今や、多くの人が日常的に利用しているSNS。EC業界においても、情報発信や集客の手段としてSNSの活用が進んでいます。近年では、商品を販売するプラットフォームとしてSNSを利用する「ソーシャルコマース」が注目されています。そこで今回は、ソーシャルコマースの基礎知識やメリット、日本でソーシャルコマースに活用されているSNSプラットフォームなどを解説します。
ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアとEコマースを掛け合わせた言葉で、ソーシャルメディア(SNS)において商品・サービスを販売するマーケティング手法のことです。
ソーシャルコマースには、企業と顧客との双方向のコミュニケーションを通してユーザーの購買意欲を高め、その場で購買行動につなげることができるという特徴があります。
ソーシャルコマースは新しいタイプのECと言われていますが、従来のECとSNS型のソーシャルコマースとの大きな違いは、SNSが果たす役割です。
もともと企業にとってのSNSは、自社のユーザーやファンとの交流の場であり、主に商品の認知度やブランド力の向上を目的に活用するものでした。EC事業者も、商品の販売はショッピングモールや自社のECサイトで行い、SNSは集客のためのプラットフォームというように使い方を分けていました。
ところが、ソーシャルコマースでは、SNS上で情報発信から集客、販売までを一気通貫で行うことができます。
これまではSNSで見た商品を欲しいと思ったら、ブランド名や商品名からECサイトを検索し、ECサイトに移動してさらに商品を特定するといった手間がかかり、その間にユーザーが離脱してしまうリスクがありました。
しかしソーシャルコマースでは、「インフルエンサーが投稿した商品に興味を持つ」→「商品ページに遷移する」→「商品を選択する」→「購入手続きをする」というように、SNS上で気になる商品を見つけてから購入までのプロセスが短くシンプルです。そのため、ユーザーの途中離脱を抑えることができます。
ソーシャルコマースは、使用するプラットフォームや販売者側とユーザーの関係性などによって、いくつかの種類に分類できます。日本でよく見られるソーシャルコマースの主な種類を紹介します。
SNSの自社アカウント上で商品を販売するソーシャルコマースです。
SNS型では、EC事業者は自社のアカウントの投稿、ライブ配信などを通して商品を紹介し、ユーザーはそのアカウント内で欲しい商品を選ぶことができます。
今、世界ではECにおけるSNS型ソーシャルコマースの存在感が非常に大きくなっていると言われます。
一方、日本ではショッピング機能が付いたSNSにおいても決済機能がまだ実装されておらず、世界に後れを取っている状況です。しかしその分、今後の伸びしろが大きいとも考えられ、機能の拡充やメジャーなSNSのソーシャルコマースへの参入が期待されています。
代表的な例:Instagram、Facebook、Pinterestなど
「CtoC」とは、「Consumer to Consumer」の略で、一般のユーザー同士が行う商品取引のことです。
企業は取引を行うプラットフォームを用意するだけで、ユーザー同士の取引には基本的に関与しません。CtoC型では一般の人が商品を出品するため、安価でニッチなものが見つかりやすいというメリットがあります。
代表的な例:メルカリ、ヤフオク!、Amazonマーケットプレイスなど
クラウドファンディングを通じて商品購入やサービス利用を行うことによって、新しい商品の企画やプロジェクトに参加したり、応援したりするタイプです。
代表的な例:Makuake、CAMPFIREなど
ほかのユーザーが書き込んだ商品のレビューやクチコミ、評価を参考に商品が購入されるタイプのECも、ソーシャルコマースの一形態と考えられます。
代表的な例:Amazon、楽天、アットコスメなど
このように、ソーシャルコマースにはいろいろな種類がありますが、なかでも注目されているのが、自社のSNSアカウントを販売の場として活用する「SNS型」です。
そのため「ソーシャルコマース」を、SNS型を指す用語として使うケースもあります。この記事でも、ソーシャルコマース=SNS型のソーシャルコマースとして取り上げていきます。
ソーシャルコマースには、次のようなさまざまなメリットがあります。
SNSの本来の目的は、個人と個人、個人と企業がつながることです。商品自体や価格などの情報だけでなく、ブランドの世界観やストーリーを発信し、そこに共感や親近感を抱いたフォロワーと直接交流できる点が、企業にとってのSNSの大きな魅力です。
自社や商品のファンとも言えるフォロワーが増え、多くの人に商品やセールの情報を直接伝えられるようになると、SEOやリスティング広告に頼らなくても集客が可能になります。競合他社との価格競争に巻き込まれることも減るはずです。
ただし、自社のアカウントに注目を集めフォロワーを増やすのは、それほど簡単ではありません。SNS広告やそのほかのマーケティング施策を行うといった、新規フォロワー獲得のための努力は必要です。
ソーシャルコマースでは、自社のSNSアカウントに、オンラインショップを無料で簡単に開設できる点も大きな魅力です。
ただし、今のところ、日本のショッピング機能付きSNSには、まだ決済機能が搭載されていません。そのため、ユーザーが購入を完結するには、カート機能(ECサイト)を別に持つ必要があります。
こうした状況でローコストのメリットを生かすには、集客や販売はSNSを中心に行い、ECサイトはカート機能をメインにすると割り切るとよいでしょう。
今は、低料金でシンプルなECサイトを構築できるECプラットフォームがいろいろあります。ECサイトの機能やデザインを絞り込んで構築することにより、全体のコストや手間を抑えることができます。
現在、日本でソーシャルコマースとして活用できる主なプラットフォームには次のようなものがあります。
Instagramでは、自社のアカウントに無料で「Instagram ショップ」を開設できます。
自社のフィードやストーリーズの投稿に「ショップを見る」ボタンや「商品タグ」(画像や動画上に商品名や金額を表示するタグ)を配置すれば、ユーザーをInstagram内のショップページや商品ページに誘導することができます。
これらの投稿は広告として配信できるので、フォロワー以外のユーザーを集客することも可能です。
Facebookでは2020年に「Facebookショップ」のサービスを開始しました。こちらも開設は無料です。
Facebook内のショップへの誘導を付けた投稿をファン(自社の投稿に「いいね」をしてくれた人)に表示できるほか、広告として配信し、広く集客することができます。
また、コミュニケーション用のアプリ「メッセンジャー」を使って、取引に関する個別の連絡を取ることができます。
Pinterestは、インターネット上にある好きな画像や動画を整理してピン(保存)したり、ユーザー同士で共有したりできるSNSです。
Pinterestには、ユーザーがピンしたECサイト上の商品画像や動画を販売に直結させる「プロダクトピン」という機能があります。
プロダクトピンを利用しているECサイトは、ピンされた画像や動画に、商品名、価格、在庫状況などの最新情報を表示することができます。そして、ユーザーがそのコンテンツをタップするとECサイトの商品ページに遷移します。
自社の商品に関心を持ち、画像や動画をピンしたユーザーに、詳しい情報を提示し、購買を強く促すことができます。
海外では「X(旧Twitter)」や「TikTok」にもショッピング機能が付加され、それぞれの特性やユーザー層に合わせたECビジネスが積極的に展開されています。今後、日本でもこうしたSNSにショッピング機能が実装されれば、国内のソーシャルコマースの市場を大きく押し広げると考えられます。
ソーシャルコマースは、SNS上のユーザーとのつながりやコンテンツの共有を通して商品を販売する仕組みで、海外では市場規模が急速に拡大しています。日本のソーシャルコマースは世界に比べて遅れていますが、今後、機能の実装が進めば、可能性が大きく広がると考えられます。これまでのEC施策に限界を感じ、新しいチャネルを広げたいと考えているなら、未来に向けて、ソーシャルコマースの導入を検討してはいかがでしょうか。
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