「海外に販路を拡大したい」「日本の良い商品を世界に届けたい」と考える企業にとって、越境ECは成長性の高いビジネスチャンスです。
越境ECとは、国境を越えてインターネットを通じて行う電子商取引(E-commerce)のことです。世界的なEC市場の拡大を背景に、年々その市場規模を拡大しています。
この記事では、これから越境ECを始めたい方に向けて、越境ECの具体的な方法や最新の市場規模、メリット・デメリット、事前に検討しておくべき重要なポイントについて解説します。
越境ECとは、日本から海外の消費者に向けて、インターネット上で商品を販売するEC(電子商取引)のことです。越境ECを行うには主に次のような方法があります。
自社で越境ECサイトを構築し、運用する方法です。
デザインや機能の自由度が高く、ブランドイメージを細部まで表現できます。顧客データの詳細な分析も可能です。
越境ECに特化したカートサービスを利用するか、多言語・多通貨対応の機能を持つ国内のECプラットフォームを利用するのが一般的です。販売先の国や地域に合わせ、言語表示、通貨、決済方法などを整備します。
現地で広く利用されている既存のECモールに出店し、商品を販売する方法です。
モールの知名度や集客力を利用できるため、比較的早く販売を開始でき、初期の集客コストを抑えられます。
欧米ではAmazonやeBay、中国では京東全球購(JD Worldwide)や天猫国際(Tmall Global)といった、越境ECに対応した主要モールがあります。
現地のEC市場に精通した外部の専門業者に、越境ECの運営を委託する方法です。
市場調査、モールへの出店、ECサイトの運営、トラブル対応など、手間のかかる業務をプロに任せられるため、ノウハウがない状態でもスムーズに参入できます。
越境ECの市場は、世界的に非常に高い成長率で拡大を続けています。
経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」(※1)によると、世界全体の越境ECの市場規模は、2024年時点で1.01兆USドルと推計されており、さらに2034年には6.72兆億USドルと、年平均で約23.1%もの成長率で拡大すると予測されています。
この市場拡大の背景には、海外商品や限定品に対する消費者の高い購買意欲、商品やメーカーに対する信頼性の向上、決済手段の多様化などが挙げられます。
特に、日本、米国、中国の3カ国間での越境EC取引は活発です。
同調査によると、2024年において、
と、両国ともに日本のECでの購入額が大きく増加しています。日本の製品・サービスに対する需要は高く、今後の成長が期待されます。
越境ECに参入することで、事業者は主に以下の4つのメリットを得ることができます。
最大のメリットは、日本の人口よりもはるかに大きい海外の顧客をターゲットにできることです。例えば、中国の人口は日本の約10倍、米国の人口は約2.6倍に上ります。
国内外のEC市場の成長と相まって、新たな収益源を確保し、事業の成長を期待できます。
海外で実店舗を構える場合と比較して、越境ECは初期費用やランニングコストを大幅に抑えられます。店舗の賃貸や現地社員の雇用といった大きな投資が不要なため、少ない資金で海外進出を試すことができます。
国内市場ではすでに競合が厳しくても、海外ではまだその商品やサービスが知られていないケースがあります。そうした商品を先んじて越境ECで販売すれば、大きなヒット商品を生み出すチャンスがあります。ただし現地のニーズに合わない商品は売れません。事前に綿密な市場調査を行う必要があります。
「メイド・イン・ジャパン」の製品は、アジア圏を中心に多くの国で「高品質」という高い信頼性を得ています。現地の商品と競合する際にも、日本の製品であることは強力なセールスポイントとなり、消費者に選ばれやすくなります。
越境ECは魅力的なビジネスですが、参入にあたっては以下のデメリットやリスクも理解し、対策を講じる必要があります。
海外配送は、国内配送に比べて送料が高く、配送に時間がかかり、破損や紛失のリスクも高まります。また、配送先の国や地域によって関税や輸入規制、通関手続きなどが異なり、複雑な対応が求められます。
販売先の国によって、商品に対する製品認証制度(例:中国のCCC認証)や、EC事業に関する規制や法律、消費税などの税制が異なります。これらの現地ルールを遵守し適切に対応しなければ、思わぬトラブルや罰則につながる可能性があります。
ECサイトの多言語対応はもちろん、顧客からの問い合わせやクレーム対応を現地の言語で行う必要があります。時差も考慮しつつ、迅速かつ適切な対応体制を整えることが求められます。
外貨で取引する場合、決済時と入金時の為替レートの変動によって、想定していた利益が減少する為替リスクを負うことになります。為替ヘッジなどの対策を検討する必要があります。
越境ECを始める前に、特に重要度の高い以下のポイントについて、綿密な調査と検討を行いましょう。
販売先の国や地域の輸出入に関する規制や法律、商標権、食品の安全基準などを徹底的に調べます。特に、家電製品や医療機器などは、現地の製品認証が義務付けられている場合があります。
越境ECの事業モデルには、主に以下の2種類があります。
商品の特性や販売戦略に応じて、最適なモデルを選択しましょう。
販売価格は、現地の競合商品の価格や機能・品質の違いを踏まえて検討する必要があります。さらに、ECモールへの手数料や国際配送料、関税などのコストをすべて含めたうえで、利益が出て、かつ消費者から見て魅力的な価格設定にしなくてはなりません。
商品の破損、不着、不具合といった万が一の事態を想定し、事業者、配送業者、メーカーなど関係者間で責任の範囲を明確にしておきます。また、大規模な損害賠償請求に備えて、海外PL保険(製造物責任保険)への加入も検討しましょう。
※海外PL保険:事業者が賠償責任を負うことで被る損害を補償する事業者向けの保険。PLはProduct Liabilityの略で「製造物責任」の意味。海外、特に米国で製品の欠陥による事故が発生すると、大規模な損害賠償請求訴訟に発展する可能性があることから、備えとして加入する企業が多い。
多くの国でオンラインショッピングが日常化し、世界のEC市場は大きく拡大しています。このような状況下で、越境ECは、日本企業が国境を越えて販路を広げ、事業を成長させるための大きなビジネスチャンスです。今後は中国や米国に加え、ASEAN諸国など新たな地域への進出も増えていくでしょう。
越境ECの成功には、綿密な現地の市場調査、法律や商習慣に合わせた準備、そしてデメリットへの対策が不可欠です。しかし、その手間をかけてでも、挑戦する価値は十分にあります。
自社の商材の強みを生かし、ぜひ越境ECへの参入を検討してみてはいかがでしょうか。
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