インターネットが社会的なインフラとして浸透してから、マーケティングの方法にも変化が生じています。現在拡大している動画マーケティング市場において、新たな手法として期待されているのがTikTokマーケティングです。ここでは、TikTokマーケティングの概要や注目される理由、具体的な戦略、実施の際の注意点について解説します。
TikTokはSNSのひとつで、基本的には15秒から60秒ほどの短い動画を作成し投稿するプラットフォームを提供しています。
SNSの多くはアカウントに対して、フォロワーや「友だち」など人を通じて拡散する仕組みです。一方のTikTokは「フォローしていないクリエイターの動画」がおすすめ欄に優先的に表示されるため、フォロワーが0人であってもある程度人の目に留まりやすく、全くの無名でも内容がおもしろければ大きく拡散されるチャンスがあります。
特定のテーマやアイデアに基づいた「ハッシュタグチャレンジ」が、頻繁に行われていることも拡散性を高めています。企業やブランドによって提案されるハッシュタグチャレンジでは、特定のハッシュタグでタグ付けされた動画が拡散されやすくなります。TikTok初心者でも、ハッシュタグチャレンジを利用すると、多くの人に見てもらう機会が得られます。
また、TikTokには、動画をほかのソーシャルメディアプラットフォームやメッセージアプリに簡単にシェアできる機能があります。TikTokだけで終わらず、ほかのSNSによって広められることも大きな特徴です。
TikTokは15秒から60秒の短い動画が主体となっており、わかりやすく情報が伝えられます。細かい説明を読む必要もなく、面白みが簡単に伝わります。
長すぎないため、最後まで視聴されやすく、タイムパフォーマンスを重視する世代にも受け入れられやすい傾向があります。
TikTokはビデオベースのプラットフォームであるため、視覚的なコンテンツが軸となっています。魅力的に見せるための演出として、音楽やエフェクトを使ったインパクトのある動画を容易に作成でき、興味をひきやすい仕組みが提供されています。
2021年9月時点で、TikTokの世界の視聴者数は10億人を超えているとされ、ダンス、挑戦、コメディ、メイクアップ、料理など、多様なジャンルのクリエイティブな動画が、幅広い世代のさまざまな嗜好(しこう)の人たちによって投稿されています。
2022年1月にNTTドコモ モバイル社会研究所が行った調査をみると、年代別の利用者層は、10代女性が約半数の46.2%を占めています。次いで10代男性が32.1%、20代女性が19.7%と高く、若年層に人気があることがわかります。
この層はテレビよりもインターネットに親しんで育ち、スマートフォンが常に手元にあるのが当然という世代です。
そのためオンラインでの発信や自己表現が習慣化しており、動画の配信、視聴に抵抗感がないため、日常的なあらゆるネタを動画のテーマにする傾向が見られます。また、インターネットを通じたコミュニケーションと交流に慣れていることも特徴で、この層のユーザーにはコンテンツの共有やコメント、「いいね」などの交流手段は普通のコミュニケーション手法と受け止められています。
オンライン上のコミュニティ形成にも積極的で、インフルエンサーと呼ばれる著名人の動画には多くのフォロワーが集まります。インフルエンサーはブランドや商品の購買に関して、特に若年層に対する影響を与えやすいとされています。
TikTokの利用者にはこのような特徴があるため、特に若年層に訴求したい場合にTikTokをマーケティングに利用する手法が注目されています。
また、2023年の傾向をさらに調査した結果(博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの共同研究プロジェクト発表の「コンテンツファン消費行動調査」)によると、TikTok利用層の平均年齢は約36歳に上昇していることがわかりました。つまり、今やTikTokは幅広い世代に使われるようになってきたと言えそうです。
こうした利用層の年齢幅が広がったこと、また、若い世代には根強いファンがいることを考えると、現役世代から若年層に訴求したい商品やサービスに関連したマーケティングに、TikTokを活用するのは有効な手段だと言えるでしょう。
ここからは、TikTokマーケティングについて、詳しく見ていきましょう。
TikTokマーケティングは、TikTokを活用して、ビジネスやブランドのプロモーション、商品の宣伝、サービスの広告などを行うマーケティング戦略のことです。
動画の中心は通常15秒から60秒程度ですが、最近ではクリエイターのために1分を超える長尺動画の提供も開始されています。
TikTokを通じて販売効果が上がる商品としては食品、コスメなどの事例があり、「TikTok売れ」と呼ばれる現象が新たなマーケティングチャネルの可能性として有望視されています。
前述同様の調査では、TikTokの昨今の市場ニーズを見ると、認知率は調査を行った全年代をみると約7割。10代男女の認知率は約9割、20~30代女性では約8割となっています。
上記の利用者層の特徴でも触れたように、TikTokの利用者は若年層を中心に、30代、40代への年齢層を広げている状況です。この傾向は年々、利用層の年齢幅が広がることを想像させ、全年代における認知度は今後とも高いものとなると考えられます。
これから消費の軸となる10代後半、20代、さらには30代、40代において「商品やサービスの購入時に検討する際、情報を得ているもののうち重視するもの」はSNSでの口コミ・評価が圧倒的に高くなっています。そして、そうした消費行動を示す約6割の女性が「SNSで見た商品紹介動画が買い物のきっかけになった」と回答したというデータもあることから、収益向上にはSNS戦略が欠かせなくなっています。
今後、現代の若年層が数年もすれば本格的に購買層の中心となり、さらに現在30代、40代の収入が安定していると考えられる世代は、生活や自分の時間に余裕の持てる世代となり、自分のために消費を行う消費者層になります。つまり、今からTikTokマーケティングへの取り組みに着手することは、着実に、SNSからの情報によって消費行動を行うであろう世代を顧客として取り込むチャンスを広げることになります。今後ますますSNS戦略は事業戦略として有効であると考えられます。
TikTokマーケティングの主なメリットは以下のとおりです。
先にもご紹介したように、TikTokはほかのSNSと比べて情報拡散力に優れています。一般的なSNSでは、「いいね」や「フォロワー」の数が多いほど投稿が多く表示されますが、TikTokはフォロワー数が少なくても、投稿した動画が多くの視聴者のタイムラインに表示される仕組みになっています。そのため、フォロワー数が少ない場合でも情報の拡散が期待できます。
TikTokでの消費金額は、ほかのSNSよりも高いという傾向が見られます。例えばある企業の調査によれば、TikTokのユーザーでは約8万5,862円を消費しているとの報告があり、ほかのSNSよりも約2倍多い傾向にあります。TikTokには特に若年層のユーザーが多いため、この層が動画をきっかけに商品やサービスをオンライン上で購入する可能性が高いと言えます。
企業のTikTokマーケティングの活用手法を紹介します。
ビジネスアカウントを運用することで、企業やブランドはTikTok上で自社のプロモーションやコンテンツ制作を行うことができます。ビジネスアカウントを利用すると、以下のような機能があります。
TikTok広告は、ビジネスアカウントを持たない企業でも利用できる有力なマーケティング手法です。TikTok広告の主なタイプには、以下のようなものがあります。
TikTokに搭載されているプロモート機能を活用した情報発信も効果が期待できます。
これは有料で利用できる機能ですが、TikTokのユーザーに自身の投稿をアピールすることができるので、広告と同様の効果があると考えられます。
また、狙ったTokTokユーザーにアピールすることも可能であるため、より的を絞った情報提供ができます。
さらに、こうした投稿による広告効果は、あからさまな広告感が薄いため、好意的に受け止められる可能性もあります。
一方、必ずしも狙いとおりの反響があるとは限らず、情報内容や提供の仕方によってはステルスマーケティングだと受け止められ、炎上という事態も招きかねないことも考えておく必要があります。
TikTok上で影響力のあるインフルエンサーを起用することで、ブランドや商品の露出を増やすことが狙えます。インフルエンサーは大きなフォロワーベースを持っており、その影響力を活かして企業とのコラボレーションを行うことで、視聴者に対して幅広く、効果的なメッセージを伝えられるでしょう。
インフルエンサーの起用により、以下のようなメリットが期待できます。
TikTokマーケティングでは、上記の手法を組み合わせることで、より効果的なマーケティング戦略を展開できます。コンテンツ内容の適正化と自社に合った広告の活用、そして影響力のあるインフルエンサーとの連携によって、視聴者にアプローチし、購買行動を促します。
TikTokマーケティングを行う際の注意点を解説します。
動画作成の際に使用する音楽や画像などの制作物の著作権を確認し、著作権侵害によるトラブルを未然に防ぐ必要があります。
以下はTikTok側が示す、著作権侵害の範囲です。
※二次的著作物を使用する場合は、その権利者のみならず、原作の権利者の許諾も必要
上記のようにTikTok側で示しているもののほか、商標権や肖像権についても注意を払う必要があります。
不快感を与えない表現、多様性に配慮した発言を意識し、不適切な発言がないかを厳しくチェックするといった運用姿勢が重要です。
インフルエンサーや外部の人材を活用する際にも、ガイドラインを設定し、意識の統一を図ります。また、2023年10月1日からは、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の禁止について定めるステルスマーケティング規制が導入されるため、消費者が判断を誤ることのないよう、広告・宣伝であるという表示を明確にする必要があります。
誤解されやすい表現は使わない、提供元を明示するなど、企業としての方針を徹底します。データの根拠を確認し、曖昧な情報を使用しないことが大切です。
トラブルを未然に防ぐためには、動画に関する方針をガイドラインにまとめ、禁止事項や行動の制限などをリスト化します。すべての動画について二重、三重のチェックを行い、正確な情報に基づいた動画を配信する姿勢が求められます。
TikTokはFacebookやInstagramに続くSNSとして、利用の拡大が続いています。特に若い世代は、すでにオンライン上のクリエイティブな動画を生活のツールのように使いこなし、購買行動にも大きな影響を受けています。
動画マーケティングに興味のある方は、今後の成長が期待できるTikTokを活用したマーケティング施策を検討されてみてはいかがでしょうか。
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