顧客ニーズの多様化や消費者購買モデルの変化などを背景に、CRMの重要性は年々高まりを見せていますが、一方で「CRMとはなにか?」という問いに対して、即座に明確な回答を出せないという方は意外に多いようです。
この記事では「そもそもCRMとはなにか」を噛み砕いて説明したうえで、これからCRMを導入しようと考えている方に向けて戦略構築のポイントをご紹介します。
CRMとはCustomer Relationship Managementの頭文字を並べたもので、日本語では通常、「顧客関係性管理」、「顧客関係性マネジメント」と訳されます。
CRMについて語る際に注意が必要なのは、この言葉にはいくつかの解釈があり、語られる文脈によって異なる意味合いを持つ場合があるという点です。たとえば、顧客関係性管理という概念そのものを指す場合もありますし、顧客関係性管理を行うために用いるソフトウェアを指してCRMと呼ぶ場合もあります。この記事ではCRMという語を「企業が顧客との良好な関係を構築するために行う一連の取り組み」と定義し、以下の説明を進めていきます。
CRMの実践は、通常、次のようなプロセスで進みます。
上記のようなPDCAを回し続けていくことで、自社と顧客との間によりよい関係性を構築し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すことが可能です。
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LTVについては、下記の記事で詳しくご紹介しています。ぜひご一読ください。
LTVとは?重要な理由や計算方法、向上させるポイントを解説
PCやスマホの利用が一般化し、かつSNSが広く普及したことにより、数十年前と比較して情報伝達の速度は格段に上がり、入手できる情報の量・質も大きく向上しました。加えて、国境を越えたオンラインショッピング(越境EC)のためのインフラも整備され、顧客(消費者)の選択肢はグローバルレベルで広がってきています。
この状況を販売者の立場から見ると、企業は今、限られた市場のなかで国内外の競合がしのぎを削り合う、非常に厳しいビジネス環境に置かれているのだと考えることができるでしょう。
こうした厳しい環境を勝ち抜くためには、競合他社との差別化が必須です。差別化にもさまざまな切り口がありますが、そのうちの有力な施策の1つが「顧客を中心に据える経営」であり、そのための有力な武器となるのがCRMです。顧客を深く理解し、顧客が求めるサービスをタイミングよく提供し続ける素地をつくることにより、顧客を自社に引きつけておくことが可能となるのです。
「CRM戦略」といっても、そういった名前の特効薬的な施策があるわけではありません。
「戦略」とは、自社が最短距離で目的を達成するために、何を優先的に行い、何をあきらめるべきか――その指針を定めたもので、CRM戦略は「企業と顧客の良好な関係性構築を目的としたあらゆる活動のうち、どこにフォーカスし、どのような方針で実施していくかを決めるもの」だと定義できるでしょう。CRM戦略を構築したら、CRMに関するあらゆる活動を戦略に基づいて実践していきます。
この点を踏まえて、CRM戦略を構築の際に押さえておくべきポイントを4つご紹介します。
何よりも大切なのは、CRMにおいて対象とする顧客が「誰」なのかを明確にするということです。
顧客を性別や年齢、居住地、購入頻度などの属性で分類することをセグメンテーションといいますが、通常、CRMで展開する施策はこのセグメント単位で計画される場合が多いといえます。
主要なターゲットが明確になったら、ターゲットが抱える課題やニーズの把握に取り組みます。具体的には、顧客に関するさまざまなデータを分析したりアンケート調査を行ったりして、顧客理解に努めることです。
昨今はDMP(※)のようなプラットフォームが普及するとともに、ビッグデータ解析や人工知能などの技術が進歩し、従来に比べて高い精度で顧客情報を分析できる基盤が整ってきています。
※DMP:「データマネジメント・プラットフォーム」のこと。インターネット上に蓄積されたさまざまなデータを一元管理するためのプラットフォーム。
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DMPについては、こちらのコラムでも詳しく紹介しています。
DMPとは?仕組みや種類、選び方まで基本を解説します
「CRMとは顧客との良好な関係性を構築するための一連の活動である」――このように言葉で書くのは簡単ですが、実際に顧客との良好な関係性を構築するのは一筋縄では行かず、実施すべき活動は山のように考えられるでしょう。実際、CRM戦略を具体的なアクションプランに落とし込むフェーズになると、やるべきことが大量に出てきて驚くことが少なくありません。
しかし、思いついた活動をすべて実施していては、時間がどれだけあっても足りません。そこで、顧客のニーズや市場の状況、自社の事情(体制や予算、他施策との兼ね合いなど)を踏まえて優先度を設定しましょう。現時点でもっとも重要と思われる活動、あるいはもっとも効果が出やすいと思われる活動から優先的に実践していくのがポイントです。
冒頭でも触れたように、CRMという言葉はCRMの実践を支援するツールを指して使われることがあり、「CRMの導入=CRMツールの採用」と考えている人も少なくないようです。
けれど、CRMの実践には必ずしも特別なツールが必要なわけではありません。ツールはあくまでもCRMを効率的かつ効果的に実践するために補助的に使うものであり、ツールを主軸に据えてCRMを考えるのは本末転倒です。
よくある失敗例として、ツールベンダーの勧めに応じてとりあえずCRMツールを導入し、ツールありきでCRM戦略を構築したが自社の現状に合わずうまく活用できなかった……というケースが挙げられます。
CRMツールにもさまざまな種類があり、ツールによって得手不得手があります。顧客データの分析機能が豊富なツールもありますし、メールマーケティング関連の機能を充実させているものもあります。また、Webサイトとの連動が可能であることをセールスポイントとして打ち出しているツールもあります。
このため、まずは自社の方針をある程度形にしたうえで、それを実現できるツールを選ぶことが重要です。
例えば、紙のカタログと電話・メールを用いた通販のCRMに、Webサイトとの連動機能は必ずしも必須ではありません。むしろ、電話やメールでのコミュニケーションを統合管理し、顧客の行動履歴データとして集計・分析するような機能が求められるでしょう。
以上、この記事では「CRMとはそもそもどのようなものか」、「今、なぜCRMが必要なのか」を説明し、CRM戦略の構築に際して注意すべきポイントを4つご紹介しました。
最後に補足しておくと、戦略は「構築したら完了」ではなく、「構築してからが本番」です。
戦略は「実践してナンボ」のものであり、そういう意味では、「自社にとって実践可能な戦略」を構築することこそが何よりも重要なポイントだといえるのではないでしょうか。
はじめから風呂敷を広げすぎ、せっかくの戦略を「絵に描いた餅」にしてしまうことのないよう、自社の実情を踏まえて等身大の戦略を構築するよう心がけましょう。
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