ネットショップの始め方 開業する手順やサイトの構築方法を解説
経済産業省の調べによると、2019年の日本のEC市場規模は、BtoCが19.4兆円。BtoBに至っては353.0兆円で、右肩上がりの伸びとなっています。さらに2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響による巣ごもり需要から、EC市場は一層拡大すると予測されています。そうしたなかで、これから新たにネットショップを開業しようと考えたとき、まず何から手を付ければいいのでしょうか。この記事では、ネットショップを開業するためのステップや、サイトの構築方法、内製と外部委託のそれぞれの特徴を分かりやすく解説します。
ネットショップの特徴とは?実店舗との違い
まずはネットショップとはどういったものか、実店舗との違いを見てみましょう。
時間、場所に制限がない
ネットショップでは、24時間365日注文を受け付けられます。そして日本全国から、商品やショップによっては全世界から注文を受けることもできます。
低コストでオープンできる
実店舗では大きな負担となる家賃が、ネットショップでは不要です。自社サイトの場合はサーバー代やドメイン代、モール出店の場合は出店料や販売手数料があれば、最低限の開業が可能です。ほかにはサイト構築・運営費、広告宣伝費が必要になりますが、実店舗で必要な什器代、内装工事代などはかかりません。そのため、実店舗よりも初期費用をかけずにオープンすることができます。
ネットショップ開業のためのステップ
ネットショップを開業するためにはどういった手順で進めればよいのか、ネットショップの種類とそれぞれの開業のためのステップを紹介します。
1.ネットショップのコンセプトを決める
自社のブランディングも兼ねたコンセプトショップにするのか、定期購入をしやすいネットショップにするのか、海外の顧客も対象とするのかなど、ネットショップで誰にどんな価値を届けたいのかを考えます。売上や来店者の規模も想定しておきます。
2.出店形態を決める
ネットショップの出店形態は、Amazonや楽天市場のような複数の店舗が集まるモールに出店するか、自社で独自にECサイトを構築するかの2つに分けられます。
モールに出店する場合、比較的安い費用で始めることができます。モール自体に知名度があるため、自社で集客をしなくても一定のお客さんが集まるというメリットがあります。また、テキストや画像を入れるだけで簡単にWebページを作れるため、時間をかけずにオープンすることが可能です。
これに対し、独自サイトはWebサイトを自社で立ち上げる必要があります。そのため、モールに比べるとオープンまでに時間はかかるものの、自由度が高く、自社のブランディングにつなげることができる点は大きな特徴といえるでしょう。
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カスタマーレビューに関する詳しい解説は下記のコラムでご覧いただけます。
【ECにおけるはじめの一歩】自社ECとモール型ECの違いとは?
3.決済方法や運送会社の選択をする
クレジット、代引き、コンビニ、銀行決済といった決済方法を決め、商品の発送を依頼する運送会社を選択します。在庫を置くための倉庫の準備や、ネットショップの運営、受注管理や発送のための人員の手配も必要です。
4.ネットショップを制作する
コンセプトや出店形態といった全体の設計図にのっとって、ネットショップの制作を行います。独自サイトを立ち上げる際には、どういった方法で構築するかを選択します。また、構築を自社で行うか外部に委託するかを決め、外部委託する場合は業者を選定して制作をスタートさせます。構築方法の種類や、内部制作と外部委託のメリット・デメリットはのちほど詳しく解説します。
ネットショップの開業に必要な資金
ネットショップは低コストでの開業が可能と説明しましたが、ここではより詳しく必要な資金について見ていきます。
ネットショップの構築費用
ネットショップの規模や、内部で制作するか、外部に委託するかといった条件によって構築費用は大きく異なります。すべて社内で構築できるのであれば、かかるのは時間的なコストだけです。ある程度の規模のネットショップにしたい場合、すべて外部に依頼すると500万円以上かかる場合もあります。
ドメインの取得費用
モール出店では独自ドメインを取得する必要はありませんが、独自サイトの場合はドメインの取得、維持費がかかります。ドメインは、通常、レンタルサーバー事業者に登録申請を行い取得します。費用はドメインのタイプによって異なりますが、数百円から1万円程度。更新は半年~1年ごとで、更新費用も取得費用とほぼ同じです。
レンタルサーバー代
独自出店でネットショップを開業する場合、サーバーのレンタル費用がかかります。商品数がさほど多くない場合は、共有サーバーを使ってコストを抑えられますが、大規模なショップで専用サーバーをレンタルする場合はコストも高額になり、月額数千円から数万円とかなりの差が出ます。
梱包資材費
段ボールやガムテープ、クラフトテープといった梱包に必要な資材費も必要です。段ボールは注文する数量、サイズによって価格が大きく異なります。既存の形状以外、オリジナルロゴマークを入れるといった特注品になると、その分、割高になります。
人件費
既存の人員ではまかなえず、運営や受注管理、商品発送に新たな人手が必要な場合は、採用、教育といった費用もかかります。
これ以外に、新たな事業として始める場合は、倉庫の手配やパソコン、プリンターといった機材の準備にも費用が必要です。
独自出店のネットショップ構築のポイント
モールを使わず、独自出店でネットショップを構築する場合のポイントとなるのが、構築方法の選択と必要な機能の確認です。
構築方法を選択する
ECサイトの主な構築方法には、主に「ASP」「オープンソース」「パッケージ」「フルスクラッチ」の4つがあります。ここではそれぞれの特徴を紹介します。
ASP
ASP(Application Service Provider)とは、ネットワーク経由でアプリケーションソフトの機能を顧客に提供するサービスのことをいいます。ネットショップ用のASPを使えば、すでに構築されているフォーマットに自社の商品を登録するだけで開業が可能です。ほかの方法に比べカスタマイズ性は低いものの、開業コストを抑えられるのがメリットです。最近ではインスタントECと呼ばれる、初期費用、月額費用が無料で、商品が売れた際に手数料が発生する簡易なASPも登場しています。
オープンソース
インターネット上に公開されている、ライセンスフリーのソフトをインストールして利用するものです。カートや管理運用ツールなど、ネットショップを開業するうえで必要な機能を持ったソフトがあります。オープンソースは基本的にライセンス費用がかからないため、コストを抑えた開業が可能です。カスタマイズ性が高い点もオープンソースの特徴のひとつですが、利用にはプログラムやデザインの専門知識が求められます。
パッケージ
ネットショップの構築に必要な機能がそろったソフトを購入し、それをもとに構築するものです。カスタマイズ性の高さはオープンソースと同様ですが、パッケージ販売を行っている企業のサポートがある点が大きく異なります。ただし、その分、コストも高額となるため、比較的大規模なネットショップ向けと言えるでしょう。
フルスクラッチ
既存のオープンソースやパッケージソフトを使わず、自分たちでゼロからネットショップを構築することをフルスクラッチと言います。ゼロからの構築となるため、どのタイプよりもカスタマイズ性、自由度は高くなりますが、メンテナンスも含めて、高い技術力や専門知識が求められます。
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ECサイトの構築方法に関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
ECサイトの構築方法を比較解説!費用・手順・選び方のポイント
必要な機能を確認する
ネットショップを効率的に運営するためには、さまざまな機能が必要です。ASP、オープンソース、パッケージには基本的な機能が用意されていますが、外部連携できる独立したサービスもあります。こういった機能は運営側の使い勝手に大きく影響します。自社のニーズに合っているか、使いこなせるかどうかを導入時にしっかり確認しましょう。
ショッピングカート
注文や支払いの処理を自動で行います。最近では販売促進や顧客分析の機能の付いた高性能のショッピングカートも登場しています。
決済システム
代金の支払いを完了させる決済システムの導入には、決済代行会社との契約が必要です。決済にはクレジットカード、コンビニ、代引きなどさまざまな方法がありますが、最近ではPayPay(オンライン)やAmazon PayのようなID決済も増えています。
受注管理システム
注文を受けてから出荷するまでの管理を、自動化・一元化して効率的に行うシステムです。
顧客管理システム
顧客の情報(名前や住所、購買履歴など)を一元的に管理するシステムで、CRMツールとも呼ばれます。システムによって、データ分析に優れているものや、メールマーケティングに強いものといった特徴があります。
在庫管理システム
注文数が増えてくると煩雑になる入荷や商品のピックアップ、検品といった在庫情報の管理を一元化して行うシステムです。受注管理システムと連携させることで効率が上がります。
ネットショップ構築を内製・外部委託で行う際のメリットとデメリット
前述のようにネットショップの構築には、社内で行う内製と専門業者に任せる外部委託の2種類があります。それぞれのメリットとデメリットを説明します。
内製のメリット
コストが抑えられる
社員に支払う給与の範囲で構築できるため、コストが全体的に抑えられます。
運用時の改修やトラブルに迅速に対応できる
万が一、トラブルが発生した場合でも対策を外部に依頼する必要がないため、迅速な対応が可能です。改修も社内のスケジュールで行うことができます。
内製のデメリット
人材が必要
内製の場合、どの構築方法を選んでもWeb制作や運用に関する最低限の知識が求められます。ある程度の知識を持った人材がいなければ、育成、採用を行わなければなりません。
外部委託のメリット
社内のリソースを割かずにすむ
構築にかける時間や人材を商品の質やサービスの向上に向けられます。
クオリティの高いネットショップが期待できる
プロに依頼するため、機能やデザイン性において高品質なネットショップを作ることができます。
外部委託のデメリット
コストがかかる
構築費用はもちろんですが、運用開始後の改修やトラブル対応といったサポートにもコストがかかります。
ネットショップを開業する際の注意点
ネットショップを新たに開業するときは次の点に注意をしましょう。
セキュリティ対策
個人情報を扱うため、十分な注意が必要です。カートを自作する場合は特に個人情報を守る対策が必須になります。ユーザーに会員登録をさせる場合は、ID、パスワードが乗っ取られないように対策を取ります。
特商法の記載
特商法とは、消費者の利益を守るルールを定めた法律で、正式には特定商取引法といいます。ネットショップを開業する際は、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などに加え、商品の注文・返品方法などを明記したページを必ず設置しなければなりません。
ネットショップの開業では、コンセプトを固めてから構築方法の検討を
今や多くの事業者がネットショップを展開しています。これから開業となると、後発になってしまうことは否めません。そのなかで勝負をするには、自社ならではのコンセプトとそれを表現するネットショップ作りが必要です。ネットショップを作る方法には多くの選択肢がありますが、まずはどんな目的でどんなネットショップを作りたいのかを柱に据えることが大事です。そのうえでそのコンセプトを実現できる方法を、予算や社内のリソースを鑑みて選択しましょう。
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