商品やロゴなどの色やイメージを、紙のカタログやチラシ、ポスター、POPで、印刷前に確認したい時には「色校正(いろこうせい)」という工程が必要です。さまざまな課題もあるこの工程を激変させる技術とシステムを、TOPPANクロレは保有しています。その技術やシステムについて、今回のコラムでは、「モニタープルーフ」を採用いただいたお客様の事例を交えてご紹介します。
紙の販促ツールを制作・製造するには、いくつもの工程があります。
最も気を遣う工程の一つが「色校正」。印刷に使用する版を、実際に使う用紙に刷った「色校正用見本紙(本稿では以降「見本紙」とします)」の、色やカタチに問題が無いかをチェックする工程で、ヒューマンレビューを基本とします。
責任のある立場の人が「その工程を経た」という事実が重要視されることも多く、「色校正通りに印刷すれば、問題無し(=校了)」と、印刷会社に承認したことを意味するケースもあります。
しかし、裏表に印刷されたチラシのようなものならまだしも、ページ数の多いパンフレット、複数のツール、用紙が異なる数種類のパーツがあるようなものの色校正の作業は、見本紙を用意する側も、確認する側も骨の折れる作業となります。
また、複数の人が確認する必要がある場合、大量の見本紙を用意しなければならないので、保管や廃棄の問題をクリアしておく必要があります。さらに、色校正で問題があれば、何度も見本紙を出さなければならないといったこともあります。
つまり色校正は、紙の販促ツールの制作・製造に不可欠の工程で、印刷事業独特の文化です。しかし、多くの人の時間、労力、費用、場所を奪い、確認後は廃棄される用紙の無駄も発生させるので、時代が求める理想的な企業活動、社会行動とは相反する部分もあります。
印刷業に携わる私共は、少しでもそういった無駄をクリアできる方策を、長年にわたり検討してきました。その一つが、「色合わせ(カラーマネジメント)」の技術です。
たとえば同じ赤色でも、印刷機によって色の出し方は異なり、また、用紙によってインキの浸透具合が異なるため、色の発色は異なります。異なる用紙で、同じ赤色に発色させるために、色の出具合を調整する技術を私共は保有しています。その技術により、色校正の手戻りを少なくすることを可能にしてきました。
そして、その技術を発展させ、遠隔地でもモニターで色校正の工程が実現できる「モニタープルーフ」の実用化が始まっています。
モニター表示画像と紙上での色再現とをマッチングさせることにより、見本紙を介さずに、色校正の工程を行うことです。モニター上で、リアルな色を伝えるのは難しいとされてきました。そこには以下の3つの理由があります。
①モニターの性能によって発色が違う
②モニターのおかれている環境によって発色が違う
③目の見え方が個々人で異なる
これらを解決するのがColorSeeker®です。
ColorSeeker®は、パソコンモニター画面のカラーマネジメントを実現するクラウドサービスです。ユーザーが基準となる絵柄を参考に、クラウド上のソフトウェアで直感的に色調調整操作をすることで、同モニターに適したカラープロファイルが作成されます。作成されたカラープロファイルデータをパソコンに設定すれば、正しい色で確認できるようになります。
ColorSeeker® (イメージ)
某フィンテック事業者様の販促物製造において、モニタープルーフを導入いただきました。
主な製造ツールは、ポスター、チラシ、ステッカー、卓上POPなどです。それぞれ使用する用紙はコート系で、表面加工もグロスPP(印刷物の表面に光沢を出す加工)があるかないか程度。ツールごとに仕様の差は少ない状況でした。
その一方で、エリアごとに期間や特典が異なるため、すべて異なる版で印刷する必要があります。QRコードの掲載もあり、色校正は必須の作業でした。
そのため、ツールのご担当者様は、月2回、平均20種類のツールの色校正紙を、リモートワーク中の自宅で受け取り、チェックしていました。
ご担当者様の課題は、大量の見本紙の保管スペースの確保と廃棄でした。
Step1.デモの実施
ご担当者に来社頂き、見本紙とモニターでの色の見え方の違いを比較し、差異を調整・同じ色に見えることを実感していただく。
Step2.仮運用
見本紙とモニタープルーフを併用で運用していただきながら、改善点等を調整
Step3.本採用
モニタープルーフのみで運用を実施
お客様の負担を軽減できるだけでなく、私たちの業務としても、現物確認時の原稿整理時間が飛躍的に短縮され、且つ出先からでもアップロードするだけで色校正を先方に届けることが可能になったことで作業効率が格段に上がりました。
定期的に多品種の販促物を制作・製造されているお客様にはモニタープルーフはマッチすると感じています。特に、色味やデザインの微調整を頻繁に行う必要がある場合、モニタープルーフは時間とコストの削減に大きく貢献できます。
また、活用範囲が広がり、将来的にはペーパーレスでの確認が主流となることも想像され、環境問題にも貢献できます。今後は、カラー品質において要求度の高いアパレル関係やメーカー等にも採用いただけるよう、ご提案を進めていきたいと考えています。
実際の事例とともに、色校正の工程を革新するモニタープルーフについてご紹介しました。TOPPANのCMSには、他にもさまざまなデバイスで撮影した画像を、正しい色に変換するクラウドサービス「CAM-FIT®」や印刷をする用紙の種類、印刷方式、インキの色を指定するだけで、最終印刷物の仕上がりの色調をモニター上で確認することができるサービスも実用化しています。
CAM-FIT® (イメージ)
今後、紙の販促物の制作工程はTOPPANのCMSで大きく変化していくことが予想されます。
以下の図のように、遠隔地でも色を確実にマネジメントできる時代は目の前です。
◎特許情報
ColorSeeker® 特許第7074255号 カラーマッチング支援装置、カラーマッチング支援方法、およびカラーマッチング支援プログラム
CAM-FIT® 特許第7131727号 画像処理サーバ、画像処理システム、画像処理方法、及びプログラム
モニタープルーフの導入のご検討、ご質問などは以下よりお問い合わせください。