近年、採用は売り手市場と言われ、今後も採用競争はますます激化していくと予想されます。そんななか、従来の受け身の採用ではなく攻めの採用として注目を集めているのが「ダイレクトリクルーティング」です。この記事ではダイレクトリクルーティングの基本や実施するメリット・デメリット、成功のポイントを分かりやすく解説します。
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ダイレクトリクルーティングとは、企業自ら求職者に直接アプローチする採用方法です。海外では主流ともいえる採用方法ですが、近年は日本でも取り入れる企業が増えています。
ダイレクトリクルーティングは、従来の採用が「待ちの採用」「受け身の採用」と言われるのに対し「攻めの採用」とも呼ばれています。
従来の採用方法は、企業が求人を出しその求人に応募した人の中から採用するのが一般的です。求人の出し方としては、求人サイトや人材紹介会社・自社サイトと言った媒体が代表的でしょう。しかし、この採用は求職者からの応募がなければ成り立たないため、企業側は応募がくるまで「待つ」必要があるのです。
一方、ダイレクトリクルーティングでは、人材紹介会社のような第三者を挟まずに、企業自ら欲しい人材を採用するためのアプローチを考え実行していきます。直接欲しい人材に声をかけるスカウト採用・ヘッドハンティング採用も、ダイレクトリクルーティングの一種です。
近年ダイレクトリクルーティングが注目されている理由には、以下の3つが挙げられます。
日本の少子高齢化は進んでおり、労働人口減少による働き手不足に悩む企業は少なくありません。 働き手不足解消のために採用を進めようにも、母数が少ないうえに企業による人材獲得が激化するなかで欲しい人材を獲得することは容易ではありません。実際、日本の有効求人倍率は2024年2月で1.26倍であり、コロナ前の1.60倍には及ばないまでもそれでも2014年以降1.0倍を上回る水準で推移しています。
このような売り手市場で、待ちの姿勢での採用には限界があります。特に、知名度の低い・アピールできる魅力が多くないといった企業は採用に苦戦するでしょう。そのため、企業自ら積極的に動くダイレクトリクルーティングが注目を集めているのです。
企業による人材獲得が激化するなか、採用を成功させるには今就職を希望している顕在層だけでなく、将来的に就職・転職を考えている潜在層まで視野に入れた長期的な採用計画が必要です。
ダイレクトリクルーティングは顕在層だけでなく潜在層にもアプローチできるという特徴があることから、潜在層へのアプローチ手段として活用されています。
ダイレクトリクルーティングが広がっている要因に、ITツールの進歩があります。
ここ十数年でITツールは飛躍的に進化し、企業の採用手段や求職者の情報収集としても活躍しています。特に、SNSの普及は採用施策にも大きく影響しているのです。
現在、採用のメインターゲットとなる20代~30代の多くはSNSを利用しており、就職活動の情報収集の際にも、求人サイトや企業ホームページのみならず、SNS上のリアルな情報を重視します。
そのような若者世代の情報収集手段の変化に応じて、企業側もSNSでの情報発信・コミュニケーションに力を入れています。今やSNSを利用した採用方法は、新卒者向けとして主流になっているだけでなく、キャリア採用でも多くの企業に取り入れられているのです。
ダイレクトリクルーティングの手法にもさまざまあり、主な手法は以下の通りです。
代表的な方法として、ダイレクトリクルーティング事業者と契約し、人材データベースから自社にあう人材を検索・アプローチしていくやり方があります。
また、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを活用した自社の魅力の発信・求職者との直接のコンタクトを通して採用する方法も増えています。
ダイレクトリクルーティングに企業SNSを活用する場合は、SNS運用などの専門的なスキル・知識なども必要になるので専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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SNS採用について、こちらの記事で詳しく紹介しています。
SNS採用とは?メリット・デメリットと成功事例7選
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自社の従業員や取引先などに人材を紹介してもらうリファラル採用も、ダイレクトリクルーティングの一つです。
このようにダイレクトリクルーティングは、従来のように応募を待つのではなく、企業自ら人材を探しアプローチしていくため「攻めの採用」と呼ばれています。
ダイレクトリクルーティング |
求人広告 | 人材紹介 | |
採用コスト | ○ 比較的安価で利用できる |
△ サービスにより異なる |
× 成果報酬型 |
手間 |
× |
〇 入稿作業が必要 |
◎ 選考の代行が可能 |
母集団の量 |
○ |
〇 求人の種類により異なる |
× 大きい母集団形成は難しい |
母集団の質 | ◎ 自社に合う人材 |
△幅広い存在 | 〇 人材要件に合う人材 |
特徴 | 採用担当者の負担は大きいが、自社に合う母集団の形成・採用が可能 | 応募者とのミスマッチが起きやすいが、データベースなどによる幅広い母集団を形成できる | 成果報酬型で年収の30%のが発生するが、先行プロセスを代行でき手間を大幅に省ける |
ダイレクトリクルーティングは、基本的に人材を探すところからスタートします。自社で活躍する社員の分析などから自社に合う要件を選定、人材データベースやSNSなどさまざまなアプローチを通して要件に合う人材を探していくので、採用後のミスマッチが起きにくくなります。ただし、求職者へのアプローチやSNS運用など採用担当者の手間が大きい点には注意が必要です。
求人サイトや紙媒体などの求人広告は、幅広い人の目にとまるため応募者を増やすことが可能です。しかし、自社が求める人材と異なるケースも多く、選考時の手間や採用後のミスマッチも起きやすくなります。
人材紹介であれば、自社が求める人材の要件に合わせて人材紹介会社が先行してくれるため、比較的自社にあった人を集めやすくなります。また、候補者の選考まで代行してくれるので採用の手間を大きく省けるというメリットもあります。
ただし、人材紹介会社は一般的に成功報酬型で採用した人材に応じた費用がかかるため、採用コストが高くなる傾向があり、注意が必要です。
それぞれの方法でコストや手間などが異なるため、自社にあった採用方法を検討しましょう。
ここでは、ダイレクトリクルーティングのメリットとして、以下の4つを解説します。
ダイレクトリクルーティングは、比較的採用コストを抑えやすいというメリットがあります。求人広告であれば広告料、人材紹介会社であれば成果報酬などのコストが発生します。特に人材紹介会社は一般的に採用人材の年収の30%程の報酬が発生するのでコストも高額になりがちです。
一方、ダイレクトリクルーティングの場合、SNS運用であれば費用を廉価に調整することも可能です。ダイレクトリクルーティングサービスを利用する場合は、人材データベース利用料や成功報酬費がかかりますが、人材紹介会社より安価に設定されている場合がほとんどです。
コストを抑えて採用できるダイレクトリクルーティングは、採用にコストを割けない企業でも取り入れやすいでしょう。
ただし、ダイレクトリクルーティングでも利用するサービスによってコストは変わってくるため、どのようなサービスを利用するかは慎重に検討することが大切です。
企業が欲しい人材を絞って直接アプローチできるので、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。また、ピンポイントにターゲットにアプローチできるので、工数を削減できて効率的です。
さらに、企業側からアプローチすることで、自社のことを知らない人材にもコンタクトをとることができます。認知度の低い企業であっても欲しい人材にアプローチできるのは大きなメリットとなるでしょう。
人材紹介会社や求人広告は、基本的に今仕事を求めている人へのアプローチです。一方、ダイレクトリクルーティングであれば潜在層へのアプローチができます。
たとえば、ダイレクトリクルーティング事業者によっては、条件が合えばいつか転職をしたいと考えている層や、将来的に転職を考えており情報収集している層もデータベースに登録していることがあり、直接アプローチが可能です。潜在層にアプローチしておくことで将来の採用にむけた母集団の形成につながり、長期的な採用の成功に寄与します。
ダイレクトリクルーティングでは、人材へのアプローチ段階から自社で行っていくので自社でノウハウが蓄積できます。初期の段階ではアプローチ方法などで試行錯誤が必要ですが、PDCAを回しながら施策を実行することで効率的な採用ノウハウが構築できます。自社独自の採用ノウハウが蓄積できるため、長期的には採用力アップにつながるでしょう。
ダイレクトリクルーティングにはデメリットもあり、それらを理解したうえで検討することが大切です。 デメリットには以下の3つが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングですべての採用プロセスを自社で行う場合、外部に委託するよりも当然担当者の負担は増えます。アプローチする人材の選定やアプローチ方法の検討・アプローチ後の対応など、必要な工数は多岐に渡り、特に導入初期段階の負担はかなり大きくなります。
ダイレクトリクルーティングを検討する際には、採用担当者の負担を軽減できるシステムの導入なども検討するとよいでしょう。
ダイレクトリクルーティングは運用をスタートしてもすぐに採用にはつながらないケースが少なくありません。潜在層にもアプローチできる反面、長期的なアプローチが必要になることは理解しておきましょう。
また、効果的なアプローチのノウハウを蓄積するまでにもある程度時間がかかります。短期的な成果は得にくく、長期的な視点で取り組む必要があることを社内に周知する、すでに取り組んでいる別の採用方法と並行して進めるなど、取組みが途中で挫折してしまわないように注意しましょう。
効果的なSNS運用やスカウトメールの作成など、採用に至るまでには従来の採用方法とは異なるノウハウも必要となります。特に、ITツールやSNSに関する知識やスキルは初期段階から必須となってくるでしょう。
採用担当者にスキルが必要になると同時に、特定の採用担当者のスキルや経験に依存してしまう可能性もあります。マニュアルなどによる作業の明確化やテンプレート、システムの活用なども視野に入れ、社内で効率よく進められるようにしましょう。
ここでは、ダイレクトリクルーティングを実施する際の3つのポイントを紹介します。
ダイレクトリクルーティングは有効な施策ですが、必ずしも自社の採用に適しているとは限りません。まずは、現状の自社の採用課題を明確にし、ダイレクトリクルーティングが適しているかを検討することが大切です。
一般的に、ダイレクトリクルーティングが向いているのは以下のようなケースです。
自社の求める人材に直接アプローチしたい、企業としての認知度が低いといった場合は、ダイレクトリクルーティングが向いていると言えるでしょう。反対に、とりあえず今大量の応募が欲しいといったケースでは、求人広告が向いている可能性があります。採用担当者の負担を減らしたい、採用担当者の人員を増やせないといった場合も、ダイレクトリクルーティングはあまり適していません。自社の採用課題や目的を明確にして、ダイレクトリクルーティングを検討するようにしましょう。
採用担当者が既存の採用方法とダイレクトリクルーティングも兼任する場合、担当者の負担は大きくなります。特に初期段階では、ダイレクトリクルーティング導入に手間がかかり通常の採用にまで手が回らない可能性も出てくるでしょう。ダイレクトリクルーティングを成功させるには、専任の担当を設置して集中して取り組める環境を整えることも大切です。
先述したように、ダイレクトリクルーティングは短期間での効果が得にくく、そのことを経営陣が理解していなければ、採用方針の変更や採用担当者のモチベーション低下といった事態を招きます。また、ダイレクトリクルーティングで自社の魅力をアピールするには、採用担当者のみならず現場で活躍している社員や経営陣の協力が必要になってきます。ダイレクトリクルーティングに対する理解を社内で共有し、全社で協力して取り組めるようにすることが重要です。
ここでは、ダイレクトリクルーティングの成功事例をみていきましょう。
学生からの知名度の低さで母集団形成に課題を持っていた株式会社ザイマックス。合同説明会などの大型イベンドでも集客に苦戦していましたが、ダイレクトリクルーティングとしてデータベースを活用した採用を取り入れたことで、自社の求める人材とインターン期からつながることに成功しています。
ヤフー株式会社はデザイナー募集でダイレクトリクルーティングを活用し、採用を成功させています。ポートフォリオを閲覧できるデザイナーに特化したデータベースを活用することで、自社のデザインと親和性の高い求職者に直接アプローチ。エントリーシートだけでは分からない企業とのマッチ度をデータベースの活用でスクリーニングでき、質の高い母集団の形成に成功しています。また、求職者とコンタクトを取り続けることで実際に対面して話す機会を設けやすくなり、企業の理解度を深めることにもつながっています。
キリンホールディングス株式会社は、ヘルスサイエンス事業の立ち上げにともない、高い専門性を持つ人材の採用を課題としていました。ダイレクトリクルーティングを導入し、人材要件のすり合わせやカジュアル面談の導入など、アップデートを繰り返すことで中途採用における内定辞退率が改善。2021年度に入社した中途社員の約40%がダイレクトリクルーティング経由となりました。
ダイレクトリクルーティングを取り入れることで、企業が欲しい人材に直接アプローチでき、認知度が低い企業でも採用効率のアップが期待できます。また、SNS運用であれば基本的に低コストでスタートできるのもメリットです。
ただし、初期の段階では成果が表れにくいため長期的な計画で臨む必要があります。また、採用担当者にも一定のスキルやノウハウが必要となり、作業工数増による負担過多には注意が必要です。
ダイレクトリクルーティングを検討している場合は、専門家への相談も視野に入れることをおすすめします。
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