InstagramやX(旧Twitter)などのSNSは、さまざまな人や情報が集まるプラットフォームです。「いいね!」「コメント」「シェア」などにより、双方向のコミュニケーションができるという大きな特徴があります。このSNSの機能や特徴を利用して、ターゲットに効率よく宣伝をする手法がSNS広告です。今回はSNS広告について、メリットや注意点、具体的な使い道、SNS広告を成功させるポイント、事例まで解説します。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に出稿する広告をSNS広告といいます。2020年のSNS広告の総売上は全インターネット広告の3割以上を占め、前年比116%と、まだまだ成長が著しい広告ジャンルと言えます(2020年日本の広告費/電通)。SNS広告には、ユーザーのタイムラインや視聴コンテンツの途中に掲載されるインフィード広告、設定された広告枠に掲載するディスプレイ広告、タイアップ広告といった多くの種類があります。
SNS広告は主に次のような目的で行われます。
SNS広告は、特定のジャンルに関心や興味を持つ層を狙って、広告を出すことができます。自社商品に関連したジャンルに興味はあるが、自社商品のことは知らないという潜在顧客層の認知拡大に向いています。
InstagramやFacebookでは、投稿コンテンツと同様の大きなサイズの画像や動画を使った広告を掲載できます。各SNSの特徴を踏まえて質の高いクリエイティブの広告を展開すれば、強い印象を与えて効果的なブランディングを行うことができます。
SNSは特に若年層に強いと言われています。NHK放送文化研究所が2018年に行った調査によると、20代以下のSNS利用率は9割を超えています。若者にリーチしたいのであれば、SNS広告は外せない存在になっています。
SNS広告を出稿するメリットには次のようなものがあります。
SNS広告の大きなメリットのひとつは、ユーザーを選別して出稿できる点です。各SNSには、さまざまなユーザーのデータが蓄積されています。広告主は、そのデータを活用して年齢や性別、居住エリアといった属性を選んで広告を配信できます。投稿の内容や「いいね!」をした内容から、趣味や関心に基づいたターゲティングも可能です。
SNS広告では、クリック数やインプレッション数(広告が表示された回数)、エンゲージメント数(いいね!やリツイート、コメントなど)、アプリのインストール数といったユーザーのアクションの回数によって料金が決まります。費用対効果を上げやすく、効率の良い広告と言えます。アクション数が想定を超えて、広告費が予算を大きくオーバーするといったことを防ぐために、1日の出稿費用の上限を決めておくこともできます。
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SNS広告の主流は、タイムラインの投稿と投稿の間に自然な形で配置される「インフィード広告」です。本来のコンテンツになじむ体裁なので、ユーザーに違和感を持たれずに読んでもらうことができます。
ユーザーが「いいね!」や「シェア」をしてくれれば、広告をほかのユーザーにも見てもらうことができます。ユーザーの心に響き、「ほかの人と共有したい」と感じさせる広告を作ることができれば、拡散されて多くのリーチを獲得できる可能性が広がります。
SNS広告を見て評価や共感をしたユーザーが、企業のアカウントをフォローしてくれるかもしれません。そうなればユーザーと企業の間で双方向のコミュニケーションが可能になり、企業や商品のファンづくりにつながります。
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日本で特に利用者の多い6つのSNSについて、それぞれの特徴を説明します。
特徴:速報性が高い、拡散されやすい
向いている広告:ユニークで話題性のある製品・サービス
140字以内の短文のつぶやきでつながるSNSがX(旧Twitter)です。国内での月間利用者は約4500万人といわれています。速報性が高く、「いいね!」や「リツイート」によって情報が拡散されやすい特徴があります。10~20代の4割以上が毎日利用している(モバイル社会研究所調べ/2019年)ことから、若年層をターゲットにした広告に向いています。また、X(旧Twitter)でリツイートされた広告には追加費用がかかりません。そのため、見た人がシェアしたくなるようなクリエイティブができれば、費用対効果のとても高い広告となる可能性があります。したがって“バズ”を起こしやすい話題性のある製品や、ユニークなサービスの広告に適しています。
特徴:画像や動画、ビジュアル重視
向いている広告:若者や女性向けの視覚的に訴求しやすい商材
画像や動画を用いてビジュアルでつながるSNSがInstagramです。国内の月間利用者は約3300万人といわれています。「インスタ映え」という言葉もあるように見栄えがするコンテンツが集まり、若年層の女性にとりわけ好まれているSNSです。視覚的に訴求しやすい美容やファッション、旅行などの宣伝に適しています。
特徴:精度の高いターゲティング
向いている広告:BtoBや年配向け、ニッチな商材
世界で最もユーザーが多いSNSです。国内の月間利用者は約2600万人といわれています。Facebookは実名で登録している人が多いため、精度の高いターゲティングが期待できます。日本では、比較的年代が高い層やビジネス目的で使用する人も多いため、年配向けの商品告知やBtoBの商材・サービスの広告にも使われることが多いSNSです。
特徴:幅広い世代に利用されている
向いている広告:老若男女に伝えたい商品・サービス
LINEは幅広い年齢層のユーザーに活用されているSNSです。国内の月間利用者は約8800万人といわれています。タイムラインに載せるインフィード広告、LINEニュースの広告枠に載せるディスプレイ広告などの種類がありますが、近年は、顧客とのさまざまなコミュニケーションができる「LINE公式アカウント」を導入する企業が増加しています。メッセージ配信やタイムライン投稿などを通じて、クーポンの配布やキャンペーン情報の宣伝ができ、老若男女に幅広く伝えたい広告に適しています。
特徴:若年層に人気、アクティブユーザー数が非常に多い
向いている広告:若年層にフォーカスした商品
TikTokは10代から30代程度の年齢層に支持されている、ショート動画のプラットフォームです。世界での利用者は合計で10億人ともいわれており、日本でも1000万人弱のユーザーが月に1度は使用しているとされています。 対応している広告はインフィード広告と他プラットフォームにシェア可能な動画広告、そのほかに、ユーザー参加型のチャレンジ広告や、1日1社限定の起動画面広告が挙げられます。
動画タイプの広告が多く、またユーザー参加型の企画もあるため、商品の宣伝に拡散力が期待できることが特徴です。
特徴:動画広告がメイン、幅広い世代に利用されている
向いている広告:さまざまな広告に適している
YouTubeは未就学児からシルバー世代まで、非常に幅広い層に視聴されている動画プラットフォームです。出稿可能な広告の種類は、主に動画広告とディスプレイ広告の2種類です。ただし、動画広告にもスキップ可能なものとスキップ不可のものがあったり、ディスプレイ広告も表示される箇所に違いがあったりするなど、細かく区分すると、出稿方法も多様です。
出稿方法次第で費用の相場も変わるため、目的や予算にあった広告を選びましょう。
SNS広告は多くの場合、特定の操作が行われるごとに課金される仕組みです。月額の固定の費用が設定されていないので、予算の範囲内で無理なく広告の出稿~運用ができます。
この章では、SNS広告にかかる費用の仕組みと、課金形態ごとのメリット、デメリットについて記載します。
インプレッション課金は、広告が表示された回数に応じて費用がかかるという課金形態です。多くの場合、1000回表示されるたびに500円程度の費用が発生します。
SNS広告は、事前に設定したターゲット層の全員に表示されるので、ターゲットとする層をきちんと絞っておかなければ、想定外の費用が発生する場合があります。
一方で、見られなければ費用が発生しないため、ターゲットの選定が適切なら、効果も期待できます。
クリック課金は、広告がクリックされた回数に応じて費用が掛かるという課金形態です。1クリックごとに費用が発生しますが、キーワードや広告品質次第でかかる費用に差が出ることが特徴です。
クリックされる=興味を持ってもらえた場合にのみ費用が掛かるという課金形態なので、クリック後、ユーザーが遷移した先のページもきちんと作りこんでおかなければ、期待する効果が得られません。
エンゲージメント課金とは、X(旧Twitter)広告で採用されている形式です。広告に対して「いいね」や「リツイート」が行われた際に費用が発生します。費用は広告内容にもよりますが、1エンゲージメント当たり50円から100円程度です。
反響が得られた場合や、拡散された場合にのみ費用が掛かるため、効率のよい方法です。ただし、マニアックなテーマなど、狭いコミュニティー内で拡散されるような情報は、費用の割に効果が望めない場合もあります。
ある程度万人受けするテーマで扱ったほうがよいといえるでしょう。
インストール課金とは、スマートフォンやタブレットでアプリをインストールした時点で、費用が発生する課金方法です。成果に応じた運用方法になるため、メリットとしてCPA(ユーザー1人当たりの集客費用)の設計がしやすい点が挙げられます。一方でデメリットは、アプリをダウンロードするユーザーと、実際にアプリを利用するユーザーには乖離がある点です。質の低いユーザーを集めてしまい、アプリの利用率は上がらず、低評価のレビューを集めることにつながるかもしれません。そのため、DAU(1日当たりの利用ユーザー数)を考慮した施策も必要です。
では、SNS広告を成功させるためにはどんなことに気を付ければいいのでしょうか? ポイントを6点紹介します。
商品に合ったターゲット設定を的確に行うことが必要です。顧客になることが見込めるのは、どういう興味関心を持った人たちなのか、どんな属性の人にアプローチすべきなのかを明確にします。
SNSごとの特徴をつかみ、広告内容に適したSNSを選びましょう。1.で確認した、商品に合ったターゲットが集まるSNSであるかどうかも重要です。
Web広告、特にSNS広告は、「読む」のではなく「見る」感覚が強い広告です。要点を簡潔に伝えられるように、見せ方を工夫しましょう。広告の種類によっては、動画やカルーセル(画像などの複数のコンテンツをスライド表示させる)など、目に留まりやすい広告を使うのも有効です。
SNS広告の投稿内容は共感してもらえる内容にしましょう。SNSは「共感される内容は拡散されやすい」という点が特徴です。拡散されれば、SNS広告で出稿した価値以上の集客効果を生み出せます。共感されやすい内容の投稿を作る方法の一例として、自社の売り込みたい商品・サービスのターゲットを分析しましょう。
上記のように、多様な角度からターゲットを分析して作成した投稿は拡散されやすいといえます。また、トレンドワードやSNSの媒体特有の発信表現を押さえておくことで、反響率が大きく変わるでしょう。
SNS広告には、広告の効果を計測するためのアナリティクス機能が搭載されています。SNSによって多少違いますが、広告のインプレッション数や、エンゲージメント数が計測できます。これらのデータを頻繁にチェックし、広告の内容やターゲットをチューニングします。その結果をまた検証して次に生かすことで、費用対効果が最大になるように運用していきます。
SNS広告の作業フローをマニュアル化することで、効率的な運用が可能です。マニュアル化はチーム・担当者個人、どちらで運用する際にも役立ちます。
その他、マニュアル化は炎上対策にも有効です。たとえば、「炎上対策の基準になるチェックリストを作る」「翌日に再度項目をチェックする」など、作業を細分化してSNS広告を滞りなく運用しましょう。
SNSの媒体の特徴を上手く活かした広告展開が成功のポイントと言えますが、広告の目的と狙うターゲット層に基づいた出稿が成功した事例を紹介します。
日用品・化粧品メーカーの花王株式会社は、ヘアケアブランド「PYUAN(ピュアン)」の発売に当たり、メインターゲットである20代女性の認知拡大を図るため、テレビCMを使わず、SNSに絞ったプロモーションを行いました。選んだのはターゲットと親和性が高いInstagram広告とFacebook広告。若い世代は注視時間が短くなっているという調査結果を受け、短時間で印象的にブランドのメッセージを伝える動画広告を展開しました。このプロモーションの結果、ブランド認知度が10ポイントプラス、購入意向度が3ポイントプラス、店頭金額シェアが昨年対比で150%となったそうです。
SNS広告には多くのメリットがありますが、その特性から注意しておくべきこともあります。最後にどのようなことに気を配っておくべきか確認しておきます。
SNSでは受け手側からダイレクトに反応が返ってきます。「不快だ」「誰かを傷つける投稿だ」というように投稿や広告がネガティブに受け取られると、拡散されやすく、炎上してしまう可能性があります。行きすぎた表現はないか、誰かを不快にする要素はないかといった点に配慮して、広告の内容を念入りにチェックしましょう。
SNS広告の出稿は比較的簡単で、専門的な知識が少なくても運用ができます。しかし広告は出稿して終わりではありません。頻繁にユーザーの反応を確認して、広告効果がない場合にはクリエイティブの内容やターゲティング設定を変更するといった対応を継続する必要があり、時間と手間がかかります。
また、SNS広告でエンゲージメントを増やすには、ユーザーを飽きさせない魅力的な広告を作ることが重要です。例えば、ユーザーの声を集めるような参加性のある広告や、インフルエンサーを使って情報を発信する広告は拡散が期待できます。ただし、クリエイティブや取り回しには手間やスキルが必要となります。
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エンゲージメントについてはこちらのコラムでもご覧いただけます。
SNSのエンゲージメント率とは?算出方法や獲得のポイント5つ
SNS広告は、誰にでも有効というわけではありません。例えば、SNSの利用率が比較的低い高年齢層を対象とした商品には適さない場合があります。SNSの種類によっても向き不向きがあるため、ターゲットに合わせた媒体選定を行いましょう。
SNS広告は、現在最も勢いのある広告のひとつです。幅広いユーザー層にリーチできますが、とりわけ若年層へのアプローチには欠かせない手法です。さまざまな条件から詳細なターゲティングができ、クリエイティブによっては拡散も期待できるため、費用対効果が高いというメリットもあります。その特徴を理解して商品に適した出稿先を選び、ユーザーの心に響く広告を上手に運用していきましょう。
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