EC事業とはどのような事業を指すのでしょうか?市場規模や参入のメリットをご存じですか?EC事業への参入を迷っている人や、EC事業を始めるために何から手を付けていいか分からない人に向けて、EC事業の概要や市場規模、そしてEC事業を始めるメリットや立ち上げ時に考えるべきポイントをご紹介します。(2023年12月4日更新)
ECとは「Electronic Commerce」の略で、Eコマースとも呼ばれます。日本語で言えば「電子商取引」です。インターネット経由で契約や決済をし、物やサービスを提供する事業をEC事業と呼びます。一番身近なのは、Amazonや楽天などのオンラインショッピングサイトでしょう。物品を販売する以外にも、コンサートや演劇のチケット販売、旅行や飲食店の予約、保険の契約など、さまざまな形態のEC事業があります。また、消費者向けではなく企業同士の取引(BtoB)専門のEC事業もあります。
Check
ECサイトに関する基本的な解説は下記でご覧いただけます。
【初心者向け】ECサイトとは?種類や機能、運営業務内容を解説
物販系、サービス系、デジタル系の分野別BtoC-EC市場の動向は以下のとおりです。
2021年 | 2022年 | 増減率 | |
---|---|---|---|
A. 物販系分野 | 13兆2,865億円(EC化率 8.78%) | 13兆9,997億円(EC化率 9.13%) | 5.37% |
B. サービス系分野 | 4兆6,424億円 | 6兆1,477億円 | 32.43% |
C. デジタル系分野 | 2兆7,661億円 | 2兆5,974億円 | ▲6.10% |
経済産業省の調査結果を見ると、2022年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は22兆7,449円、前年比9.91%増となりました。このうち、物販系分野の市場規模は13兆9,997億円で伸び率が5.37%でした。物販系分野は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費の影響で2020年に大幅な拡大が見られ、2021年に消費者の間で徐々に外出機会が回復しても引き続き増加しています。「ECの利用が消費者の間で徐々に定着しつつあることの証左」という見解が調査レポートの中に記されています。
物販系分野の内訳を、市場規模の大きい順に並べると「食品、飲料、酒類」、「生活家電、AV機器、PC、周辺機器等」、「衣類・服装雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」となります。このうち上位4カテゴリーが2兆円を突破し、これらの4カテゴリー合計で物販系分野の73%を占めています。
EC事業を始めるメリットは、何といってもビジネスが時間や場所の制約を受けないことです。具体的に例を挙げてみましょう。
実店舗がなかったり、実店舗が小さかったりしてもEC事業はできます。
国内はもちろん海外にも販売エリアを広げることができます。
24時間注文を受けることができます。
顧客が店舗まで足を運ばなくても購入できる手軽さが、リピート購入や定期購入のきっかけとなります。
規模や場所にかかわらずセンスが生かせます。地方の小さなブランドや製品がECサイトを通じて有名になることも。SNSやブログと連携してブランディングに役立てるケースが増えています。
Check
ブランド戦略に関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
ブランド戦略とは?具体的な戦略の立て方と成功事例
一方で、EC事業には対面販売ができる店舗事業よりも難しい部分があります。例えば次のような問題点があります。
対面で接客する実店舗と比べて、ECサイトでは直接お客様に商品の説明をしたり、要望を聞いたりすることができません。そこで、写真を使った簡潔で正確な商品説明を用意することや、問い合わせフォームやチャット機能を設置するなど、コミュニケーションを補完する仕組みが必要となります。また、ECサイトを立ち上げることで販売エリアは広がりますが、その分競合が増え、他社との価格競争も激しくなります。多くのECサイトのなかから顧客に選ばれるような集客方法も考えなければなりません。
このようなデメリットを解消するためのECならではの代表的な手法には、下記のようなものがあります。
実店舗に比べて不足しがちなコミュニケーションをサポートするツールとして、メールマガジンやメールがよく使われます。例えば、アクセスや購買の履歴をもとに内容を切り替えて配信するメールマガジンや、会員限定や頻繁にサイトを利用する顧客限定の案内メール、購入後の時間経過に合わせて顧客の行動を段階的にフォローするステップメールなど、きめの細かいコミュニケーションが可能です。
閲覧している商品の関連商品が同じ画面に表示されるレコメンド機能も、直接接客して商品を勧めることができないECサイトには大切な機能です。
また、ECサイトに投稿される購入者の感想や口コミは、ショップと顧客のコミュニケーションの場になります。対面では自然に得られるユーザーの反応を、インターネット経由で確認できる貴重な場です。その内容ややりとりは将来の顧客の購買意欲にも大きな影響を与えるため、丁寧な応対が必要です。
大多数のユーザーは情報を求めて検索エンジンを訪れ、検索結果に表示されたサイトを訪れます。競合サイトよりも有利に自社のサイトに集客するためには、検索エンジンでより上位に表示されることを目指します。
ユーザーが検索エンジンでキーワード検索をしたときに、自社のサイトが上位に表示されるように対策することをSEO(Search Engine Optimization)、日本語では検索エンジン最適化といいます。販売したい商品や商品ジャンルがどういうキーワードで検索されているかを調べ、そのキーワードを的確に紹介ページに織り込む手法です。
検索エンジンで、ユーザーが検索したキーワードに連動して掲載される「リスティング広告」ならばより確実です。リスティング広告を使えば、指定したキーワードの検索結果ページの上位に、自社の商品を表示させることができ、探している人の目につきやすくなります。
Check
リスティング広告に関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
【初心者向け】リスティング広告とは?特徴や費用、運用のコツを解説
検索エンジン対策はSEO対策と、リスティングを含めた検索広告をあわせてSEM対策と呼ばれます。
Check
検索エンジン対策に関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
SEMとは?SEOやリスティング広告との違い
ECの利点のひとつは、さまざまなデータとが収集できるところです。販売データはもちろん、ECサイトのアクセス解析や顧客データは、より顧客のニーズに合った仕入れや、使いやすく購入しやすいサイトづくりに生かすことができます。顧客データをもとに、商品やブランドに合ったターゲットをセグメントして的確な情報を提供することで、効率のよい集客も可能です。
Check
自社のWebサイトに集客する方法について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。
Webの集客とは?代表的な7つの方法と、業種別の重要な集客ポイントを解説
では、実際にEC事業を立ち上げるときには、どんなことを考えなければならないのでしょうか。以下に、EC事業を始めるときに考えるべきことを5つのポイントに絞って説明します。
どの商品を、誰に、どうやって販売するかというコンセプトを固めます。そして5年先を見た事業計画を立てます。ECシステムの減価償却は会計上5年なので、EC構築の計画も5年単位で考えるといいでしょう。ECサイトの構築は中・長期的な運用を視野に入れて行うべきものです。例えば、売上やユーザー数の増加に合わせてECサイトの規模を大きくする展望がある場合には、将来必要となるシステム連携やサーバーの増強も考慮する必要があります。
同業者がEC市場でどのようにビジネスをしているかを調査します。すでに同業者がEC事業を始めている場合には、価格競争や商品の独自性で相手に勝てるでしょうか。もし競合がいない場合には、他社が新規参入してきたときに、どうすれば優位に立てるでしょうか。調査データの分析をもとに戦略を立案します。
EC事業で何を扱うか決め、仕入れ先を検討します。
EC事業を始めるには次のような役割を担う人が必要です。これらの担当者を新たに雇うか、または外部の企業に依頼するかなどを決めます。また梱包(こんぽう)資材や、PC、デジタルカメラなどの機材、ECサイトのタイプによってはレンタルサーバーなど、事業運営に必要な備品を検討します。
マーチャンダイジング業務:商品企画、仕入れなど マーケティング業務:ECサイト制作、集客・販促など
受注、在庫管理、出荷梱包、配送、カスタマーサービスなど
Check
ECサイトの業務内容について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。
ECサイト運営とは?担当者が知るべき8つの業務内容を詳しく解説
ECサイトの立ち上げ費用は、構築方法の違いや誰が担当するかによって数万円から数千万円まで大幅に変わります。実現したいことに優先順位をつけ、予算内で実現できる方法を考えましょう。
場所や時間にとらわれないEC事業がうまく軌道に乗れば、販売の機会が大きく広がるでしょう。実店舗と連動させた運営をすることはもちろん、実店舗を持たずにECサイトだけを展開することもできます。
メリットが多く比較的リスクが少ないため参入しやすいEC事業ですが、市場の拡大とともに競争も激しくなっています。そこで事業を始める前には、入念な事業計画やマーケティングリサーチが必要になってきます。自社ECの場合担当者のスキルによっては、結果が出るまでにはある程度時間がかかることもあるので、即効性を求める場合は、ECの知識や経験の豊富なコンサルタントの助言を受けることも検討するとよいでしょう。
TOPPANクロレでは、ECサイトのプランニングから構築、開発、運用まで、さまざまなデジタルマーケティング施策をお手伝いします。どのようなお悩みでもまずはご相談ください。