若者を中心に世界的な人気を誇る動画共有アプリ「TikTok」発のEC機能「TikTok Shop」が、日本でもついに提供開始されました。 若年層の利用率が高いTikTok 内で商品が販売できることから、新たなビジネスチャンスとして多くの企業や個人から注目を集めています。
この記事ではTikTok Shopの主要機能から出店の方法、TikTok Shopで売上を伸ばすポイントまで詳しく紹介します。
※本記事は海外版のサービス情報を元にしており、日本版は仕様が変更となる可能性もあります。
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TikTok Shopとは、Bytedance社が提供する動画共有SNS「TikTok」で商品を紹介・販売できるEC機能です。 TikTok Shopでは商品紹介動画の視聴だけでなく、そのままアプリ内で商品の購入を行えます。ユーザーが動画を視聴し外部サイトに移行することなく商品を購入できるので、購買プロセスの大幅な短縮ができるだけでなく、ユーザーの購買意欲が高まった瞬間に購入でき販売チャンス拡大も期待できます。
TikTokは世界中で15億人以上のユーザーを抱えており、特に若年層の利用率が高いSNSです。総務省の調査によると、日本でのTikTok利用率は2023年で32.5%、なかでも10代は70.0% 20代は52.1%と、若者層からの人気の高さが分かります。TikTokのEC市場参入は、企業にとって新たな顧客層へのリーチ、販路拡大につながる重要なチャンスといえるでしょう。
「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(総務省)
TikTok Shopは日本でも2025年6月30日に提供開始されました。すでに日清食品、Yogibo、アンカー・ジャパン、花王といった企業が参画しています。タイ、シンガポールなどの東南アジアをはじめ、アメリカ、イギリスなど、世界15国以上で提供されており、日本でもこの本格的にスタートを機に、今後のマーケティング戦略を大きく左右するとみられており、多くの企業や個人事業主から高い注目を集めているのです。
ここでは、TikTok Shopが持つ主な4つの機能について解説します。
ショッピングLIVE配信は、動画のライブ配信を通じて、商品の宣伝・販売を行える機能です。商品に関する視聴者からのコメントや質問にリアルタイムで回答できる点は、InstagramやYouTubeのライブ配信と同様ですが、従来のライブコマースでは、商品購入のために一度プラットフォームから離れなければならないのがデメリットでした。
一方、TikTok ShopのショッピングLIVE配信には、動画内に購入ページが併設されているため、動画ページはそのままにスムーズな購入手続きを行えます。これにより、従来のライブコマースにおける課題の1つであった販売機会の損失を防ぐことが可能です。
動画内に登場する商品にタグ付けし、購入ページへと誘導する機能がショッピング動画です。動画内で着用している衣服やアクセサリーなどの商品タグを登録することで、視聴者は動画内に表示されるタグをタップするだけで商品の詳細確認から決済までを完了できます。動画が拡散されればフォロワー以外にもリーチでき、販売機会の創出につながります。
プロフィール画面に商品一覧を掲載できる機能です。特定のテーマに沿って自由に商品を登録し表示できるコレクション機能が実装されており、ジャンルごとに商品カタログの作成が可能です。 さらに商品ショーケースへは、アカウントプロフィールのタブを切り替えるだけで簡単にアクセスできます。 ユーザーが企業アカウントを閲覧した際にスムーズにショップへと誘導できるため、潜在顧客層への効果的なアプローチが可能です。
ショップタブは、TikTok内のマーケットプレイスです。ユーザーはショップタブを利用した直接的な商品検索のほか、行動履歴に基づいたおすすめ機能からも商品にアクセスできるため、新規顧客へのリーチにつながります。
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TikTok Shopでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか?ここでは、TikTok Shopでできる以下の4つのことを解説します。
TikTok Shopの大きな特徴が、アプリ内で完結できる購入システムです。 従来SNSとECを連携しても、購入プロセスの中で一度SNSを離れて外部のECサイトに接続しなければならないケースがほとんどでした。 しかし、TikTok Shopでは、商品の発見から購入までをTikTokアプリ内で実行できるため、外部サイトへの移行や登録といった負担がユーザーにかからず、スムーズな販売プロセスが実現可能です。消費者の購買意欲を高める導線設計が可能となるだけでなく、外部移行時に購入をやめるといった機会損失を防ぐことにもつながります。
TikTok Shopでは、TikTokプラットフォーム全体に配信できるキャンペーンや広告メニューなど、さまざまな販促ツールを活用できます。オーガニック投稿だけでは届かない幅広いオーディエンスにリーチでき、認知拡大や売上向上につながります。
アフィリエイトとは、クリエイターなどに動画上で自社製品を紹介してもらい、その売上に応じて企業側が報酬を支払うシステムです。 TikTok Shopには、アフィリエイトプログラムも実装されており、TikTokで活動する多数のインフルエンサーやクリエイターとコラボレーションできます。特定の顧客層に向けて販促を行うターゲットマーケティングでの活用が期待できるでしょう。
TikTok Shopは外部アプリケーションやプラットフォームとの連携にも対応し、より効率的な店舗運営を可能にしています。 連携先としては、ネットショップ作成サービス「BASE」や「Shopify」などが挙げられ、他のプラットフォームに掲載している商品をTikTok Shopと統合し、一括での販売・在庫管理が可能です。 また、チャットボットやERPアプリも利用できるため、顧客対応や配送などにかかる業務負担を抑えやすい点もメリットといえます。
TikTok Shopのメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
InstagramやYouTube、X(旧Twitter)といったSNSでの商品プロモーションでは、どれほど魅力を伝えても、実際の購入には外部ECサイトへの遷移が必要でした。このステップが、販売機会損失になってしまうケースは珍しくありません。 その点、TikTok Shopであれば、動画視聴から購入までの一連のプロセスを同一アプリ内で完了できます。顧客の購買意欲が高まった瞬間にスムーズに販売につなげられるので、販売機会を逃しにくく売上アップにつながります。
TikTok Shopでは、TikTokの強い拡散力とおすすめ表示のアルゴリズムにより、フォロワー以外の、商品に興味を持つ可能性が高いユーザーにも投稿が表示されます。また、TikTok Shop広告では、ユーザーの行動履歴に基づいた最適な商品広告を表示できるため、まだ自社製品を知らない潜在顧客にも効果的にリーチできます。
前述のとおり、TikTokは10代・20代の利用率が高いSNSです。若年層からの支持が高いプラットフォームを活用することで、企業は新たな顧客層の開拓が期待できます。
また、TikTokユーザーは、同アプリで商品を発見し即座に購入する確率が、他のプラットフォームユーザーに比べて1.4倍高いとされています。高い購買意欲とアプリ内で購買プロセスを完結できるTikTok Shopの仕組みを組み合わせることで、若年層に対しても効果的なマーケティングを展開できるでしょう。
TikTok Shopでは、継続的な動画配信を通して顧客と長期的な関係を築きやすい点もメリットです。 TikTok Marketing Scienceの調査によると実際に、TikTokを利用したことがある中小企業の78%が、「TikTokのユニークなコミュニティにより顧客と本物のつながりを築くことができる」と回答しています。
さらに、TikTok Marketing Science Globalの「TikTok Shop調査(アメリカにおける結果)」によればTikTokユーザーの4人に3人はTikTok Shopで目にしたブランドから購入する確率が高いとされており、プラットフォーム内での信頼関係が購買行動に直結する可能性があります。
配信コンテンツをプロモーションの軸とすることで、一過性の販売に終わらず、顧客との継続的な関係構築が可能となるでしょう。
TikTok Shopは、大企業から中小企業、個人事業主まで幅広く利用できるため、あらゆるビジネスで販売拡大のチャンスが期待できます。
たとえば、2021年に夫婦二人で設立されたスキンケアブランド「Love&Pebble」は、TikTok Shopのアフィリエイトプログラムを活用することで、ブランド全体の売上を1,194%増加させたほか、3,000人以上の新規フォロワー獲得も達成しました。
ビジネスの規模問わず利用でき、収益拡大だけでなく企業やブランドの長期的な認知度向上も期待できるため、知名度の低い企業や小規模なビジネスでも成長につながります。
TikTok Shop出店の大まかな手順は以下のとおりです。
まずは、TikTok Shopのアカウントを開設します。 登録作業はPCとモバイルのどちらからでも可能です。 TikTok Shopは国ごとにセラーセンター(販売者用のページ)が異なるため、必ずページ内に「日本のセラー」という表示が出ているか確認しましょう。 すでにTikTokのアカウントを所有している場合、TikTokアカウントを利用しての登録も可能です。
アカウント登録が完了したら、次にビジネス情報を提出します。 提出する企業情報は事業形態に応じて以下のように異なります。
なお、個人事業主の場合は1人につき1ショップ、検証済み企業の場合は最大5ショップまで登録できます。
出店するショップ情報として以下の設定を行います。
ただし、他の販売者が商標またはブランド認定証明書を保有している場合、ショップ名が却下されるケースがあるので注意しましょう。
ショップ情報まで設定できたらTikTok Shopに申請し、審査を待ちます。 審査結果は1~5日で送信されるため、セラーセンターもしくは通知メールから確認しましょう。
TikTok Shopの審査に通過したら、ショップ開店の準備です。 セラーセンター内の項目「ホームページ」から、以下の内容を設定します。
後ほど解説しますが、ユーザーの目に留まるにはできるだけ多く商品を登録することが大切です。
ショップの基本設定が完了したら、TikTokアカウントと連携します。 TikTokアカウントと連携することで、TikTokアカウントのプロフィールページにストアページを表示できるようになり、TikTok Shop内の商品を自動的に同期できるようになります。
TikTok Shopで売上を伸ばすポイントには、以下の4つが挙げられます。
売れそうな商品に限らず、できる限り多くの商品を登録することが売上を伸ばすポイントの1つです。 セラーセンターでも、初めに少なくとも10点の商品を追加することを推奨しています。登録商品が多いほどより多くの顧客に届きやすくなるため、主力に限らず商品を登録するようにしましょう。
クリエイターとのコラボレーション=アフィリエイトプログラムの活用も売上増加に貢献する要素の1つです。 TikTokユーザーの3人に1人は、TikTokクリエイターから新商品やブランドを知ることがあると回答しており、クリエイターとコラボすることで「広告感」のない自然な形でユーザーにリーチできます。特に、ターゲット層からの人気が高いクリエイターとコラボすることで、直接的な購買促進に加え、企業・ブランド全体の認知度向上も期待できます。
SNSの普及により誰もが情報を発信できるようになった現代では、「共感マーケティング」への注目度が高まっています。「何を」買うかよりも「誰から」買うかが重要視される傾向にあり、消費者の気持ちに寄り添ったうえで購買意欲を刺激する仕組み作りが重要です。 たとえば、スキンケア用品のプロモーションであれば、肌トラブルに悩む若い女性が、自社製品の使用によって改善に向かう過程を動画として投稿する方法がユーザーの関心を引きやすくなります。同じ悩みを持つ潜在顧客の共感を得ることで、購入へのスムーズな誘導も可能となるでしょう。
TikTok Shopでの売上を伸ばすには、ライブコマースや動画内のコメント機能を活用し、ユーザーと積極的にコミュニケーションをとることが不可欠です。 TikTok Shopのアルゴリズムは、ユーザー情報やコンテンツ情報に加え、「いいね」やフォロー、シェアといったユーザーからのリアクションをショップや商品の認知度向上に大きく影響させます。そのため、多くのユーザーと密に交流し、ポジティブなリアクションを得られるほど、そのユーザーのフォロワーや関連アカウントの「おすすめ」フィードに自社製品やアカウントが表示されやすくなるのです。ユーザーと積極的にコミュニケーションを取ることが、新規顧客の開拓につながりビジネスの拡大も期待できます。
「SNSでユーザーとどう交流すればよいか分からない」など、SNSマーケティングにお悩みの方はこちらのページをご覧ください。
TikTok Shopは、従来のSNSマーケティングの課題点を解決した画期的なECサービスです。 商品を知るだけでなく購入までのプロセスを同一アプリ内で完結できることから、ユーザーはスムーズな購入が可能となります。 企業にとっても、インフルエンサーやクリエイターとのコラボレーションにより自社ブランドや製品の認知度を高め、これまでリーチできなかった新たな顧客層の開拓が期待できます。
TikTok Shopは今後のマーケティング戦略の重要なポイントになってくるため、日本での今後の展開に注目し、積極的に活用していくとよいでしょう。
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