厳しい市場競争のもと、競合他社とどのように差別化すればいいか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。USPはその課題解決の参考となる、自社の強み(独自性)に目を向けた考え方です。顧客に自社ならではの価値を提供できれば、競合に対する優位性が得られます。今回はUSPの意味や作成の流れ、USP作成に向けたポイントなどを解説します。
初めにUSPとは何か、基本的な知識を解説します。
USPとは、「自社の製品・サービスが持つ独自の強み」を表わす用語です。「その商品やサービスだけが持つ強み」というだけでなく、「その商品やサービスのみが顧客に提供できる価値」を意味します。
USPは米国テレビ広告界で活躍したコピーライター、ロッサー・リーブスによって提唱された概念です。
USP(Unique Selling Proposition)とは、以下の3つの単語が組み合わさった単語です。
直訳では「ユニークな主張や提案により販売する」という意味となります。
各企業によって、価格、品質、機能性、デザイン、サポート、利便性など得意分野はさまざまです。そのため、USPとなるポイントはそれぞれ異なり、決まりはありません。
USPは商品やサービスを販売するための戦略的なアプローチ要素のひとつであり、顧客に訴求するメッセージとしても利用されます。
USPの役割や目的は、以下のとおりです。
顧客に対して他社の商品やサービスとの違いを明確に示すことで、競合に対して優位性を得られます。
自社商品やサービスが他社よりも優れている点を顧客にアピールでき、購買決定を促します。
ほかにはない存在であることを印象づけられ、ブランドイメージの確立・向上の効果が期待できます。
自社の強みや独自の価値を明確にすることで、商品やサービスの開発、マーケティング戦略における方向性を定められます。
USPを作成する流れを解説します。
自社内の情報や資料を分析し、商品やサービスの特徴や利点に関する情報を把握します。例えば、製品仕様、特徴的な機能、技術的な優位性、品質、価格、保証などの要素のチェックを行います。
また、顧客からのフィードバックやレビューを収集し、商品やサービスに関する感想や意見から客観的視点を得ることも大切です。
あわせて調査や市場リサーチを実施し、顧客のニーズやトレンドを把握します。自社の商品・サービスと社会の需要との整合性を確認することで、今後の戦略についての方向性をさぐります。
自社商品やサービスの分析と同時に、競合分析も行います。競合他社の商品やサービスを詳細に調査し、自社のものと比較します。具体的には、競合他社のWebサイトや広告、販売資料などを調べ、差別化ポイントや自社の優位性を可視化します。競合他社の強みを知ることで、自社が狙うべき領域や自社ならでは強みが見えてくるでしょう。
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競合分析について、詳しく知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。
競合分析とは? 手順やよく使われるフレームワークを解説
購買データから商品・サービスのターゲット層を特定します。自社のメッセージを的確に伝えていくためにも、重要なプロセスとなります。
現状の顧客層だけではなく、興味や関心のある潜在層、アプローチを期待できる層もあわせて検討しておくと、将来的な戦略に組み込める可能性があります。
顧客の好み、ニーズ、課題、欲求を分析し、どのような価値提供が重要であるかを特定します。
顧客へのインタビューやアンケート結果から、商品やサービスに対する期待や要望、消費者が抱えている問題に着目し、アプローチに役立てます。ほかに情報収集の方法としては、問い合わせ・サポート窓口に寄せられた意見、クレームをチェックする、市場リサーチによるトレンド把握を行うなどがあります。
競合他社との比較を通じて、自社の独自性や優位性を特定します。プロセスにおいて発見した商品やサービスの特長、品質、価格、デザイン、顧客サービス、利便性など、他社とは異なる要素が、USPのもととなります。
このとき、ターゲット層の理解で得た要望・ニーズに合致するものを中心に拾い上げることを意識します。特に課題解決になる要素を重視することで、強力なアピールポイントとなります。
自社の持つ独自性が顧客にどのような利益や解決策をもたらすのか、価値を明確化し表現に落とし込みます。
USPを効果的に伝えるためのメッセージやストーリーを開発し、ターゲット層にマッチしたマーケティングチャネルや広告手法を選択することが大切です。
USP戦略を実行し、市場での反応や効果を検証します。顧客のフィードバックや売り上げデータなどを分析し、必要に応じてUSPに関する修正・改善を行います。
USPを作成する際のポイントには、以下のようなものがあります。
いくら自社で強みや魅力だと考えていても、消費者が受け入れなければ意味を持ちません。顧客側の視点を考慮し、顧客のニーズや利益に焦点を当てることが大切です。そのためにはターゲットを絞り、その層の顧客にとっての価値を提供できる要素を見つけ出す必要があります。
USP戦略を成功させるためには、自社の独自性を打ち出し、唯一性を極めることが重要です。他社と同じような表現やアピールポイントにならないようにする、端的に魅力が伝わる見せ方をする工夫が求められます。
他社との差別化を図るために独自性を持つことは必要ですが、同時に本質的な価値を提供することがとても重要です。顧客が真に求めているベネフィット、課題への解決策を提供できる商品・サービスであることを意識しながら取り組みます。
USPは企業全体の目標や戦略と一致していることが重要です。USP戦略のみがひとり歩きしないよう、企業のブランドやポジショニングと調和した、統一感のあるメッセージを伝えます。
ひとつの要素だけにこだわらず、いろいろな要素を掛け合わせることで、新たな強みを見いだせることもあります。USPを考えるときは、複数の要素を掛け合わせて独自性をつくることも検討しましょう。
新しいUSPは他社より早く世に出すことが大切です。先に他社に出されると、その企業のイメージとして定着してしまうため、タイミングを見極めましょう。
USPはひと言で伝えられるほど印象に残りやすく、効果的です。短くてわかりやすい文言で表現することを意識します。
USP戦略で参考となる成功事例を紹介します。
「10分の身だしなみ」
30分から1時間程度かかるのが普通とされてきた業態において、ヘアカットに特化し、リーズナブル・時短で調髪ができる画期的サービスを打ち出しました。顧客が求めるものを探り当て、独自性を持って大きな成功をおさめた例です。
「ホットでフレッシュなピザを30分以内にお届けします。もし30分以上かかったら、ピザの料金はいただきません」
現在はドライバーの安全性に配慮しているため表示していませんが、このキャッチコピーを出した当初は大きな反響を呼びました。食べたいときに確実においしいピザが食べられることを、強烈にアピールしたUSPです。
「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」
当時主流だった紙パック式の掃除機では、ゴミの蓄積量が増えると吸引力が落ちるというデメリットがありました。それに対して、ダイソンの掃除機はデュアルサイクロン式を搭載し、紙パックを使用しないことで吸引力の低下を抑えるという課題解決を提示したUSPです。
USPは自社がユニークな存在であることを示し、商品やサービスの付加価値を伝えます。消費者の商品やサービスを選ぶ際のよりどころとなり、事業存続につながるブランディング施策としても貢献します。大切なのは、自社が持つユニークさによって、消費者のニーズに対してどのような形で応えられるのかを表現することです。まずは自社の強みをしっかりと見極め、効果的なUSP作成を実現していきましょう。
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