Webマーケティングに携わる人であれば、昨今のCookie規制の動きが気になっているでしょう。しかし、規制の細かな内容やビジネスへの影響、そして取るべき対策をあらためて問われると、端的に回答するのはなかなか難しいようです。そこで、この記事ではCookieとは何かという“基本のキ”から、Cookie規制の背景や内容、そしてマーケティングへの影響と対策までを、整理して分かりやすく解説します。
Cookieとは、ユーザーがインターネットブラウザにログインした情報や、Webサイトにアクセスした情報、どのようなページを閲覧したかといった情報などを、ブラウザに一時的に保存しておく仕組みです。Cookieは発行元によって分けられますが、ここでは、ファーストパーティーCookieと、サードパーティーCookieの2種類について説明します。
ファーストパーティーとは「当事者」を意味する英語です。ファーストパーティーCookieは、ユーザーが閲覧した当のWebサイトのサーバーが発行するCookieです。
ユーザーがWebサイトを訪問し、どのページを閲覧したかという情報は、そのWebサイトからCookieとしてアクセスに利用したインターネットブラウザに送られ、一時的に保存されます。そして、次に同じWebサイトを訪問した際に、そのWebサイトに呼び出され、読み取られます。
例えば、ECサイトで以前に閲覧した商品が、そのサイトを再訪したときに画面に表示されたり、入力フォームに記入するときに以前入力した内容が候補として表示されたりするのは、Cookieの情報をECサイトが読み取っているためです。
ファーストパーティーCookieは、主にユーザーの利便性を高める目的で、発行元のWebサイト内で利用されます。
一方、閲覧したWebサイトとは異なる第三者が、Webページ上の広告枠や計測タグなどを通じて発行するCookieが、サードパーティーCookieです。
サードパーティーCookieの特徴は、複数のサイトをまたいで利用できる点です。ユーザーが当該Webサイトを離れたあともインターネット上の行動を追跡し、ほかのWebサイトを訪れると、そこでの閲覧行動をトラッキングファイルとして発行元に送信します。
このサードパーティーCookieについて、ここ数年、規制の動きが強まっています。
サードパーティーCookieは、前述のようにWebサイトを離れたあともユーザーの行動を追跡することから、プライバシーの侵害につながるという見方が広がっているのです。すでに、EUや米国カリフォルニア州では、サードパーティーCookieの利用が法律で規制されています。
日本においても、Cookie規制が進んでいます。2022年4月に施行される改正個人情報保護法では、新たに「個人関連情報」のカテゴリーが作られました。
Cookie情報は、その一つひとつには個人を特定する内容を含まないため、これまでは個人情報ではないとされてきましたが、これを取得し利用する企業がCookie情報と自社の持つ情報とをひもづけることによって、個人に対して広告を狙い撃ちすることが可能でした。
しかし今後、Cookie情報が「個人関連情報」になると、これを取得した第三者が個人を特定して利用することが想定される場合、あらかじめ本人の同意が得られているかどうかの確認が必要になります。つまり、ユーザーの同意を得られていないCookie情報は利用できなくなるのです。
参考:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/201120_kozinkanren.pdf
Webブラウザを提供する企業でも、Cookieを利用した行動データ収集を自主規制する機能を導入する動きが進んでいます。
Appleでは、2017年からサードパーティーCookieによるユーザーの追跡を防止するITP(Intelligent Tracking Prevention=インテリジェント・トラッキング・プリベンション)という機能を導入しました。
さらに、2020年3月からはSafariでのサードパーティーCookieの受け入れをシャットアウトしています。
Googleでは、2019年にPrivacy Sandbox(プライバシー・サンドボックス)の開発を発表。これは、ブラウザが個人を特定できない仕組みでユーザー情報を管理し、必要に応じてサードパーティーに情報を提供する機能です。
また、ChromeブラウザでのサードパーティーCookieサポートの終了も発表しています。終了時期は何度か延期を繰り返していますが、2022年7月28日の発表では2024年後半からの段階的な廃止を計画しているとのことです。
Firefoxを提供しているMozillaでは、2021年からTotal Cookie Protection(トータル・クッキー・プロテクション)を実装。これは、ドメインごとにCookieを分離し、Cookieを付与したドメイン、つまり発行元のWebサイトのみにアクセスを許可するものです。
Cookie規制によって特に影響を受けると考えられるのが、次のようなマーケティング施策です。
サードパーティーCookieは、リターゲティング広告を運用する際の基礎となる技術です。今までのリターゲティング広告は、サードパーティーCookieから得られる追跡情報を利用して広告を最適化していましたが、規制されるとそれができなくなります。
また、ユーザーがどのようなルートで自社サイトを訪問したかが分からなくなるため、Cookieを利用したアフィリエイトの効果計測も難しくなります。
Check
リターゲティング広告については、以下のコラムで詳しく解説しています。
リターゲティング広告とは?仕組みやメリット・デメリット、活用法を解説
ビュースルーコンバージョンとは、広告は見たけれどその場ではアクションしなかったユーザーが、その後に別のルートでサイトを訪れて達成したコンバージョンを指します。この計測にもサードパーティーCookieが使われてきました。
今回の規制によってビュースルーコンバージョン計測は不可能となり、間接的な広告効果を把握することができなくなります。その結果、広告のROI(投資収益率)やROAS(投資した広告コストの回収率)の精度が下がる恐れがあります。
サードパーティーCookieの規制により、盛んに行われてきた個人に焦点を当てた広告は配信が難しくなります。その穴を埋めるためには、次のような施策の強化が必要です。
SEO対策を強化するほか、SNSやブログといったほかのチャネルの集客に注力をする必要があるでしょう。
また、ファーストパーティーCookieは規制されないため、自社のCookie情報のさらなる活用も重要です。ユーザーの行動を分析し、購買行動を促進するマーケティング施策を実施しましょう。
広告やSEOを経由してLP(ランディングページ)を訪れたユーザーをできる限り逃さない、LPO(ランディングページ最適化)も有効な対策です。
LPを訪れたユーザーはわずかな時間でそのページを閲覧するか、ほかのサイトに移動するかを判断します。そのため、「ユーザーが求める情報がここにある」ということが瞬時に伝わるように、LPのレイアウトやビジュアル、コピーなどを工夫します。
Check
LPOにについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
LPOとは?施策の基本とチェックすべき3つのポイント
新規顧客の獲得が難しくなる分、自社商品やサービスを繰り返し利用するリピーターを増やすという発想の転換も必要です。
継続的に商品を購入する顧客が増えれば、将来にわたる売上の見込みが立ちやすくなります。またECサイトや商品に愛着を感じ、競合よりも自社を選んでくれるファン層が育てば、厳しい価格競争に巻き込まれることがなくなり、購入単価や利益率が上昇します。
リピーターを獲得するには、自社の商品やサービスをあらためて見直し、顧客に何度でも利用したいと思ってもらえるような、顧客満足度を高める施策が必要となります。
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リピーターについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
リピーター獲得の重要性とは?ECサイトにリピーターを増やすメリットと5つの施策
2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、日本においてもサードパーティーCookieの利用が大きく制限されます。これによってリターゲティング広告を中心に集客を行ってきた企業は、方向の転換を迫られています。こうした広告の穴埋めとしては、広告以外の集客方法の強化や、LPでの離脱を防ぐLPOといった施策が考えられます。加えて、商品やサービスの質を高めて顧客の満足度を上げ、リピーターを増やすといった、より本質的な対策も重要です。Cookie規制を、現状を見直すチャンスととらえて、時代の要請に応えるビジネスに切り替えていきましょう。
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