【2023年最新版】EC化率の現状は?コロナ禍の影響と業種別トピックス

EC化率とは、インターネット通販(EC)の市場規模が商取引全体に占める割合を示す指標です。リアル店舗での販売、電話注文、FAX、Eメールによる通販など、あらゆる商取引金額のなかにおける、EC市場の大きさを測ることができます。EC化率を調べることで、国や産業ごとのECの普及度が把握できます。今回は2023年8月に経済産業省が公表した「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」から、2022年のEC化率の状況を解説します。

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目次

BtoC市場のEC化率

2022年における物販系分野のBtoC-EC市場規模は、前年の13兆2,865億円から7,132億円増加し、13兆9,997億円となりました。全体の増加率は5.37%で、EC化率は9.13%と前年より0.35ポイント上昇しています。

2020年、2021年に新型コロナウイルス感染症の影響で拡大した市場規模は、2022年に伸び率が鈍化しつつも増加傾向が継続していることが分かります。

物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移 物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移
(市場規模の単位:億円)

物販系分野BtoCの業種別EC化率

物販系分野のBtoC EC市場規模 物販系分野のBtoC EC市場規模

2022年に最もEC化が進んだ業種は「書籍、映像・音楽ソフト」でEC化率は52.16%、前年より5.96ポイントと大きく上昇しました。
EC化率の伸び率2位は「生活家電、AV機器、PC・周辺機器」(42.01%)で、前年比3.88ポイント増です。
3位は「生活雑貨、家具、インテリア」(29.59%)の、前年比1.34ポイント増と続きます。
市場規模では最も大きい「食品、飲料、酒類」ですが、EC化率の伸び率は逆に最も低くなりました。EC化率については、「書籍、映像・音楽ソフト」(52.16%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(42.01%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(29.59%)が高い割合を占めています。

物販系分野の6分野のトピックス

物販系分野の6分野について、伸び率順でトピックスを紹介します。

書籍、映像・音楽ソフト

書籍、映像ソフト、オンラインコンテンツを除く音楽ソフトから構成される分野では、2022年の市場規模が1兆8,222億円で前年比4.02%増加し、EC化率は52.16%と最も高くなっています。
公益社団法人全国出版協会によれば、紙の出版物の市場規模は前年比マイナス6.5%でした。書籍の2022年におけるBtoC-EC市場は、新型コロナウイルス感染症拡大による巣ごもり需要の終息や、物価上昇による買い控えにより、緩やかな伸びとなりました。
一方、電子出版市場は拡大傾向にありますが、電子出版市場の大半はコミックが占めることから、電子出版物が紙の出版市場に与える影響は限定的と考えられます。今後の見通しとしては、書籍と電子書籍の使い分けが消費者行動に影響を与え、両市場がこのまま共存する可能性があります。
映像・音楽ソフト(オンラインコンテンツ除く)のBtoC-EC市場も拡大していますが、一般社団法人日本映像ソフト協会によれば、ビデオソフト(DVD、ブルーレイ)の出荷実績は前年割れとなっています。動画配信と音楽配信が伸びていることが、映像・音楽ソフト市場に影響していると考えられます。

生活家電、AV機器、PC・周辺機器

生活家電、AV機器、PC・周辺機器の市場規模は2兆5,528億円で、前年比で3.84%の増加です。EC化率は42.01%で、物販系のなかでは上位を占めています。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの年間平均支出は62,305円で、前年比では減少していますが、2019年と比較すると8.7%の増加です。新型コロナウイルス感染症拡大下での巣ごもり需要が落ち着き、価格上昇による需要減退が影響したことで、緩やかな伸びとなっています。
この分野においては、大手ECプラットフォーム事業者(Amazonなど)大手家電量販店、通販事業者という市場の構図が継続しています。このカテゴリの製品は仕様が明確であるため、消費者は事前の調査を通じて製品の内容や特徴を理解しやすくなっており、ECでの販売に親和性が高いと言えるでしょう。
事業者の戦略としては、実店舗とECの連動戦略として価格差をなくし、実店舗内からECへ誘導する手法の導入が見られます。
EC家電では、リユース・リサイクル市場が拡大しています。家電を宅配回収し、リユース・リサイクル品の販売サービスを行う事業者の増加が見られ、サステナビリティ意識の高まりが市場拡大をあと押ししている様子がうかがわれます。小物家電がメインであるものの、大型白物家電も取り扱う事業者が増え、今後の市場拡大が期待されます。

生活雑貨、家具、インテリア

家事雑貨(食器、台所用品など)、家事用消耗品(洗剤、ティッシュなど)、一般家具、インテリア(カーテンなど)、寝具によって構成される市場で、2022年のBtoC-EC市場規模は2兆3,541億円、前年比で3.47%上昇しています。EC化率は29.59%です。家事雑貨と家事用消耗品が約7割を占め、一般家具、インテリア、寝具が残りの約3割を占めます。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの「生活雑貨、家具、インテリア」の年間平均支出は、2019年との比較では6.1%増加しています。コロナ禍においては外出を控える行動が増加し、普段使いの商品のストック需要が高まりましたが、行動制限が終了した影響もあり、前年比で見ると需要が鈍化し、伸び率が減少しました。
サブスクリプションの利用が購入頻度の高い消耗品にも浸透し、EC市場規模拡大への寄与が期待されます。そのほか、ECサイトやスマートフォンアプリなどから注文を受け、食品や日用品を短時間で配達するクイックコマースが、日用品分野においても拡大しており、新たな需要の取り込みに寄与する可能性があります。
家具やインテリア商品は、巣ごもり需要の低下や物価上昇の影響によって市場規模の伸び率が緩やかになりましたが、ECサイト上での展示やAIを活用した商品提案により需要が刺激されています。拡張現実(AR)技術を活用して、家具やインテリア商品を自宅の部屋に配置したイメージを確認できる機能が提供されており、ECでの購入の抵抗感を減少させているようです。またAIを活用したECサイト上での商品提案技術が進化しており、新たな需要の発掘が期待されます。

化粧品、医薬品

化粧品全般、医薬品、美容・健康関連器具を含む市場の市場規模は9,191億円で、前年比で7.48%上昇し、EC化率は8.24%です。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの「化粧品等」「医薬品等」の年間平均支出は、前者については減少、後者については増加を示しました。「化粧品等」の減少からは、消費者の外出機会は増えているが化粧品の支出回復にはつながっていないことが分かります。「医薬品等」においては、マスクや消毒液といった衛生商品の需要が落ち着き、前年よりわずかに低下しています。
化粧品業界は国内大手企業、通販系企業、外資系企業に分かれ、多様な販売チャネルを持っています。アイテムの種類が多く、製品の特徴も多岐にわたるため、EC化率が低く、対面依存度が高い傾向があります。
新型コロナウイルス感染症拡大によるインバウンド需要の落ち込みも加わり、実店舗の化粧品販売は不振に陥りましたが、2021年から回復の兆しが見られます。大手化粧品メーカーは状況変化に強いEC販売強化のため、肌測定ツールやメイクアップシミュレーションを提供し、Web広告やライブコマースを活用してEC利用を促進しています。オンライン接客やカウンセリングの導入、AR技術を使用した仮想的な化粧品試供などが増えており、テクノロジーの進化が業界にプラスの影響を与えています。
また、一般用医薬品ではEC販売が可能になり、市場規模が拡大しています。オンライン服薬指導や電子処方箋の導入が行われ、今後の市場拡大が期待されます。

衣類、服飾雑貨等

衣類(インナーウエア・アウターウエア)、服装雑貨(靴、鞄、宝飾品、アクセサリー)、子供服、スポーツ用品で構成される市場の市場規模は2兆5,499億円で、前年比で5.02%増加EC化率は21.56%です。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの「衣類、服装雑貨」の年間平均支出は、2019年と比較ではマイナス14.4%ですが、2021年比では増加しました。新型コロナウイルス感染症拡大によるステイホームや在宅勤務の影響で支出が減少していましたが、外出需要の増加にともない売り上げが伸びています。
OMO(Online Merges Offline)戦略の採用が増え、ECと実店舗の連携が進行しています。店舗で商品を試着してからECで購入するサービスや、オンライン接客が広まってきました。
メタバースへの進出も増えており、ファッション業界との親和性が高いとされている仮想現実の活用が注目されています。VR上でのイベントや仮想店舗、NFTファッション(SNSやメタバース上でアバターが着用するデジタルファッションアイテムにNFTを組み込んだもの)など、新しい取り組みが行われています。
メタバースやNFT領域はまだ一般消費者には浸透していませんが、若い層を中心に今後の発展に期待が寄せられています。
※NFT=代替不可能なトークン

食品、飲料、酒類

食品、飲料、酒類の市場規模は2兆7,505億円で、前年比で9.15%増加EC化率は4.16%です。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの「食品、飲料、酒類」の年間平均支出は678,516円で、2019年と比較して4.5%増加しました。特に調理食品の伸びが大きく、その他酒類、菓子類、肉類なども成長しています。
この分野では、GMS(総合スーパー)、EC特化ネットスーパー、EC大手企業、飲料専門事業者、通販事業者、菓子メーカー、酒類販売業、百貨店など、多様な企業によるEC市場への参入が見られます。
大手ネットスーパーが市場拡大に大きく貢献し、新型コロナウイルス感染症の影響が食品のEC購入を促進しました。ミールキットなどサブスクリプション型の宅配サービスも成長が著しく、注文数が増加傾向にあります。
注文を受けたら即日で商品を届ける「クイックコマース」サービスが広まっており、来店サービスを一切実施していない配達専用店舗(ダークストア)からの商品配送を行う企業も増えています。
大手ECプラットフォーム事業者の参入が市場を活気づけている一方で、撤退する事業者も存在します。配送やパッケージングにかかる手間、コストにより軌道に乗せるのが難しいという一面があります。
全体的な傾向としては、高齢者がECでの購入に移行しており、新型コロナウイルス感染症で喚起された生活習慣病予防ダイエット健康増進といった消費者ニーズへの対応が望まれます。
特に健康食品は機能性が幅広いためECとの相性が良く、EC市場拡大が継続する可能性があります。

BtoB市場のEC化率

2022年のBtoB-EC市場規模は、420兆2,354億円(前年比12.8%増)で、「その他」を除いたEC化率は、前年から1.9ポイント増の37.5%となりました。

BtoB-EC市場規模の推移 BtoB-EC市場規模の推移

BtoB-ECの市場規模は、2020年を底に回復傾向が継続しており、コロナの影響以前をはるかに超える市場規模の拡大を見せています。EC化率の伸びはわずかに鈍化したものの、2019年比では5.8ポイントの伸びです。

BtoBの業種別EC化率

BtoB-EC市場規模の業種別内訳 BtoB-EC市場規模の業種別内訳

BtoB-ECにおいてEC化率が高いのは、製造業輸送用機械76.7%、次いで食品70%、電気・情報関連機器66.3%の順となっています。
製造業以外では、運輸卸売金融業の前年比市場規模が着実な伸びを見せています。 EC化率については、数値の差はあるもののすべての業界で増加が見られます。各業界での需要に対する供給の仕組みが整備されることで、さらなる拡大が期待できます。

コロナ禍の影響が落ち着きつつあるなかEC化率の上昇は継続傾向

インターネットが生活の隅々まで普及するとともに、すべての分野においてEC化率の高まりが見られます。コロナ禍においてEC市場は急激に拡大しましたが、影響が落ち着きつつあるなかでも緩やかな上昇は続いています。比較的EC化率が低かった分野や業種においても、新たなテクノロジーの活用などの動きが活発化しています。消費者側でもさまざまなECサービスに親しむ様子がうかがわれ、さらなるEC需要の伸びが期待されます。

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