ペルソナとは、実在の顧客データや調査結果をもとに設定する、リアルな「架空の人物」です。ペルソナを設定することは、商品やサービスの開発、マーケティングに欠かせないと言われています。しかし名前は聞いたことがあっても、ペルソナが具体的に何であるか、どのように作成するのかを理解していない人もいるかもしれません。この記事では、ペルソナとは何か、その役割や重要性、作成方法、作成時の5つのポイントについて詳しく解説します。
「ペルソナ」とは、商品やサービスを利用する”典型的な顧客像”を、具体的な人物として設定したものです。ラテン語で「仮面」や「人格」を意味し、実在の人物ではないものの、リアリティのある一人のユーザー像を描きます。
例えば、年齢や性別、職業、家族構成、ライフスタイル、悩みや価値観までを設定することで、チーム全員が共通のユーザー像をイメージしやすくなります。
ペルソナの主な役割は、顧客視点に立った商品開発・マーケティング・カスタマー体験の最適化を支援することです。具体的には次のような場面で活用されます。
商品開発や販促チームのメンバーでペルソナを共有することで、「この商品は誰のためのもので、どんな価値を届けるか」を明確にしやすくなります。
マーケティングでよく使われる「ターゲット」は、ペルソナと似ているようですが、考え方も役割も異なります。
ターゲットとは、企業が商品・サービスを販売する対象として設定する、同じ属性や傾向を持つリアルな集団 です。
ペルソナとターゲットはどちらも顧客を理解するためのフレームですが、ターゲットが「属性による顧客の集合像」であるのに対し、ペルソナは「その中の典型的な一人を具体化した人物像」である点が大きく異なります。
ターゲットで市場全体を把握し、ペルソナで施策の具体性と精度を高める、というように役割は異なりますが、両者は補完関係にあります。
項目 | ペルソナ | ターゲット |
意味 | 典型的な顧客像を一人に絞り具体化したもの | 顧客層を属性で大まかに分類したもの |
設定内容 | 年齢、職業、価値観、悩み、行動パターンなど | 年齢層、性別、年収、地域などの属性 |
活用場面 | マーケティング全体の具体化・共通認識の形成 | 市場の選定・マス戦略の企画 |
次に、実際にマーケティング業務を遂行するうえでなぜペルソナ設定が重要なのか、主な理由を3つ紹介します。
企業では多くのメンバーがひとつの商品・サービスの開発やマーケティング、販売に携わりますが、各メンバーが抱く顧客像がバラバラだと方向性もぶれてしまいます。
ペルソナを設定することで、部署や役割が異なっても同じ「ユーザー像」をもとに議論できるため、開発やマーケティングに一貫性が生まれます。
マーケティングでは、顧客のニーズを正しく理解することが非常に重要です。
そのために、さまざまな調査や分析を行うわけですが、顧客層の幅が広いとデータに表れるニーズも多様になり、それらに応えようとして商品開発やマーケティングのコンセプトがあいまいになる可能性があります。
典型的な顧客像ひとりのニーズを徹底的に追及すれば、コンセプトはより絞られ、明快になります。そして多くの顧客の支持を集める、訴求力の高い商品・サービスを提供できるようになるのです。
ペルソナを設定することにより、企業側、売る側の視点ではなく、「顧客がどう感じ、何に満足するか」という視点に立って、商品やサービス、マーケティング施策を客観的に考えることができるようになります。
広告クリエイティブを制作する際も、「こちらはこう伝えたい」から「どう伝えればこの人に響くか?」というように発想の起点が変わるでしょう。対象を絞ることで、広告媒体の選定、広告配信時間の設定などもしやすくなり、、マーケティングの精度の向上も期待できます。
ペルソナは、単なる想像で作っては意味がありません。客観的なデータをもとに、典型的な顧客となるような人物像の肉付けをしていきましょう。
具体的な手順を3つのステップに分けて紹介します。
まずは、定量・定性の両面から情報を集めます。
集めたデータをもとに、属性(年齢、職業など)や心理的傾向(価値観、行動パターン)でグループ化します。
分類したグループから最も典型的な層を選び、ペルソナを設計していきます。このとき、該当する属性の生の声やSNSの投稿、アンケートの自由記述などを読み込んで、反映させることが重要です。
ペルソナに設定する項目は、業種や商品・サービスによって異なりますが、よく使われる設定項目には以下のようなものがあります。
最後に、ペルソナを作成するときに注意したい5つのポイントを紹介します。
ペルソナを設定するときは、街を歩けばその人に出会えるような、身近で現実感のある人物像を考えます。モデルや女優、大富豪といった一般の生活者とかけ離れた人物像を設定すると、そのペルソナの感じ方や行動を想定したり、担当者間で共有するのが難しくなります。
担当者が商品・サービスに抱く理想をペルソナに投影しがちですが、前述のような定量、定性両方のデータをできるだけ集め、リアリティのある顧客像を論理的に組み立てていきます。
ペルソナの設定は細かい方が良いといっても、ビジネスに関連性のないことまで設定する必要はありません。自社の商品やサービスと関連性の低い情報は省略し、具体的で分かりやすい人物設定を心掛けましょう。
ペルソナを担当者同士で共有するために、ビジュアルを活用するのも良い方法です。ペルソナに近いイメージの顔写真やイラスト、ファッションやインテリア、趣味を表す写真や動画を用意すると、リアリティが増します。
ペルソナを設定したあとも、実際の顧客とペルソナの間に違和感がないか、継続的なチェックが必要です。
どんな生活者も社会状況や流行の影響を受けるため、商品・サービスに対する顧客の感じ方や消費行動は、時代とともに変化します。顧客アンケートやソーシャルリスニングを定期的に行い、ペルソナと照らし合わせて、必要に応じて設定を修正していきましょう。
ペルソナは単なる「想像の人物」ではなく、実在する顧客の特徴を集約した”戦略の軸”です。チーム内で共通の顧客像を共有することで、、商品開発からプロモーション、カスタマーサポートまで、一貫性のある施策が実現できます。顧客を知り、顧客の視点で考え、顧客の感情に寄り添うことは、成果につながるマーケティングの第一歩です。ペルソナをしっかり設計し、ビジネスの成長に直結する強力な武器として役立てましょう。
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