インターネットをはじめとするテクノロジーの数々が、個人の生活にも浸透している時代となりました。こうした社会のなかにあって、マーケティングの手法も大きく変化しています。今回は、主流となりつつあるデジタルマーケティングの基本知識や手法について解説します。
はじめにデジタルマーケティングの概要と特徴について紹介します。
デジタルマーケティングとは、PCやスマホ、SNS、AIなどのあらゆるデジタル技術を活用したマーケティング手法です。
Webサイトやソーシャルメディア、メール、検索エンジンなどを利用して顧客との接点をつくり、情報提供、関心・興味喚起を通じて商品やサービスの購入につなげるのが狙いです。
例えばFacebook、Instagram、Twitter、LINEなどのソーシャルメディアを使用して、広く消費者に向けた広告キャンペーンを展開する、電子メールを使用して顧客や見込み客にプロモーションや情報を提供するといった方法もデジタルマーケティングです。
また、デジタルマーケティングの施策によって収集したデータを分析し、顧客の行動やニーズを把握することで、マーケティング戦略の最適化にも役立てられます。
デジタルマーケティングには以下のような特徴があります。
オンライン上では消費者行動を追いやすく、データの収集、分析が容易です。顧客の行動パターンやニーズの理解が進み、マーケティング戦略の改善に役立てることができます。
デジタルマーケティングの大きな特性は、顧客との相互作用が期待できることです。TV、新聞、雑誌などの既存メディアと違い、デジタルメディアでは顧客との双方向のコミュニケーションが可能となります。情報提供を行うと同時に、商品やサービスに対して顧客から質問や意見を受け取り、それに対して回答したり、顧客側の反応を見ながら直接的に次の行動を促したりすることもできます。
消費者のオンライン上の行動履歴を用いて、ターゲット市場を正確に特定し、ターゲット市場に合わせた広告を配信することが可能です。ターゲットを絞り込みやすいため、広告費用を削減しながら、より効果的なアプローチが実現できます。
リアルタイムで広告配信の結果を分析し、キャンペーンの改善につなげるだけでなく、顧客の反応をリアルタイムで把握し、発信内容の修正やタッチポイントの調整に役立てることもできます。
既存メディアと比べると多種多様なチャネルが使えるため、インターネットやモバイルデバイスを通じて広い層へのアプローチが可能です。エリア制限がなく、より幅広く大規模に発信ができるという強みがあります。
デジタルマーケティングとWebマーケティングは混同されがちですが、両社の違いはなんでしょうか。WebマーケティングはWebを限定としたマーケティングで、SEO(検索エンジン最適化)、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディアマーケティング、Web広告などの手法があります。
一方、デジタルマーケティングは、Webにとどまらず、AIやアプリ、IoTなどデジタル技術を利用したあらゆるマーケティング活動を指します。つまりデジタルマーケティングは、Webマーケティングを包括したマーケティングであるということです。
近年、デジタルマーケティングが重要視される理由としては、以下のようなことが挙げられます。
世界中の人々がオンラインで時間を過ごすようになり、オンライン上でのビジネスが企業にとって重要な戦略となりました。グローバル化が進む市場のなかで競争力を維持するためには、デジタルマーケティングが必要不可欠です。
細分化、複雑化する消費者ニーズに対して、デジタルマーケティングによる情報収集と分析が必要です。得られたデータをもとに、より効果的なアプローチを模索し、SEO(検索エンジン最適化)対策を行うことで、必要な情報を探している人々の検索結果の上位に企業のWebサイトを表示させ、情報提供をすることができます。
デジタルマーケティングは、広告費用やキャンペーン費用が比較的安価で行えます。また広く情報発信したり、収集したデータを活用することができるため、狙った効果が得やすく、ROIが高い傾向にあります。費用対効果の高い手法として、企業規模にかかわらず導入が可能です。
トレンドや社会の変化のスピードが速い時代のなかでは、企業側のリアルタイムでの反応が重要です。デジタルマーケティングなら、キャンペーンの成果をリアルタイムで測定し、即時改善することもできます。
デジタルマーケティングにおいては、例えばブログ記事、動画、インフォグラフィックなどのコンテンツを作成し、さまざまなチャネルで共有することが容易です。企業は常に統一性をもって、ブランド戦略や情報拡散戦略を実施できます。
デジタルマーケティングの具体的な手法を紹介します。
SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)とは、検索結果に上位表示させることを目的に、Webサイトやコンテンツを検索エンジンに対して最適化する取り組みです。SEO対策により上位表示させることで、自社サイトやコンテンツへの流入を促します。具体的な手法としては、キーワードの選定、タイトルタグやメタデータの最適化、コンテンツの質の向上、リンクの取得などがあります。
コンテンツマーケティングとは、消費者に対して有益な情報を提供することにより、興味や関心を喚起し、購買行動につなげるマーケティング手法です。
具体的には、ブログ記事、動画、SNS投稿、Webセミナー、eBookなどの形式で、消費者に有益な情報を提供します。消費者は、有用な情報を得ることで企業に対して信頼感や共感を覚え、商品やサービスを購入する意欲が高まるとされています。
Eメールを用いて、商品やサービスの情報を消費者に直接届け、商品やサービスについての理解を深めてもらうことを目的としたマーケティング手法です。
具体的には、企業が消費者の許可を得てメールアドレスを収集し、ニュースレターやプロモーションメール、アップセルメール、リテンションメールなどを送信します。目的に応じた内容のメールを配信し、商品やサービスについての理解を深めることで、コンバージョン(購入や申し込みなど)を促します。
Web広告は、インターネット上で配信される広告のことで、主にWebサイトやSNSなどのデジタルメディア上に掲載されます。主な種類には以下のようなものがあります。
リスティング広告 | 検索エンジンやSNSなどのWebサイト上で、特定のキーワードを検索すると表示される広告のことを指します。通常は検索結果の上部や右側に表示され、広告主が設定したキーワードに関連する検索結果と一緒に表示されます。 |
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SNS広告 | FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア上に表示される広告です。高度なターゲティングが可能なので、特定の層や興味関心に合わせた広告を配信できます。 |
ディスプレイ広告 | テキスト、画像、動画などのコンテンツをWebサイト上に表示する広告です。バナー広告やスポンサードコンテンツなどがあります。 |
リターゲティング広告 | すでに自社のWebサイトやアプリを使用したことのあるユーザーに対して再度広告を表示することで、興味をもったユーザーを再び引きつけ、コンバージョンを促す広告手法のことです。広告主は自社のサイトやアプリ内でユーザーの行動をトラッキングし、そのデータをもとにターゲティング広告を配信します。 |
アフィリエイト広告 | 自社の商品やサービスを紹介し、成果(商品の販売、登録、申し込みなど)があった場合に広告を表示しているサイトの所有者に報酬が支払われる広告です。成果報酬型広告とも呼ばれます。 |
MA(Marketing Automation)とは、ツールを用いてマーケティングのプロセスを自動化することで、顧客との関係性を強化し、セールスプロセスを改善するための手法です。
具体的には、自動応答メールの配信やリードナーチャリング、ターゲティング広告、SNSの自動投稿などのマーケティング活動を自動化することができます。これにより、アプローチや販売プロセスを簡略化し、効率的なマーケティング活動が可能となります。
動画マーケティングとは、動画コンテンツを使用して商品やサービスをプロモーションするマーケティング手法です。インターネット上の動画共有サイトやSNSなどを活用して顧客に対して情報を提供し、商品やサービスについての認知度を高め、購買意欲を促すことを目的としています。
動画には、テキストや画像よりも強い訴求力があります。商品やサービスの魅力をストレートに伝えることができるため、顧客に印象を残し、商品やサービスへの興味を引き出すことができます。また、商品やサービスの機能を視覚的に表現することで、より具体的にわかりやすく伝えられます。
近年、デジタルマーケティングにおいて特に注目されているのが、AI技術の活用です。2022年11月に登場したChatGPTは、瞬く間に世界中で話題となり、人々のAI技術への期待はより一層高まりました。AIの活用により、今後のデジタルマーケティングの可能性は更に拡がっていくことが予想されます。
現在、デジタルマーケティングでAIがどのように活用されているかの一例を紹介します。
デジタルマーケティングにおいては、多くのデータが収集されます。AI技術は、その膨大なデータを高速かつ正確に分析し、顧客の行動パターンや志向を把握することが可能です。
顧客の属性や行動履歴といった膨大なデータを、AI技術を活用して分析することで、より適切なタイミングやコンテンツでマーケティングを行うことができます。顧客のニーズに合わせた提案が可能となり、顧客満足度の向上につなげることができます。
AI技術を活用したチャットボットは、顧客とのコミュニケーションを自動化することができます。例えば、新たなAI技術として代表的なChatGPTを活用すれば、自動応答チャットボットを構築できます。こうした環境が整えば、24時間いつでも顧客からの問い合わせに対応することができるほか、問い合わせの内容によって専門的な担当者への振り分けが可能となり、顧客にとっても対応企業にとっても効率的で満足度の高いサポート体制が構築できます。
AIによって自動生成された商品説明文やブログ記事などはすでに活用されており、コンテンツの制作期間やコストの削減に効果を発揮しています。
また、上記で紹介したChatGPTを活用することによって、コンテンツ制作を支援することもできます。例えばChatGPTを使って自動生成したテキストをもとにブラッシュアップすれば、より高品質なコンテンツが短い期間で制作できるようになります。
デジタルマーケティング戦略を設計する際の重要なポイントを紹介します。
デジタルマーケティングの目的は多岐にわたるため、まず自社が何を求めて取り組むのかを明確にする必要があります。
例えば、ブランド認知度の向上なのか、顧客獲得なのか、顧客ロイヤルティの向上なのか、といったことを明確にすることで、方向性や手法を定めることができます。
ユーザーのニーズに的確に応えるコンテンツを制作するためには、マーケティング施策の対象となるターゲットの年齢層、性別、地域、興味関心などを把握することが大切です。そのための前提として、自社の商品やサービスについての十分な理解が求められます。そのうえで、ターゲットに訴えるべき魅力や強みは何であるのかを、具体的に分析することが重要です。
Webサイト、ソーシャルメディア、メールマーケティングなどの多様なチャネルから、目的とターゲット層に合わせて適切なものを選定することが重要です。チャネルの選定が適切でないと、思うような成果を得られないおそれがあります。
Webサイトやソーシャルメディアのプロフィール、その他提供するコンテンツは、各チャネル間の統一を図りつつ、ターゲットのニーズや興味に合わせて最適化することが必要です。
KPI(Key Performance Indicators)とは、何をどの程度、どれくらいの期間で達成するのかを数値で示したものです。デジタルマーケティングにおいてもKPIを設定することで、施策の評価基準を明確にし、デジタルマーケティング戦略の見直しと改善に役立てることができます。さまざまなKPIの指標のなかから目的に合ったものを設定し、達成可能な目標値を定めることで、モニタリングによる評価と改善が実施できます。
デジタルマーケティングで用いられる主な指標には、以下のようなものがあります。
デジタルマーケティングを通じた顧客の開拓、関係性構築、リピーター・ファンの獲得は、企業にとって事業の強力な推進力となります。グローバル化が加速する厳しい市場競争を勝ち抜くためには、デジタルマーケティングを販促活動の大きな軸としていく必要があります。この記事で紹介した以外にもデジタルマーケティングには数多くの手法が存在し、その範囲は拡大しています。自社の求める目的を明確にし、効果の高いマーケティング手法を選びながら、実施と改善を重ねていく姿勢が大切です。
TOPPANクロレでは、デジタルマーケティングに取り組む企業を支援しております。未活用の顧客データの見える化、分析を行い、マーケティングシナリオの立案から施策の設計・運用までを一気通貫で行います。お悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。