サイトリニューアルの進め方 目的やタイミング、成功のポイント解説

「Webサイトのデザインが古く感じる」「更新作業が大変で放置してしまっている」——そう感じたら、Webサイトリニューアルを検討するタイミングかもしれません。
この記事では、Webサイトリニューアルの目的や実施すべきタイミング、手順や注意点までを分かりやすく解説します。企業の広報・マーケティング担当の方や、リニューアルを検討しているWeb担当者の方はぜひご覧ください。

サイトリニューアルとは?
Webサイトリニューアルとは、既存のWebサイトを見直し、デザインや構成、コンテンツ、機能などを改善することです。単に見た目を変えるだけでなく、目的や課題に応じて中身を最適化していく取り組みです。
サイトをリニューアルする主な目的
リニューアルの目的は企業ごとにさまざまですが、よくある目的は以下のようなものです。
1. デザインを刷新したい
古くなったデザインを最新のトレンドに合わせて刷新することで、訪問者の印象を向上させます。ユーザーの使いやすさ(UX)を意識したUI設計にすることで、離脱率の改善も期待できます。
2. ユーザー体験を向上させたい
ユーザーが情報にたどり着きやすいよう、導線設計やナビゲーションを見直すことで、サイト全体の利便性が向上します。
3. スマートフォン対応したい(モバイルフレンドリー)
スマートフォン利用者の増加に伴い、レスポンシブ対応は不可欠です。モバイル対応がされていないサイトは、検索順位にも悪影響を及ぼします。
4. SEO対策を強化したい
検索エンジンに評価されやすい構成やキーワード設計を取り入れ、自然検索からの流入を増やすことができます。
5. 運用を効率化したい
WordPressなどのCMSを導入することで、社内で簡単にコンテンツを更新・追加できる体制を整えることができます。
6. セキュリティ対策を強化したい
古いサイトは脆弱性を抱えやすいため、セキュリティ面でも定期的な見直しが必要です。
リニューアルを検討すべきタイミングとは?
次のような兆候が現在のWebサイトに見られたら、リニューアルの検討をおすすめします。
公開から3年以上経過している
Webサイトが「どことなく古臭く見える」と思ったら改修のタイミングかもしれません。
一般的には3年~4年くらいたつとデザインや技術面が時代遅れになっている可能性が高く、ユーザー体験や検索順位に影響します。
例えば、運営中のサイトはスマートフォンやタブレット端末から快適に見ることができるでしょうか?スマートフォンに最適化されていないとモバイルユーザーにとって使いにくく、離脱率が高くなります。
ほかにも、競合する企業がWebサイトを新しく作り直すと、自社のWebサイトと比較されることが増え、それがデザインを見直すきっかけとなるケースもあります。
機能が古くなった
インターネットブラウザのバージョン更新に対応できず、レイアウトが崩れてしまう、特定のブラウザに対応できなくなるというように、ブラウザ側の機能が変わることで、サイトが正常に動かなくなることもあります。これも避けられない改修のタイミングです。
例えば、かつてはサイトに動画や効果音を取り入れる場合、Adobe Flashというソフトを使うことが一般的でしたが、2020年12月で提供とサポートが終了しました。サポートが終了した機能を使ったWebサイトは、OS側のアップデートにより動作しなくなったり、セキュリティの問題が発生したりするため、改修しなくてはなりません。
セキュリティ対策が十分でない
サイトのセキュリティ対策も日進月歩で進化しています。
特に注意したいことのひとつが、WebサイトのSSL化です。SSLはSecure Sockets Layerの略語で、インターネット上の通信を暗号化する技術です。この対策をしているサイトのURLは、従来の「http://」ではなく「https://」で始まります。
SSL化によってセキュリティ面が強化されるのはもちろんですが、それだけではありません。インターネットブラウザのChromeは、2018年7月からSSL化をしていないサイトに「保護されていません」という警告を表示することにしました。また、Googleは常時SSL化されたサイトを検索結果のランキングで優遇すると、2014年に明言しています。安全性を気にするユーザーは、SSL化していないサイトを避ける傾向があるため、まだSSL化をしていないのであれば早めの改修が必須となります。
増えた情報で構成が複雑になった
公開から時間がたち、掲載情報が増えてきたことによって、コンテンツの構成が複雑になっている場合も、改修が必要です。サイト上で情報が整理されていないと、求める情報がどこにあるのか分かりづらくなり、結果として訪問者が目的を果たす前に脱落してしまう可能性が大きくなります。情報が整理されていない場合は、Webサイトを使いやすくするためのUI/UX設計(※)を見直し、複雑になったコンテンツの整理を行います。
※ UIとは、User Interfaceの略で画面上のフォントや購入ボタンなどの表示方法のこと。UXは、User Experienceの略でユーザーから見たサイト全体の使い心地を表します。UIやUXの設計を改善することで、ユーザーが直観的に分かりやすく、利用しやすいWebサイトを実現することができます。
アクセスやコンバージョンが減少している
企業のサイトの場合は問い合わせや資料請求の数が、ECサイトならアクセス数や売上が減少してきたら、改修の時期が来ている可能性があります。
年数が経過するにつれて指標の数値がピークを超え、頭打ちになったり、減少していったりすることがあります。サイト内の情報やコンテンツを更新、追加しても成果が出なくなってしまったときは、前出の情報の整理を含め、ユーザビリティに問題があるのかもしれません。UI/UXの見直しを検討しましょう。
社名変更・ロゴ刷新などブランディングに変更があった
企業の名称やロゴ、タグラインなどが新しくなったにも関わらず、Webサイトが古いままでは、ブランドイメージに一貫性がなくなり、ユーザーに混乱や違和感を与えてしまいます。リブランディングの目的が「ターゲット層の見直し」や「企業イメージの刷新」である場合、Webサイトもそれに合わせてデザインやコンテンツの方向性を調整するようにしましょう。
名刺や会社案内などと並び、Webサイトは最も多くの人の目に触れる企業の顔です。ブランディング変更に合わせたリニューアルは、認知拡大と信頼獲得のために必要なステップといえるでしょう。
Webサイトリニューアルの進め方
サイトの改修を決めたら、次のような手順で作業を進めます。
1~8の手順の具体的な作業内容について解説します。
①既存サイトを分析して問題点を洗い出す
現状のサイトに関する問題点を、GAなどを活用したサイト分析や社内外の声を集めて洗い出しましょう。
②どのようなサイトに改修するかを決める
洗い出した問題点を元に、自社での方針を決めて、リニューアルの目的や方向性を決めます。その上で、「問い合わせを2倍にする」など、具体的なKPIを設定しましょう。
③制作を外注する場合は発注先の選定を行う
サイトの外注先を選定します。選定に際しては、改修目的や問題点を共有し、解決策について一緒に考えてもらえるような業者を選定するとよいでしょう。その他、Webサイトのリニューアルを外注する基準やポイントは後述します。
■制作会社への依頼や社内承認に下記の準備シートをお役立てください。
➡【サイト制作・リニューアルをお考えの方へ】Webサイト制作準備シート(Excel形式)
④1と2を織り込んで要件定義をする
要件定義は、サイトの具体的な構成や機能などを決める作業です。要件定義については後述します。
⑤サイト設計をする
要件定義で決めた項目がサイトへどのように実装されるかを設計します。設計には、サイトマップを作成することが多くあります。
⑥デザインを作成する
サイトの設計にあわせてレイアウトやデザイン案を作成します。デザイン案を検討する際には、ワイヤーフレームというラフ画を使って意見の統一を図っていくことが多いです。
⑦ページやコンテンツを制作する
サイトマップとワイヤーフレームをもとに、コーディングやツールの導入を行います。あわせて、SEO対策を含めたマーケティング施策の検討や、訴求に用いる資料作成などを行います。目的次第ではマーケティングに必要なデータを事前に用意しておくとよいでしょう。
⑧統合テストを行う
改修したWebサイトに関して、公開前に各種機能をテストし、エラーが起きたらデバッグ(エラーを修正するプロセス)を繰り返し行います。一般的にリニューアルサイト用のテスト環境を用意し、既存のサイトに悪影響を及ぼさないようにしましょう。
Webサイトリニューアルのための要件定義とは?
要件定義とは、実装するべき機能や満たすべき性能などを明確にしていく作業です。この作業がきちんとできているかどうかが、Webサイトリニューアルの成否を決めます。特にWebサイトのリニューアルを外部の制作会社に依頼する場合は、依頼側の要望がすべて要件定義に落とし込まれていなければ、思ったとおりのサイトはできません。
要件定義のプロセス
要件定義は以下のような流れで行います。
制作担当者と打ち合わせを行う
現在の課題を洗い出し、整理する
リニューアルの方向性を具体化する
社内の関係者と協議し、承認を受ける
要件定義書として文書化する
要件定義ではWeb担当者が主体となり、制作担当者と一緒にどういったサイトにするかを決めていきます。このプロセスのあとは、制作担当者に主導権が移り、実際の設計やデザインなどの業務が始まります。要件定義の段階で方向がしっかり決まっていないと、あとで大きな修正が入ることになり、コストが余分にかかってしまうリスクがあります。
また、リニューアルでは現在のサイトの問題解決をメインに考えます。人気があるコンテンツは新しいサイトに移して流用することも大切です。ドメインの変更には既存のユーザーが離れやすいといったリスクが伴うため、不用意に変えない方がいいのですが、ドメインを変えたい理由がある場合は、制作担当に相談してみましょう。
Check
ドメイン変更の影響や具体的な手順について、下記で詳しく解説しています。
ドメイン変更の手順とは?考えられる影響やリダイレクトの方法を解説
要件定義のポイント
要件定義で、まず考えるべきなのは予算やスケジュールよりも「何をしたいのか」です。なぜサイトのリニューアルが必要なのかを明確にしてから、予算内でその目的を達成できる方法を探します。ほかにも次のことを重点的に考えます。
- 目標:リニューアルで何を達成したいか?
- 優先順位:何に予算と時間をかけるか?
- ターゲット:誰に使ってもらうための改修か?
- システム:サーバーやコンテンツ管理システムを選定する基準は?
- 条件:予算、スケジュール、ページのボリュームなど
Check
要件定義は制作会社に依頼する提案依頼書「RFP」に反映されます。
RFP(提案依頼書)とは?ECサイト改修を成功させるために必要な項目や作成のポイント
■RFPのまとめに役立つ準備シートはこちら。
Webサイトのリニューアルにかかる費用
実際に、Webサイトのリニューアルには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。ここでは、状況別にWebサイトの改修費用(一般的な相場)をご紹介します。
一般的なリニューアル|デザインの変更を目的としたもの
「デザインの変更のみ」など、Webサイトの簡易なリニューアルの場合は、300万円程度に収まるケースが多いです。また、「ブログのカテゴリを増やす」など、既存のサイトに簡単なメニューを追加する等であれば、さらに金額は低くなることもあります。もちろん、実際には要件によって費用が異なりますが、概ね300万円以下でできそうなリニューアル内容は以下です。
- スマートフォン(タブレット)表示への対応(レスポンシブデザイン)仕様への変更
- サービスページなど、既存のシステムを触らなくても追加できるような変更
専門性の高いリニューアル|ブランディングや集客を目的としたもの
SEO対策を講じたり、ブランディングなどを目的とする場合、300万円以内におさめるのが難しくなってきます。主に、どういった作業に費用がかかってくるかを以下に記載します。
- SEO対策の策定:既存のWebサイトをSEO目線で診断して、改修に必要な要素を洗い出す
- ブランディングデザイン:企業や商品に合ったデザイナーやカメラマン、動画編集者などを手配
上記の項目が増えると300万円以上の費用がかかります。どの施策も、サイトをベースに問合せや仕事の依頼を受けるには、非常に有効な施策です。CPA(顧客1人当たりの獲得費用)から制作予算を検討し、外注先を選定しましょう。
オウンドメディアのリニューアル|情報の発信を目的としたもの
オウンドメディアとは自社保有のメディア全てを指しますが、ここではサービスサイトやコーポレートサイトとは別に、自社の顧客にかかわる情報発信をブログ等で行うサイトとします。オウンドメディアの見た目をデザインするだけであればさほど費用はかかりませんが、コンテンツマーケティングを目的に、SEO対策を兼ねて機能を実装すると費用がかさみます。
ECサイトのリニューアル|目的別で費用感が大きく異なるもの
ECサイトの場合、ECカートを変更(乗り換え)するか否かで、大きく費用が異なります。カートを変更すれば、商品情報の移設はもちろん、受発注システム、各種システム連携等々も見直す必要があります。ECカートを変更しない場合は、デザイン的な変更が主となるためあまりかかりません。サイトの見た目ではなく、決済手段や導入ツールなど、機能的な変更を検討している場合は、ある程度の費用がかかることを念頭に置いておきましょう。
サイトのリニューアルは外注すべき?
サイトの改修を誰に任せるかは非常に重要な課題です。改修によって、以前よりもWebサイトの質が低下する失敗は意外と多く見られます。経験の浅い制作担当者に任せると、意図しないリニューアルになり、元に戻せないこともあるため、注意が必要です。
自社にサイト制作の専門知識を持つ人がいれば、社内で改修を行うことも可能です。しかし、Webテクノロジーやデザインのトレンドは急速に変化するため、専門家でないと対応が難しいこともあるでしょう。そのため、最近では外部の制作会社に依頼するケースが増えています。
自社で改修を行う場合と外部に依頼する場合の、それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。
自社でリニューアルする場合
外部の制作会社に依頼する場合
リニューアルを外注するときの制作会社の選び方
Webサイトリニューアルを成功させるには、パートナーとなる制作会社の選定が非常に重要です。以下のポイントを押さえて比較・検討し、信頼できる制作会社を選びましょう。
①実績・事例が豊富かどうか
過去の制作実績や事例を確認することで、制作会社の得意分野やデザインの傾向、対応力を把握できます。自社と同業種・同規模のサイト制作経験があるかどうかも重要なチェックポイントです。
②リニューアルの目的や課題に寄り添った提案をしてくれるか
テンプレート的な提案ではなく、自社の目的(例:集客強化、採用強化、ブランディング強化など)や課題に対して具体的な改善案を出してくれる会社は、信頼性が高いといえます。単なる“見た目の改善”にとどまらず、成果を見据えた提案力があるかを見極めましょう。
③円滑なコミュニケーションが取れるか
制作期間中は何度も打ち合わせや確認が発生するため、スムーズに連絡が取れるか、要望を正確に理解してくれるかは非常に重要です。最初のヒアリング時点での対応も判断材料になります。
④社内体制や担当者のスキルが明確であるか
「プロジェクトを誰が担当するのか」「デザイナー・エンジニアは社内か外注か」など、制作体制を確認しておくと安心です。担当者が途中で変わって混乱するケースもあるため、体制が明確な会社を選びましょう。
⑤費用とスケジュールが明確であるか
見積書が細かく明記されているか、制作期間や納品のタイミングが現実的かどうかも重要な判断ポイントです。後から追加費用が発生しないよう、見積もり内容と契約内容をしっかり確認しましょう。
⑥リニューアル後のサポートがあるか
Webサイトは公開して終わりではありません。更新作業の支援、トラブル対応、アクセス解析など、リニューアル後の運用支援があるかどうかも確認しておきましょう。長期的に伴走してくれる制作会社は心強いパートナーになります。
サイトリニューアルで失敗しないためのポイント
最後に、サイトリニューアルを成功させるために押さえておきたいポイントを紹介します。
目的を明確にする
「とりあえず見た目を良くしたい」だけでは、費用に見合う成果が得られません。売上アップ、採用強化、問い合わせ増加など、ビジネス視点での目的を明確化することが重要です。
ユーザーの視点で設計する
社内の意見だけで構成を決めると、ユーザーが求める情報にたどり着けないサイトになってしまいます。ペルソナ設計やカスタマージャーニーを活用して、ユーザー視点で設計することが大切です。
SEOや運用性を考慮する
検索順位を意識した設計や、CMSの導入など更新しやすい体制を整えることも大切です。公開後もコンテンツを充実させ、効果を継続的に高めていきましょう。
社内体制とスケジュールを整える
リニューアルには情報整理や原稿作成など、社内の協力が不可欠です。関係部署との連携やスケジュール管理をしっかり準備しておくことが、スムーズな進行につながります。
Webサイトリニューアルは要件定義が決め手
Webサイトリニューアルは、企業の信頼性や売上にも関わる重要なプロジェクトです。リニューアルを成功させるコツは、目的をはっきりさせ、要件定義を的確に行うことで、成果につながるサイトへと進化させることができます。今回紹介したポイントを参考に、信頼できるパートナーに依頼をし、着実に取り組みましょう。
WebサイトやECサイトの構築やリニューアルに関するお悩みなら、なんでもお気軽にご相談ください。TOPPANクロレでは、企業の経営課題や外部環境を踏まえたうえで、データに基づいた戦略プランの設計から運用までをお手伝いします。
- 投稿者: クロレDIGITAL
- コラム
- Webマーケティング, サイトリニューアル, サイト制作