ひと口にWeb広告といってもその種類や出稿先はさまざまです。そのなかから自社の目的やユーザーの属性に合った広告を的確に選択して運用するには、かつてはかなりの知識や経験、そして手間が必要でした。そのハードルを大きく下げたのが、アドネットワークと広告配信を進化させるアドテクノロジーです。今回はアドネットワークを中心に、DSPやSSP、それを支えるテクノロジーについて分かりやすく解説します。
アドネットワークは、ポータルサイト、SNS、ブログなど複数の広告媒体を集めた広告配信ネットワークです。複数の広告媒体をひとつのパッケージにしているため、それぞれの媒体に一括で広告が出稿できる効率的な仕組みです。
アドネットワークが登場する以前は、広告主や広告会社は出稿先のWebサイトを個別に選定し、それぞれと契約をしていました。課金形態が媒体によって異なり、各サイトから提供されるアクセスデータもまちまちで客観的な比較が難しかったのです。そのため、的確に媒体を選んで広告を出し分ける仕事は、手間がかかるだけでなく、知識や経験を必要とするものでした。そういった中、2008年ごろに複数の媒体をパッケージにし、一括で運用・管理をするアドネットワークが誕生したのです。
アドネットワークができたことで、広告主はあまり手間をかけずに効率よく広告を配信できるようになりました。その仕組みを簡単に紹介しましょう。
一方で広告を掲載する媒体側は、アドネットワークに加盟することで、広告枠を販売する手間をかけずに顧客を得られるようになります。また、アドネットワークは余った広告在庫をパッケージにして販売するため、媒体側の在庫リスクが軽減されます。
広告在庫とは、将来の一定期間内に予測される広告の表示回数のことです。例えば、ある広告枠の「来月の広告在庫は100万回」といった場合は、その広告枠が100万回表示されると予想されていることになります。ただし、先月100万回表示されたからといって今月もそうなるとは限らないため、広告枠を販売する際は予想される表示回数よりも少ない数を設定します。そこで出る広告在庫の余りをアドネットワークが集約して販売しているのです。
代表的なアドネットワークとしては、Googleディスプレイネットワーク(GDN)やYahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)(YDA)が挙げられます。
Google広告が提供する世界最大規模のアドネットワークです。YouTubeや食べログといった数多くの提携サイトやアプリ上の広告枠に広告が掲載されます。配信先を指定するプレースメントやリマーケティング機能もあります。
Yahoo!プロモーション広告が2020年夏に提供を始めたアドネットワークで、Yahoo!の関連サイトや提携サイトの広告枠に広告を掲載します。「興味関心」「購買意向」「属性・ライフイベント」という3カテゴリータイプのターゲティングが可能です。
アドネットワークには、次のようなメリット・デメリットがあります。
複数の広告枠がパッケージされていることで、個別に購入するよりもコストを抑えることが可能です。
提携しているWebサイトやブログに一括配信ができるので、自分で広告媒体を探す手間がかかりません。また、課金形態が統一されるため、運用や予算管理をシンプルに行えます。
効果測定はそれぞれの広告媒体ではなく、アドネットワーク事業者が行います。そのため、客観的で信頼性の高いデータが入手できます。
大まかな媒体のジャンルは選べますが、個別の出稿媒体を選べません。そのため広告の内容と関連の薄い媒体に配信されてしまうことがあります。
広告を掲載したくない媒体を選択できる仕組みを持ったアドネットワークもありますが、自社のブランド・イメージとは合わない媒体に広告が配信されてしまうリスクもあります。
近年、目覚ましい進化を遂げてきたアドテクノロジーによって、アドネットワークの新たな活用が進んでいます。まずはその活用を支えている技術について説明します。
RTBとはReal-Time Biddingの略で、リアルタイムで広告を入札する仕組みです。RTBによって、ユーザーがページを訪問して広告枠が表示(インプレッション)された瞬間に、その広告枠に対して入札が行われ、そのなかで最も高い金額で入札した広告が表示されます。この仕組みによって、媒体単位ではなく個々のユーザーをターゲットに広告を表示することができるのです。
各広告媒体やアドネットワークが持つ広告の掲載枠を1インプレッション単位で取り引きできるプラットフォームが、アドエクスチェンジです。アドエクスチェンジでは広告媒体ごとに異なる課金形態を、入札型のインプレッション課金に統一します。これによって公平性を保ちながら、課金管理の手間を大幅に削減できるようになりました。
データエクスチェンジとは、ユーザーの属性やWeb上での行動履歴といったオーディエンスデータを、企業間で交換する仕組みです。アドネットワークや次で紹介するDSPは、このオーディエンスデータを保有し、カテゴリ分けをしている事業者と契約して、広告を最適なユーザーに配信しているのです。
アドネットワークを活用するうえで、もうひとつ、理解しておくべきなのがDSP(Demand Side Platform)です。DSPとは、アドネットワークが登場した後に誕生したもので、広告主の利益を最大化させるためのツールです。アドネットワークとDSPは混同されることがありますが、アドネットワークがネットワークであるのに対し、DSPはツールであると理解しておきましょう。
このDSPに対し、広告を表示させるメディア・媒体側の利益を最大化させるためのプラットフォームがSSP(Supply Side Platform)です。媒体側があらかじめ広告価格や広告主の業種などの条件をSSPに設定しておくと、SSPは該当する広告のなかから最も広告単価の高い広告を自動で選択し、広告を配信します。
ここで、DSPとSSPによる広告配信の流れを簡単に説明しておきます。
媒体を集めることで効率を上げることを狙ったアドネットワークですが、アドテクノロジーの進化で誕生したDSPとSSPによって、さらに活用の度合いが高まっています。
もうひとつ、混同されがちな用語にDMPがあります。DMPとは、Data Management Platformの略。自社が持つ顧客や販売などのビジネスデータ、外部のデータ、広告配信に関するデータを収集・分析、利用して、マーケティング全体の効率よい管理・運営を目指すプラットフォームです。広告配信の場面では、DSPが最適なアドネットワークを選択する際に、DMPが収集・分析したユーザー情報を参照する、といった使い方がされています。
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DMPについては下記のコラムも参照ください
DMPとは?仕組みや種類、選び方まで基本を解説します
アドネットワークは、Web広告の運用を効率的に行い、効果を最大化するうえで非常に重要な存在です。アドネットワークが登場した直後は活用の幅も限定的でしたが、RTBやアドエクスチェンジといったアドテクノロジーが進化したことで、利用者が一気に増大しました。アドネットワークの基本的な仕組みを理解して、費用対効果の高い広告を効率的に出稿しましょう。
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