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BtoB企業のマーケティングにひな形はない。自分たちらしく小さく始める~上島千鶴氏【後編】 | TOPPANクロレ

作成者: TOPPANクロレ株式会社|2020/06/11 0:00:00

「自社をよく知り着実な歩みを」BtoBマーケターに送る“3つのアドバイス”

 

先田:BtoB企業でデジタルマーケティングへの取り組んでいる担当者や、今後取り組もうとしているマーケターに向けて、アドバイスをいただけないでしょうか。

最後の3つ目が、「大きく考えて小さく始める」ことです。DXによって事業を最適化しようと理想像やビジョンを掲げることは重要ですが、いきなり遠いゴールに向けて一足飛びで動き出すのではなく、まずは小さな成功体験を作ることをおすすめしています。具体的には、商流やターゲットの定まっていない新規商材のみに集中したり、売上が伸び悩んでいる事業・営業部門との連携に限定します。そこで小さくPDCAを回して成功体験を積み重ねてから、社内で横展開していくと良いでしょう。

 

 

デジタル化で変わる顧客との関係。売上アップと効率化の事例

この事例に限りませんが、データ分析チームを持つことは成功には欠かせません。特に、営業部門出身のメンバーをチームに入れることで、データの裏に隠れている顧客の実態が見えてくるでしょう。

先田:その他にも、デジタル化やデータ分析により効果が上がった事例はありますか。

上島氏:事務機器メーカーや大手通信会社は、多くの中小企業を顧客として抱えています。かつては営業担当者が1社ずつ訪問して対応していたのですが、1営業あたりの担当顧客数が増え、全て対面で行うには対応が難しくなっていました。

そこで営業を「対面フィールド型」と「非対面インサイド型」に分け、単品販売の場合は提案からクロージングまでをWEBやリモート会議システムなどを使って「非対面」で対応し、複数の製品を組み合わせるソリューション提案の場合は「対面」の営業が行うようにしました。このように旧来一辺倒の営業スタイルから転換することで、営業生産性を高めつつ成果を上げた例もあります。

こうしたマーケティングや営業の手法を大きく変更した際に注意すべきなのは、短期的な成果を求めすぎないことです。単年で結果を出すのはかなり難易度が高く、3年先ぐらいを見ておくのがよいでしょう。既存商材で既存商流が確立されている事業を例にすると、3年後に事業貢献率が10%程度まで成果がでない場合は、何かしらの問題があるといえます。その原因は過剰なジョブローテーションや方針転換かもしれませんし、データ分析と仮説づくりの不足、営業部門との連携の問題かもしれません。要因を明らかにして、改善していく必要があります。

 

 

 

DXの進展とともに求められる「営業」機能の再定義

 

先田:今後、BtoBマーケティングにおいて、デジタル化はどのように進展していくとお考えですか。

 

上島氏:IoTデータの活用やオフライン接点のデジタル化が進み、アカウントによる対面営業や、保守などのカスタマーサポートといった既存顧客との接点の見直しが、デジタルマーケティングの組織を中心に広がっていくのではないでしょうか。例えば、「消耗品の追加注文などの小口取引には、人が介在しない販売手段を拡充する」「非対面型であるインサイドセールス機能が高度化する」といったことが進行すると思います。「顧客の成果にコミットするカスタマーサクセスへの深化」も求められるようになります。

 

さらに、オンライン、オフラインを問わず、顧客のデータ分析や機械学習ができるようになるでしょう。マーケティング分野でもデータ活用による予測・予兆モデルが加速すると見ています。

今後もデジタル化の進展に伴い、広い範囲で新しい機能やチャネルがデジタル上に増えていきます。BtoBビジネスにおいても、企業における「営業」とはどのような役割を担うのか、再定義が必要となるでしょう。

先田:上島様、BtoBマーケティング担当者へのさまざまなアドバイスをありがとうございました。

 

<<デジタルマーケティングの賢者たち(3)上島千鶴氏【前編】
「BtoBマーケティングの実態とは。組織の「5世代モデル」を通して解説」はコチラ

 

プロフィール
上島千鶴氏
株式会社Nexal 代表取締役

行動解析・データ駆動型のマーケティング歴20年。国内で初めてナーチャリング概念を啓蒙し、MAやCXMの市場創造に大きく貢献した。オンラインとオフラインのデータを繋ぎ、CXを実現するための戦略策定から実行計画、DMP/CDP/CRM再構築などのDX推進プロジェクトにも参画。全てのタッチポイントを顧客基点に再設計するBtoCビジネスや、事業戦略からマーケティングを定義し組織成長を後押しするBtoBビジネス向けコンサルティングに従事。著書に『マーケティングKPI「売れる仕組み」の新評価軸』(日経BP社)、『Web来訪者を顧客に育てるリードナーチャリング』(日経BPコンサルティング)、『リードビジネス「打ち手」大全』(インプレス)などがある。

先田早織
TOPPANクロレ株式会社 ソリューション開発推進部

自社のマーケティングを担当。2017年にデジタルマーケティングの考え方を自社に取り入れ、WEBサイトリニューアルのプロジェクトリーダーを務める。インサイドセールス機能の立ち上げにも従事。お客様に向けて有益な情報発信を行うべく日々奮闘中。

 

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