サイネージとは記号やマーク、標識という意味の英単語ですが、「デジタルサイネージ」という場合には、「電子看板」「電子ポスター」などと呼ばれる映像媒体のことを指します。かつては家の外で目にする広告はポスターや看板などが主流でしたが、デジタルサイネージは新しい媒体としてその訴求力が注目されており、特に動画の再生において強みを発揮します。その理由や活用について紹介します。
屋外、屋内問わずさまざまな場所で、情報を発信するデジタルサイネージ。デジタルディスプレイが進化して鮮明な映像が表示できるようになり、ビル壁面の大型ビジョンなどで美しい動画広告を見ることもめずらしくなくなりました。また、ネットワークシステムや無線LAN(Wi-Fi)が広く普及したこともあって、ショッピングモールのような大型商業施設、電車や駅、飲食店やショップの店頭・店内、美術館や役所といった公共の施設においても、デジタルサイネージの多彩な活用が進んでいます。
デジタルサイネージの特徴のひとつは、1台のディスプレイで複数のコンテンツを切り替えられることです。ディスプレイを設置している場所や、時間帯(例えばラッシュアワーやアフターファイブなど)により、その場を通る人々の属性(通勤中のビジネスパーソン、ショッピング中の若い女性など)に合った内容の広告を配信できるのです。もちろん繰り返し同じ動画を再生することも可能です。
また、タッチパネル式のディスプレイを利用した、双方向性を持つデジタルサイネージもあります。ユーザーが自分で必要な情報を探し出す仕組みや、クイズに答える、ミニゲームにチャレンジする、といった遊びの要素を入り口に、楽しく情報発信を行うことができます。
一般的なデジタルサイネージの機器は、映像を表示する「ディスプレイ」と、コンテンツを操作する「コントローラー」に分かれています。コントローラーとは、映像再生機器やコンピューター、タブレットなどの機器のことです。
デジタルサイネージには、大きく分けて以下の3種類があります。
デジタルサイネージは、テキストのみの情報や静止画も表示できます。しかし動画を再生するときにこそ、その強みを大きく発揮するのです。
人には「動くものに目がいく習性」があり、止まっているものよりも動画の方に自然に目が向きやすい傾向があります。多くの人が行き交う駅や街頭でも、商品が所せましと並ぶスーパーの陳列棚でも、「動き」で表現する動画は人目を引きやすいのです。BGMや効果音、セリフなどの「音」もまた、関心を呼び目を向けさせるきっかけになります。
さらにテキストや静止画と比べて、動画は伝えられる情報量が豊富です。人が通り過ぎて行く街頭や店頭では、多くの場合ディスプレイに目を止めてもらえる時間はわずかです。短い時間に目と耳から多くの情報を伝えられる動画は、デジタルサイネージととても相性が良いといえます。
デジタルサイネージでは、訴求対象や内容に合わせてフレキシブルな広告を打つことができ、前述のように場所や時間、対象に合わせて効率的なプロモーション活動が実現できます。小売店や飲食店の店頭・店内でキャンペーンやおすすめメニューを紹介するというような利用もできます。演出力の高い動画を流せば、お得感やおいしさ、シズル感をダイレクトに伝えられます。
小売店では、小型ディスプレイを陳列棚周りに設置して、商品や関連情報の動画を再生する販促POPとして活用しています。該当の商品のすぐそばで動画を流すことで、商品に注目を集めて手に取ってもらいやすくしたり、実際の商品利用シーンをイメージさせて購買に結び付けたりといった工夫をしています。
大型商業施設や公共交通機関で道案内をしたり、施設のサービス内容を説明したりといった、訪れた人や利用者をサポートして利便性を上げる仕組みとしても、デジタルサイネージは活用されています。パンフレットやポスターよりも情報量の多い動画を掲示することで、より丁寧でわかりやすいガイドが可能になります。
観光施設や教育施設では、デジタルサイネージは魅力的なアトラクションのひとつにもなっています。イラストを描く遊びや、動画を使ったゲーム、タッチパネルディスプレイを利用した展示の解説、といったインタラクティブなコンテンツは、顧客の満足度を上げ、施設内の滞在時間を延長させる効果も期待できます。
デジタルサイネージ広告には、電車などの公共交通機関に出稿する「交通広告」、屋外のビルや建物に掲示する「ビルボード広告」、大型商業施設や小売店、飲食店などの店頭・店内で活用する「インストアメディア広告」などがあります。
なかでも駅構内のビルボード動画広告や、電車内の小型ディスプレイで流れる広告は、通勤・通学などで多くの人が日常的に目にしており、デジタルサイネージでも主流となっている動画広告といえます。CARTA HOLDINGSによる2021年の調査によれば、同年のデジタルサイネージ広告市場規模は594億円(前年比114%)となる見通しで、その内訳をみると交通広告の占める割合が57.7%(343億円)と最も多いのです。
今や、街頭や交通機関で広告を出したい場合、紙のポスターではなく、ディスプレイに流すための動画を用意しなければならないケースも増えています。
動きのある動画を使えば、道行く人の目を引くことができます。工夫次第でさらに大きなインパクトを与えることも可能です。
例えば、化粧品大手、資生堂のコスメブランド「マジョリカ マジョルカ」のデジタルサイネージ広告では、新宿駅構内の9本の柱に35面ものディスプレイを設置し、3Dアートを駆使した動画を流しました。ショーケースに見立てたディスプレイには、商品がゆったりと立体的に浮遊し、輝く鳥が隣り合う画面から画面へと飛びまわります。人でにぎわう駅の構内に、魔法がかかったような非日常的な空間を演出したデジタルサイネージ広告として、話題になりました。
事例:マジョリカ マジョルカのミュージアム!? 不思議な体験を、新宿駅で!
https://www.youtube.com/watch?v=-0eOSCgqbbU&feature=youtu.be
設置してある場所の地域特性や時間帯に合わせ、その場にいる人に向けて、訴求内容を切り替えて動画広告を配信できる点も、デジタルサイネージならではのメリットです。テレビCMのような不特定多数に向けた広告とは異なり、ピンポイントで潜在顧客にメッセージを届けることができます。
例えば駅コンコースのデジタルサイネージでは、若い親子連れが比較的多く通る休日の昼間には近隣のアミューズメント施設の動画広告を流し、中高年のサラリーマンが多い平日の夜には居酒屋やバーの動画広告を流すといった展開がされています。
ターゲット層にあわせて媒体と曜日や時間帯を選定することで、効率的かつ効果的なプロモーションが可能となります。
紙のポスターや展示物を掲出する場合、掲出先に合わせた枚数の印刷が必要になりますが、デジタルサイネージはひとつのデジタルデータを複数のディスプレイに配信することができます。そのため、掲示先が多いほど、全体的なコストが割安になります。
配信する動画コンテンツに変更や修正、アップデートが必要になった場合に、動画編集の負荷はありますが、データの切り替えは比較的容易に行える点もメリットといえるでしょう。
デジタルサイネージの動画活用は今、大きく進んでいます。興味を引きやすく情報量の多い動画を、街頭や交通機関、さまざまな施設で流すことで、消費者の購買意欲をかき立てたり、満足度を高めたりすることが可能です。マーケティング戦略、販促、顧客満足度の向上にも大きな役割を果たすデジタルサイネージ動画は、今後、さらに活用の幅を広げ、進化していくことでしょう。
TOPPANクロレではデジタルマーケティングを幅広く支援しています。 どんなことでもお気軽にご相談ください。