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施策4年で契約数が3.8倍に!飛躍を続けるリクルートキャリアのメールマーケティング戦略
マーケティング・販促
2021.01.27
デジタルマーケ先進事例ラボ(2)リクルートキャリア
人材大手のリクルートキャリアの提供するリクルートエージェントでは、顧客企業向けのメールマーケティングを実施し、4年間で契約数3.8倍を達成するなど、目覚ましい成果を挙げています。
今では、欠かせないデジタルマーケティングへの取り組みですが、プロジェクトを推進するにあたり、どのような課題や工夫が存在していたのでしょうか。同社でMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用したBtoBマーケティングプロジェクトをゼロから立ち上げ、顧客起点のマーケティングを実践するクライアントマーケティンググループの村上良郁(むらかみみか)氏に、TOPPANクロレソリューション開発推進部の湯川千尋が話を伺いました。
担当社数4割増で、きめ細かな営業に黄信号
村上良郁氏
リクルートの人材採用系事業であるHRカンパニーと日本最大級の就職エージェントであるリクルートエージェントが2012年に統合して誕生したのが、リクルートキャリアだ。「個人のキャリア」と「企業の人材戦略」を支援するのが事業の柱であり、新卒採用向けの『リクナビ』や中途採用向けの『リクナビNEXT』、さらに求職者と企業のマッチングを行う転職エージェントの『リクルートエージェント』などを展開する。
その中でもリクルートエージェントでは、デジタルマーケティングが必要とされていた。リクルートエージェントは、一般の求人サイトには載らない非公開求人を集め、各業界に精通したキャリアアドバイザーが、求職者のスキルや希望に合わせて求人を厳選して紹介するサービス。その求人数は業界最大級を誇る。
市場としては、リーマンショックからの回復を見せた2014年から、右肩上がりで求人が増加し、2016年に入るとより効率的なマーケティング活動が求められていた。ちょうど村上氏が、前職の大手人材系企業から転職をしてきたタイミングでもあった。
「リクルートエージェントのお客様は中小企業がほとんどです。1年ごとに採用戦略を立てて予定を組まれる大手企業と異なり、欠員募集を急遽必要とするなど突発的な採用ニーズが大半です。そのため、いわゆる休眠顧客を含めて、お客様と継続して接点を持つことが求められています。にもかかわらず、景気回復とともに求人数は増え続け、営業1人あたりが担当する企業数は、それまでの4割増にも上り、きめ細かな対応がしづらい状況でした」と村上氏は当時の実態を明かす。
営業担当者の負担を軽減しつつも、顧客ときちんとつながり続けるための施策はないだろうか。こうした危機感から進められたのが、同社では初の試みとなるMA(マーケティングオートメーション)ツールの導入とそれによるメールマーケティングの実施である。
メールでは “顧客価値創出”を念頭に
同社ではMAツールを活用してメールマーケティングで顧客との密なコミュニケーションを行うにあたり、インサイドセールスや営業部門と連携しながら、目標やKPI(重要目標達成指標)を細かく定めておく必要があったという。
「リクルートエージェントは完全報酬型のビジネスのため、同じ部門でもチームに分かれて細分化された目標やKPIを持ちます。例えば、契約までを目標にするチーム、求人やその際の定着化をサポートするチームなどさまざまです。MAを導入するマーケティング部門としても、そうしたチームと連携する形で目標やKPIを設定し、メールマーケティングの設計に反映することが必要でした」(村上氏)。
結果、同社では、現在大きく分けて2つのメールプログラムを遂行している。1つは、新規顧客のためのメールコミュニケーション。これは、見込み顧客化したユーザーに配信するメールで、サービスの活用メリットを紹介し、反応があった際はインサイドセールス部門や営業部門につなぐという流れだ。インサイドセールス部門で実際に架電し、ヒアリングをした内容によって、次のメールのコンテンツを出し分けるといったメールナーチャリングも実践する。
「さらにもう1つ、我々が注力しているのは、お客様と定期的な接点を設けるためのメールです。当社のサービス内容とは別に、市場動向や採用のトレンドなど担当者に価値ある情報を載せています。確かに、サービスをご案内したメールというのは、問い合わせ率は高いのですが、一方で離脱も増えてしまいます。我々はお客様の突発的な採用ニーズにお役に立てるよう、つながり続けることが目標でもあります。例えば最近では、コロナ禍での面接の仕方といったコンテンツを掲載したところ、もっと詳細が知りたいなど多くの反響をいただきました」と村上氏は説明する。
小さな実績の積み重ねで営業の信頼を獲得
もちろん、こうしたプログラムの設計は1回つくって終わりではない。メールを基点にインサイドセールスや営業担当者の感触も確認しながら、全体の設計やときにはKPIなどもチューニングを重ねていったという。
「例えば、メールに反応してくださったお客様に電話するよう、インサイドセールス部隊にパスを出すのですが、すぐに架電した方が契約獲得率が高いことが分かりました。そのため、マーケティング部門からインサイドセールス部門にパスを出したら2時間以内に架電するといったことも、目標として設定し直したりしています」(村上氏)。
こうした小さな見直しを重ねた努力が実り、メールマーケティングを始めてから4年間で、メール配信数は数十倍にも跳ね上がり、契約率も約3.8倍にまで引き上げることに成功したという。
実はMA導入当時、「営業力」を誇る同社では、「営業が担当するお客様に勝手にメールを送らないで欲しい」といった声も少なからず挙がったという。そのたびに村上氏は「それはリクルートの当たり前であって、世間の当たり前ではない」と主張し続けた。そして、地道に実績を積み重ねた結果、今では営業サイドからも自身の営業活動をサポートしてくれる味方として、メールマーケティングが捉えられているようだ。
「法改正のご案内のように、お客様に必ずお伝えしなければならない情報もあります。こうした内容をメールでご連絡しておくと、いきなり電話をかけるよりもお客様に説明がしやすかったり、コミュニケーションしやすかったりします。そうした営業サイドにも利点を感じてもらえる小さな実績を積み上げることで、少しずつ社内の雰囲気は変わっていきました。営業担当者から、『これ使えるね』と言ってもらえることが増えていったのです」と村上氏は微笑む。
デジタル一辺倒ではなく、最適なバランスを探る
こうしてMAツール運用を見事に定着化させ、メールマーケティングで成果を出す村上氏に、デジタルマーケティングを実践する上で普段気にかけていることを尋ねた。すると、「デジタルマーケティングは、自分たちだけでは完結しない」という答えが返ってきた。
「メールマーケティングではインサイドセールスや営業部門と連携しますし、WEBサイトを改善しようと思えば、広報や協力会社とも連携しなければなりません。円滑に取り組みを進めるには、周囲にいる人たちの目的をよく理解し、お互いがWin-Winであることを意識しなければなりません。それは、絶対に見失ってはいけない視点ではないでしょうか」(村上氏)。
そんな村上氏は、今後より一層、デジタルマーケティングは「デジタルと人の組み合わせで推進すべき」と感じているという。顧客企業の求人に関する課題は一定ではなく、多様な解決策を提供していく必要がある。そのため、デジタルマーケティングの推進だけでなく、関連部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)とともに歩みを進めたいと考えているのだ。
「マーケティングの入り口はデジタルでもよいですが、その先はデジタルだけでなく、人が深度を持ってサポートする部分も磨いていくイメージです。デジタルマーケティングと人が介在する部分の最適なバランスを常に探り、見直していきたいと思っています」と村上氏は話す。
TOPPANクロレ株式会社
ソリューション開発推進部
さらに、「今は、デジタルマーケティングの推進者にとっては追い風が吹いている」とも語る。コロナ禍で進むニューノーマルな生活様式は、あらゆる場面でオンライン化が求められているからだ。
「デジタルマーケティングには一律の正解があるわけでも、1回つくって終わりでもありません。まずは走り始めることが重要で、その後着実にPDCAを回していけば良いのではないでしょうか」と、自身と同様にデジタルマーケティングを推進する担当者へメッセージを送った。
株式会社リクルートキャリア
クライアントマーケティンググループ 兼 営業支援グループ
大手システム開発会社/組織人事コンサルティング会社にて新規営業から既存顧客の深耕、コンサルティングを経験。その後、大手人材系企業において法人向けのマーケティングに従事。2016年8月にリクルートキャリアに入社し、MAを駆使したマーケティングプロジェクトをゼロから立ち上げ。現在も同プロジェクトにリーダーとして参画しており、戦略立案、MA設計、チームマネジメントを行っている。
TOPPANクロレ株式会社 ソリューション開発推進部
1988年TOPPANクロレ入社。企画制作部門でプロモーション企画、商品企画、イベント企画などを多数手掛ける。2017年よりマーケティング部門に異動、自社サイトのコンテンツ制作、ウェビナーの企画運営などの業務に注力、デジタルマーケティング領域の活性化が職務。
TOPPANクロレのデジタルマーケティング支援サービス
TOPPANクロレでは、WEBサイトやEC事業の構築・リニューアルも含めた幅広いデジタルマーケティング支援サービスを提供しています。お客様の課題や外部環境を踏まえた上で、企業(またはブランド)の強み・特長を、データに基づいて洞察、咀嚼/翻訳し、課題解決へ向けた戦略プランの設計から運用までをお手伝いしております。
「TOPPANクロレが描くDX時代のマーケティング透視図」のページでは、当社の「デジタルマーケティング支援サービス」の導入企業のご担当者様や、デジタルマーケティング界の識者の方々へのインタビューを通じて得られた「生の声」を掲載。ぜひお客様のマーケティング活動にお役立てください。