ECサイトでユーザーが気に入った商品を選んだにもかかわらず、購入をやめてしまうカゴ落ち。ユーザーはどうして途中で購入をやめてしまうのでしょうか?そしてどのような対策をすればカゴ落ちを防げるのでしょうか?カゴ落ちの理由とその対策について解説します。
ECサイトにおいて、ユーザーが「カートに入れる」「商品をかごに追加」などのボタンを押してカートに入れたあとに、購入手続きまで行かずにサイトを離脱することを「カゴ落ち」と言います。カゴ落ちは、一般的に商品がカゴに入った回数の7割程度起こり、売上の約2.5倍もの機会損失になるといわれています(※1)。カゴ落ちしてしまう理由を探り、カゴ落ちを防ぐ対策を行うと、その大きな損失を減らせるだけでなく、使い勝手のいい信頼されるサイトづくりにもつながります。
(※1)【調査】「カゴ落ち」は最大70%・売上の2.5倍にも|ECのミカタ
ジャストシステムの調査(※2)では、「送料や手数料が高かった」が、カゴ落ちの最も大きな理由です。決済のページに進んだときに、思いがけず送料や手数料がかかることが分かり、そこで手が止まってしまったという経験のある人は多いのではないでしょうか。他にも、カゴ落ちが起こる理由には以下のようなものが考えられます。
このようにカゴ落ちの理由には、サイトの使い勝手から、購入や支払いの手続きに関わること、サイトの信頼性に至るまで、さまざまなものがあります。カゴ落ちを防ぐには、これらの課題を一つひとつ改善していく必要があります。
(※2)ECのカゴ落ち、理由は「送料・手数料の高さ」/10代のQR決済利用率は約3割【ジャストシステム調査】|MarkeZine
カゴ落ちを防ぐ対策には下記のようなものがあります。カゴ落ち対策は、ユーザーの使いにくさを解消し、サイトを改善する取り組みでもあります。できることから検討を始めましょう。
送料・手数料は、可能であれば無料にした方が購入につながりやすくなります。無料にすることが難しい場合には、購入手続きの前に送料・手数料がいくらかかるか、ユーザーに明確に知らせます。事前にわかっていれば、送料を理由に途中で手続きをやめたり、保留にしたりすることはなくなります。送料を知らせる際に「〇〇円以上買うと送料無料」というような特典があると、購入額のアップにもつながるはずです。
また、扱う商品にもよりますが、送料を商品の料金に含めて「送料無料」と表示することも効果的です。Barilliance 社が行った調査(※3)によると、73%のユーザーが購入を決める際に送料無料であることが重要だと答えています。もし競争力を失わないような価格設定ができるのであれば、送料込みの価格を出してみるのもいいでしょう。
(※3)Top 10 Reasons (and solutions) for Shopping Cart Abandonment|Barilliance
決済の前にアカウント登録をしなければ購入できないECサイトでは、急いでいる顧客が脱落します。ビジターとしてアカウント登録をせずに一度だけの利用ができるように、サイトの設計を変えた方がよさそうです。さらに、購入手続きのために入力した情報をそのまま使ってアカウント登録ができるようにしておけば、購入とアカウント登録が同時にできて便利です。また、Amazonのワンクリック注文に代表されるように、購入までのステップが少ないほど、カゴ落ちはしにくくなります。リピーターが何度も同じ内容を入力しなくてすむように、発送先や請求先の住所などをアカウント内から読み込めるようにしておきましょう。
一般的には、配送のスピードよりも送料無料が重視される(配送に時間がかかっても送料無料のプランを選択する)傾向があります。しかし急いでいる顧客は、配送日数がかかることで購入をやめてしまう場合もあります。急いで配送するオプションを設けたり、配達日指定やコンビニ受け取りなど複数の配送方法が選択できるようにするといいでしょう。
クレジットカード情報を入力したくないので購入をやめるといった、サイトが信頼できないことに起因するカゴ落ちを抑えるには、顧客の不安を減らすことが大切です。ECサイト訪問者のブラウザとサーバー間のデータ通信を暗号化する技術をSSLと言います。個人情報を入力するページをSSL対応にし、そのことを入力フォームでアピールして、安心感を高めましょう。
購入申し込みフォームの入力中にエラーやクラッシュが起きて次に進めないというのも、よくあるカゴ落ちの原因です。入力エラーは、間違った部分を赤文字で表示する入力フォームのアシスト機能を導入すると、減らすことができます。また、新製品の発売日やセールなどアクセスの集中が見込まれる場合には、サーバーの強化をしてサーバーダウンが起こらないように手を打っておくことも必要です。
サイズが合わないときや、思っていたものと違ったときに返品や交換がスムーズにできるかどうかも、購入の決め手のひとつです。条件が明確に記載されていれば、安心して購入に進みやすくなります。
支払い方法が選択できない場合、顧客が使いたい方法がないという理由でカゴ落ちしてしまうことがあります。クレジットカードのほか、コンビニ支払い、電子マネー、代引きなど、決済方法にできるだけ多くの選択肢がある方が、さまざまな顧客の要望に対応できます。
はっきり購入を断念するカゴ落ちのほかに、時間がなくてサイトを離れたり、比較のためにほかのECサイトを見に行ったりして保留になったまま、というカゴ落ちも多くあります。メールアドレスが分かっているユーザーであれば、カートの中に入ったままの商品をリマインドするカゴ落ちメールを送ることで、再度購入を促すことができます。
「カゴの中の商品を忘れていませんか?」とアピールするメールを送ることで、カートに商品が残っていることを顧客に思い出してもらう対策がカゴ落ちメールです。
忙しくて途中で購入をやめてしまった顧客なら、時間があるときにもう一度サイトを訪問してくれるかもしれません。他社商品と比較をするためにいったんサイトを離れた場合でも、まだ購入を迷っていれば顧客を呼び戻せる可能性があります。カゴの中の商品を値下げしたという知らせであれば、それがあと押しとなり購入が決まりやすくなるでしょう。
メールマーケティングのCuenoteが2019年に実施した「ECトップ100社のカゴ落ち対策メールの調査レポート」(※4)によれば、カゴ落ちメールの実施率は22%で、2017年からは+10%と伸びています。ただしトップ100企業で2割強ですから、全体的な普及率はまだ低い状況と言えます。一方、同社の報告では、カゴ落ちメールは通常のメルマガ配信に比べてコンバージョン率が4~5倍にも上るとされています。途中まで「この商品が欲しい」と購入の意思があったユーザーにリマインドをするのですから、購入の意思がない人に送るメールよりも効果が出るのは当然とも言えます。一度導入を検討してみましょう。
(※4)カゴ落ちとは?メールで解決するカゴ落ち対策|Cuenote
カゴ落ちメール施策を行うには、どの顧客がいつ、どんな商品でカゴ落ちしたかを特定し、カゴにある商品の情報を載せたメールをスピーディーに作成・配信する必要があります。メルマガ配信で使っているメール配信システムで送ることもできますが、集客や販売促進、顧客管理などを自動化して行うMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入すると、一元的な運営が可能です。カゴ落ちメールだけに機能を絞った専用ツールもあります。
難しいのがカゴ落ちメールを送るタイミングです。メールを送るタイミングは、カゴ落ちしてから3時間後、24時間後、7日後など自由に設定できます。カゴ落ちメールをいつ送れば効果があるのかについては諸説ありますが、様子を見ながら間隔を空けて3回程度に分けて送るケースが多いようです。
一定期間がたつと中身を自動消去するカートシステムを利用している場合は、送信が遅くなりすぎないよう注意が必要です。そして、カゴ落ちメールが購入に結び付いた場合には、そのあとに同じメールが届かないようにします。あまり何度もカゴ落ちメールを配信するのも避けましょう。
顧客が一度カートに入れたということは、それだけその商品を気に入ったということです。ではなぜカゴ落ちしてしまったのでしょうか? 自社のECサイトでどの程度カゴ落ちが起きているのか、理由はなぜなのかを確認し、課題を明確にしましょう。顧客が購入を決心できない問題点を解決できれば、売上アップにつながると同時に、ECサイトをより使いやすいものに改善できます。
顧客一人ひとりの購買行動をもとに送るカゴ落ちメールを上手に使うほか、ECサイトの改善・リニューアルも含めてカゴ落ち対策に積極的に取り組み、顧客と自社の双方に有益なECサイト運営を行っていきましょう。
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